企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営 (西口一希)の書評

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企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営
西口一希
日経BP

本書の要約

「顧客の心理・多様性・変化の理解」とは、顧客を人間として捉えるとことで、顧客からの「ありがとう」を増やせます。顧客起点経営とは、顧客を人間として捉え、顧客から『ありがとう』をいただける経営を目指すことなのです。今こそ、経営者は顧客起点経営を実践すべきです。

顧客起点経営が企業を成長させる理由

経営が顧客の心理を把握し、自社の投資活動や組織活動を行うにあたって、常に顧客を理由に意志決定している企業だけが、成長しているのです。この経営のあり方を「顧客起点の経営」と名付けました。(西口一希)

会社や事業が成長し続けるために必要なことは、顧客を理解し、顧客起点経営を実践することだと著者は指摘します。

しかし、多くの企業では、経営から顧客が見えなくなっています。企業は商品力も強く潜在成長力がある企業でも、顧客理解がおろそかになっているため成長できなくなっているのです。

著者は、顧客の心理、多様性、変化を3つのフレームワークで把握し、経営に顧客理解を実装すべきだと述べています。「どのような顧客に何が『価値』として受け入れていただけるのか」をすべての起点として、経営の打ち手を組み立てます。顧客にとっての「価値」を起点にすることで、事業を成長させられます。

便益とは、言い換えると「顧客が買う理由」です。独自性は「顧客が他のプロダクトを買わない理由」です。継続的に自社の商品・サービスを購入されている方、あるいはサブスクリプションサービスにおいて長く継続されている方は、何らかの便益があるから購入し続けているはずです。そして、何らかの独自性を感じているから、他のプロダクトにスイッチしない、離脱しないわけです。

自社プロダクトに高い価値を見いだしてくださる潜在顧客層は誰なのかを見極め、自社プロダクトの価値を高め続け、顧客満足を高め続けて、単価と購買頻度を高めなければなりません。企業が継続的に収益を高めるには、深い顧客理解が不可欠なのです。

売上=顧客数×単価×頻度という方程式を活用し、顧客群を複数に分類(セグメンテーション)します。ここを洞察することで、自社プロダクトと顧客の新しい組み合わせが見つかるようになります。

あらゆる事業、あらゆるプロダクトにおいて、TAM顧客数(実現可能な最大の市場規模)は以下の5つのセグメントに分けられるます。(詳細はこちらのブログ記事をご覧ください
・未認知顧客
・認知未購買顧客
・離反顧客
・一般顧客
・ロイヤル顧客

マーケット全体をTAM顧客数で定義し、TAM内の顧客がどう動いているか、カスタマーダイナミクスで常に把握します。顧客は絶えず変化していることを忘れずに、顧客との関係を強化します。

経営が課題としている収益性の向上を解決するには、「顧客の心理と行動の関係と変化をカスタマーダイナミクスで可視化し、顧客が見いだす価値を高め続ける顧客戦略(WHO&WHAT)を洞察し、それを実現する手段手法(HOW)の改善強化(PDCA)を継続すればよいのです。新規顧客を獲得し、離脱を防ぎ、顧客をロイヤルカスタマーにすることで、企業は売上をアップできるのです。

Amazonは顧客を分類し、以下の施策を実行することで、ビジネスを成長軌道に乗せたのです。
・書籍購入者の「潜在的なロイヤル化顧客層」へ、異なる興味あるカテゴリーを提案して、単価と頻度を向上させる
・書籍の購入が減った「潜在的な復帰顧客」へ、異なる興味あるカテゴリーを提案して、復帰を促す
・書籍中心に様々なカテゴリーの「潜在的な新規顧客」へ、それぞれのカテゴリーを提案して、新規顧客を獲得する
・書籍などの購入が減りつつある「潜在的な離反顧客」へ、異なる興味あるカテゴリーの提案で離反を防止する

顧客からの「ありがとう」が組織を強くする!

顧客の心理状態は絶えず変化していることを忘れずに、顧客との対話を続けましょう。顧客の変化を捉えて顧客戦略(WHO&WHAT)を素早く変化させていけば、顧客への価値創造が可能になります。

経営者がマーケットは常に変化し続ける「顧客の心理と行動の動態」と捉えることで、収益の向上が実現します。目の前のマーケットの顧客の心理と行動を理解し、素早く顧客戦略を構築し、それを実現する手段手法を企画・実施し、PDCAが可能な体制を組織に内製化することが重要になります。この顧客起点の経営改革を実践することで。顧客から選ばれる存在になれるのです。

顧客との対話ができるようになると、顧客との関係が変化します。企業が価値を提供し、顧客からの「ありがとう」を増やすことで、収益を改善できるのです。すべては顧客のためにあると全社員が行動を変え、「ありがとう」をいただくことを目指すことを経営の基軸に置くべきです。

誰を顧客とし、どんな価値を創出して「ありがとう」をいただくのか。経営が生み出す価値は、誰にも見える貨幣に変換され財務結果となりますが、同時に「ありがとう」も生み出します。もし、そこに顧客からの「ありがとう」がなければ、その財務結果は一過性のものであり、継続性がありません。

組織で働く人も顧客から、「ありがとう」ををいただくことで生きがいを感じることができます。

「顧客の心理・多様性・変化の理解」とは、顧客を人間として捉えるとことで、顧客からの「ありがとう」を増やせます。顧客起点経営とは、顧客を人間として捉え、顧客から『ありがとう』をいただける経営を目指すことなのです。

人は誰かに価値提案し、その価値を認めていただき「ありがとう」を実感することで、さらに成長し、さらに進化できます。「ありがとう」をモチベーションにし、顧客への価値創造を実現し続けることで、企業は顧客から選ばれる存在になれるのです。



この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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