コンセプチュアル思考 物事の本質を見極め、解釈し、獲得する(村山昇)の書評

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コンセプチュアル思考 物事の本質を見極め、解釈し、獲得する
村山昇
ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

コンセプチャル思考の目的は、概念を起こすこと、意をつくること、ものごとに意味を与えること、自分にとって最善の解釈を生み出すことになります。知(頭で考える)・情(五感で考える)・意(肚で考える)、3つの思考が揃い、巧みに組み合わさることがイノベーションを起こす秘訣になります。

コンセプチャル思考とは何か?

「人間中心の時代」においては、コンセプト・在り方・哲学・意味などを洞察し、創出する力が不可欠ですが、それこそ「意の思考」の得意分野なのです。(村山昇)

世の中が複雑になり、私たちは正解のない時代を生きています。ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、デザイン思考だけでは、正しく課題が定義できなくなっています。そこに「意」の力を取り入れるべきだというのが著者・村山氏の主張になります。

人間の「生き方」の本質からビジネスを再考し、顧客を説き伏せるのをやめることで、より顧客に近づけるようになります。ものごとから本質的なことを抽出したり、概念化したり、意味を与える問いを重ねていきます。論理分析だけから解を出すのではなく、人間の精神の代表的な働きである「知・情・意」の3つを掛け合わせるべきです。

松幸之助は「事業は人なり」と言っていますが、世の中が複雑になる中、人を満足させるイノベーションを起こすためには、ロジカルシンキングだけでは目的を達成できなくなっています。

コンセプチュアル思考は善の価値、ビジネスの世界で言い表すと「自分が正しいと信じる事業の理念・理想」に向かいます。ものごとの根源を見つめ、存在を考え、どう世の中を自分なりに解釈すればよいかを探っていきます。  

「人間中心の時代」においては、コンセプト・在り方・哲学・意味などを洞察し、創出する力が不可欠になっています。企業のあるべき姿から現実とのギャップを埋める際に、自社のパーパスや在り方を深掘りすることで、顧客との関係が変わります。未来からバックキャスティングし、世の中がどこに向かうのか、何をすれば顧客が満足するのかを考えた上で、ロジカルシンキングやデザイン思考でプロダクトやサービスを開発するのです。

「抽象化→概念化→具体化→気づき→(新たな)抽象化」を強力に回していくことで、堅固な観が醸成され、「ぶれない軸」が生み出されます。このようなコンセプチュアルに考える力によって、私たちは思考の深掘りができるようになります。目先の喫緊の課題ではなく、より上位の視点からビジネスの課題を考えることで、他社への優位性を発揮できるようになります。

著者はコンセプチャル思考を以下のように定義します。
●「概念的思考」
●「ものごとの本質を抜き出し、原理や枠組みをつかむ思考」
●「概念・観念・理念・信念を形成し、意をっくる思考」
●「森羅万象に接し、自分の内に理(ことわり)を形成し、理を具現しようとする思考」(ここでいう「理」とは、概念や意味・価値がつくりだす秩序)

コンセプチャル思考の目的は、概念を起こすこと、意をつくること、ものごとに意味を与えること、自分にとって最善の解釈を生み出すこと。その思考による答えは人それぞれのものになってよいし、ならざるをえない。持つべきは客観を超えたところで研ぎ澄ませる主観。

そのためには、以下の4つの思考が欠かせないと著者は述べています。
●根源を見つめる。
●全体を観る。
●抽象と具体を往復する。
●客観を超えて主観を持つ。

アップルはコンセプチャル思考でイノベーションを起こせた!

大きなイノベーションを呼ぶ思考は、技術中心ではなく、人間中心です。人間中心であるとは、あいまいで不明瞭で、ときに揺らぎ、ときに執着するような人間の想いや欲求の核にあるものをとらえ、そこから製品・サービスづくりを始めることです。そして、「お客様、あなたの欲しかったものはこういったものではなかったですか?」と言って形にして差し出す。そのために技術を使う。しかしそのとき、安易にユーザーにすり寄り、妥協したものをつくるのではなく、みずからの主観意志のもとに半歩先のものを提案していく、そんな考え方に立つのが真に優れたイノベーターと言えます。

スティーブ・ジョブズはロジカルシンキングだけでiPhoneなどのイノベーションを起こしたわけではありません。彼はZEN(禅)やアートを学んだことは有名ですが、真・善・美を製品開発に取り入れたのです。彼はコンセプトを起こす力、 グランドデザインを描く力、 製品世界をイメージする力の3つを組み合わせるコンセプト思考によって、顧客体験を変えるイノベーションを起こし、アップルを強い会社に変えたのです。

技術中心ではなく人間中心の視点によって、顧客の満足度を高めることを意識し、iPodやiPhoneをデザインしていったのです。「1000曲をポケットに」という類まれなコンセプトによって、多くの音楽を持ち運べるようにしたのです。

携帯性、小型化、デザイン、バッテリーの開発などこのコンセプトのもとにアップルは一つにまとまります。その後のiPhoneのリリースで世界中の人々のライフスタイルを変えると同時に、音楽、カメラやPCなど多くの業界に変化をもたらしたのです。

知(頭で考える)・情(五感で考える)・意(肚で考える)、3つの思考が揃い、巧みに組み合わさることがイノベーションを起こす秘訣です。 右脳と左脳思考に加え、「意の思考」を取り入れることが、複雑な課題を抱えている私たちに求められるスキルになっています。

コンセプチュアル思考を手に入れることで、自社の本当のパーパスが明らかになり、ブレない軸が手に入り、組織全体でビジョンを達成できるようになります。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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