売上の地図 3万人を指導したマーケティングの人気講師が教える「売上」を左右する20のヒント(池田紀行)の書評

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売上の地図 3万人を指導したマーケティングの人気講師が教える「売上」を左右する20のヒント
池田紀行
日経BP

本書の要約

著者が提示した「売上の地図」を活用し、自社の売り上げが上がるための要因と課題を明らかにすることで、次に行うべき施策が明らかになります。売れている商品の多くは一番最初に思い出されることが多く、エンゲージメントが高くなっています。顧客から愛される商品を作り、愛されるポジションを獲得することがとても重要です。

TMOTとZMOTが重要な理由

消費者に買ってもらえている商品は、最高の商品か、最安の商品か、最愛の商品かのいずれか、またはその混合だ。(池田紀行)

売上を上げることは難しく、日々、多くの企業が様々なマーケティング施策を行なっています。売上には数多くの要因が絡んでいて、大きな組織になると何が効果があるのかが分かりづらくなり、マーケティングの予算配分を難しくしています。

著者は、売上に影響を与える20個の説明変数とその関連性を説明しています。著者が提示した「売上の地図」を活用し、自社の売り上げが上がるための要因と課題を明らかにすることで、次に行うべき施策が明らかになります。

売れている商品の多くは一番最初に思い出されることが多く、エンゲージメントが高くなっています。顧客から愛される商品を作り、愛されるポジションを獲得することがとても重要です。

ブランドが強化すべきは「最愛ポジション」または「最”好”ポジション」に入ることで想起集合に入ることだと考えている。

ZMOT(ジーモット)、FMOT(エフモット)、SMOT(エスモット)、TMOT(ティーモット)という購入の意思決定のステップをマーケッターは理解し、施策に取り入れるべきです。

①ZMOT(購入前に広告やPR、ネットやSNSで情報に接触しておおよそ意思決定する)→
②FMOT(店頭で考える)→
③SMOT(使用時に評価する)→
④TMOT(使用のたびにブランド体験を上書きして更新する)

ZMOT👉2011年にGoogleが提唱した「ネットを使った情報収集が一般的になったことで、店頭に行く前から商品・サービス、ブランドと消費者との交流が発生している。それによって、消費者は店頭に行く前にすでに購入するブランドが7~8割がた決まっていることを明らかにした概念」です。  

2004年にP&Gが「消費者は2回評価する」として、消費者は店頭で買う前に買うかどうかを3~7秒で評価をし(FMOT:First Moment-Of-Truth)、その後、家で商品を使ってもう一度買うかどうかを評価するSMOT:Second Moment-Of-Truth)と規定しました。

P&Gの調査によって、ZMOTの重要性が明らかになり、「FMOTの前にすでに勝負は決まっている」ことを示しました。 このZMOTは、TMOT(Third Moment-Of-Truth)によって作られていきます。

多くの商品やサービスは、買って、一度使ったらその瞬間に消滅するものでありません。掃除機なら毎週、数年にわたって使い続けますし、お気に入りのレストランには何度も通います。

顧客のブランド体験はSMOT1回ではなく、TMOT(継続的なブランド体験)として一定期間、ずっと継続し、上書きされていきます。「点」としてのSMOTより、「線」としてのTMOTの方が重要なのです。

ソーシャルメディア時代におけるZMOTの多くは、既存顧客のTMOTで、ユーザーがクチコミをUGC(User Generated Content:ユーザーによって生成されたコンテンツ)として発信してくれることによって生まれます。それがネットやSNSに保存・蓄積されていくことが、コミュニケーションの理想型なのです。

それらの刺激一つひとつが新規顧客のZMOTとして想起集合を形成し、潜在ニーズが顕在化し、興味を持ったときに真っ先に思い出し(第一想起)、検索をする。検索結果には、既存顧客のTMOTとしてレビューやレコメンドが出てくる。これこそが、既存顧客が新規顧客を連れてくるソーシャルメディア時代のロイヤルティループなのだ。

私も常日頃からクライアントに、TMOTからのクチコミの重要性をアドバイスしています。WebやSNSで顧客との接点を築くこと、顧客をファン化させることがとても重要になっています。企業は良い商品を作るだけでなく、愛されるブランド、好まれる商品になることにもっと力を注ぐべきです。

市場2位以下のプレーヤーは、ZMOTからTMOTへの流れを強く意識し、既存顧客のTMOT経由で新規顧客を獲得する「良質なZMOTを形成する戦略」が有効だと著者は指摘します。

ググるからタグる、タブるへの変化に適応する!

エピソード記憶は、イベントなどによる体験だけでなく、コミュニケーション活動によって、商品やサービスが、いつ、どこで、だれと、どのように使われ、どんな感情体験をもたらすのかを伝達することでも実現することができる。自社の商品が長期記憶内のエピソード記憶として刻まれれば、以降、描写・風景・色・ロゴ(視覚)、サウンドロゴやジングル(聴覚)、におい(嗅覚)などの刺激によって、Cue(合図)出しを行うことで、ブランドの想起につなげることができる。

多くのクライアントは広告などのマーケティングコミュニケーションで、商品のスペックや機能的ベネフイット、RTB(ReasonToBelieve:信じるに値する証拠)を訴求し意味記憶に残ろうとしますが、それよりエピソード記憶にアプローチしたほうが得策です。

イベントを重視するヤッホーブルーイングは「熱烈なヤッホーファンと一緒に楽しく飲んだビール」「新緑の北軽井沢でキャンプをしながら仲間と一緒に飲んだビール」というエピソード記憶に積極的にアプローチしています。自身の体験として刻まれたコンテクストとして記憶されることで、新緑の北軽井沢を訪れたとき、またはキャンプに行ったときに、そのときのエピソード記憶が蘇り、「よなよなエール」を想起する可能性が高まります。

ブランドが記憶され想起集合に入り続ける上で、最も重要なのがフリークエンシー(頻度)になります。想起集合の中に入り、1位の座を確保し続けることで、売上がアップしますが、そのためには、高い頻度で接触し続ける必要があります。フリークエンシーの効果を高めるには、感情を動かし、記憶の再想起性を高めるエンゲージメント獲得が有効になります。

マスやネット広告によって、エンゲージメント獲得し続けるためには莫大な費用がかかりますが、SNSをうまく活用することで、日常的かつ持続可能な接触とエンゲージメントを確保できるようになります。

最近では、Z世代を中心にSNSの活用法が変化しています。関心を持ってもらうための施策が、ググるからタグる、タブるに変化しています。

lnstagramが、これほどまで多くの企業で活用される理由は、広告による認知向上、下段にある発見タブ(虫眼鏡のアイコン)による興味喚起、保存機能による自分ゴト情報のストック、検索による理解促進や比較検討、ショッピング機能による集客・購入など、消費者の購買プロセスをフルファネルで対応することができるためである。

Googleで検索する(ググる)のではなく、lnstagramでタグ検索をする(タグる)ことが主流となり、今では、タグ検索をするよりも、発見タブを見る(タブる)ことが主流になってきました。

消費者の可処分時間の多くが、スマホ上で消費されるようになり、lnstagramでの滞在時間が増加しています。発見タブ(虫眼鏡のアイコン)をタップすれば、自分が興味を持ちそうな刺激を自動的に表示してくれます。

lnstagramの発見タブやPRコンテンツが、「興味の起点(ファーストクリック)」になる時代には、広告中心のコミュニケーションのみに頼ることは、ROIを低下させます。

広告ではなくニュースや記事で見る、YouTubeの関連動画で知る、TwitterやFacebookで友人や知人が投稿している、lnstagramの発見タブに表示される、タグ検索をすると出てくる、友人や家族との会話の中で出てくるなど、できる限りオーガニックな接触を増やし、広告はそれらをブーストさせる役割を持たせるなどのコミュニケーション設計を行うことで、売上を上げられるようになります。

今日は、20の地図の中から一部を紹介しましたが、著者の作成した20の地図を活用することで、自社の強みや弱みが明らかになります。売上を上げるためには、一つの施策に頼ることは危険です。的確なマーケティング・コミュニケーションを行って、売上を上げるために本書を徹底活用しましょう。



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