センスハック:生産性をあげる究極の多感覚メソッド
チャールズ・スペンス
草思社
本書の要約
小売業界はセンスハッキングによって、顧客の購買体験に影響を及ぼそうとしています。顧客を喜ばす香りによるセンスハッキングを行うことで、売上アップがはかれるのです。香りへの投資のROIが高いことは、多くのチェーン店の積極的な取り組みを見ればわかるはずです。
香りが小売店の武器になる理由
センスハッキングが、技巧よりもはるかに科学になる場所の一つは、何と言っても小売業界だ。ここ数年、企業は私たちを引き付けるのに感覚マーケティング〔消費者の感覚に訴え、彼らの知覚や判断、行動に影響を与えるマーケティング手法〕を利用している。(チャールズ・スペンス)
小売業では人の五感に訴える感覚マーケティングを多用して、人々の財布の紐を緩めようとしています。彼らはセンスハックによって、店内やECサイトの滞在時間を伸ばしたり、必要以上な買い物をさせることを期待しています。マーケターが五感ハッキングに力を入れている事実に気づかなければ、顧客はより多くのお金を支払うことになります。
スーパーマーケットの店内には数多くの店に漂っていますが、パンの匂いには効果があると言います。多くの業界関係者の発言をまとめると、店内の芳香が売り上げに大きな影響を及ぼしています。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に掲載されている、あるレポートによるとシナボンやサブウエイのようなチェーン店は、新しい直売店の出店場所を探すとき、大抵、ショッピングセンターの階段の上り口近くに的を絞ると言います。この場所は彼らの独特の香りを遠くまで届けるのに都合がよいのです。
近くにいる誰にとっても、必ず、おいしそうな香りがするように、シナボンの店のベーキングシートには、シナモンパウダーとブラウンシュガーが振りかけられています。香りが客を店内に誘導し、買い物客の行動を左右するのです。
オランダの研究者によると、スーパーマーケット全体に、メロンの人工的な香りを拡散させたとき、売り上げが15%増加しました。香りへの投資のROIが高いことは、多くのチェーン店の積極的な取り組みを見ればわかるはずです。
コーヒーが人々の購買行動を左右する?
多くの公共の場所で漂っている匂いは、思っている以上に、私たちのウエストラインはもちろんのこと、買い物行動にはるかに強力な影響を及ぼしているのだ。
コーヒーのマーケティング効果も高く、多くの小売店で広く利用されています。ガソリンスタンドでドライバーが給油機でガソリンを満タンにしている間、彼らに挽きたてのコーヒーの人工的芳香を吹きかけるだけで、コーヒーの売り上げを3倍以上に増やせることがわかっています。
韓国のソウルのダンキンドーナツで実施された、「フレーバーラジオ」キャンペーンによって、人々の行動は大きく変わりました。コンピューターを内蔵した香り拡散機が、多くの市営バスに設置されました。それが車内ラジオから流れるダンキンドーナツのCMソングの再生を認識して、コーヒーの芳香を放出します。
乗客はバスを降りた後、そのダンキンドーナツを見つけたら、購入したくなるという企画でしたが、この多感覚マーケティング戦略によって、バス停近くのダンキンドーナツのチェーン店では、客が16%急増し、コーヒーの売り上げが29%増加したそうです。
例えば、香りのよい花束を店舗のカウンターの上に置くことも売上アップに効果があります。シカゴのアラン・ハーシュ博士の調査によると、実験の参加者は空中に花の香りが強く漂っていると、一足のスニーカーに対して10ドル以上余計に支払うと言います。また、彼らの購買意欲は80%以上高まりました。
ある大都市の宝石店のお客は、香りのしないカウンターよりも、フローラル、フルーティーまたはスパイシーな香りがスプレーされているカウンターでより多くの時間を費やしています。
店舗で香りに投資する効果を甘く見ないほうがよさそうです。顧客を喜ばす香りによるセンスハッキングを行うことで、売上アップがはかれるのです。
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