世界大異変――現実を直視し、どう行動するか(ジム・ロジャース)の書評


世界大異変――現実を直視し、どう行動するか
ジム・ロジャース
東洋経済新報社

本書の要約

日本の大半の人はインフレの怖さをあまり気にしていませんが、円安に備えて、分散投資を行うべきです。「プランB」の準備が必須で、資産の一部を円とは別の通貨に分散しておいた方がよさそうです。日本の財政赤字は確実に膨らんでいく一方で、日銀が金融緩和でお金を刷り続けている以上、 将来、円の価値は確実に下がって行きます。

今後の米ドルの行方は?

世界的投資家であるジム・ロジャースとの私との付き合いも長くなっています。冒険投資家と言われていた頃から、彼の新刊が出るたびにさまざまな学びを得てきました。ジム・ロジャーズ世界大発見を読んだおかげで、比較的早いタイミングで海外投資をスタートできました。世界が置かれている状況は当時よりはるかに悪くなっていて、資産運用についても再考する必要が出ています。

今年になってロシアによるウクライナへの侵攻が起こり、インフレが現実的なものになってきました。この2つの国は経済大国ではありませんが、ロシアとウクライナの2国がグローバルなネットワークから離脱すれば、世界経済への影響は大きなものになります。実際、ロシアはヨーロッパへの石油・ガスの供給を減らしていますし、小麦などの農産物の輸出も滞り、それらの価格が上昇しています。

今回のウクライナ侵攻とロシアに対する先進国の経済制裁が、世界の基軸通貨である米ドルのポジションを揺るがします。基軸通貨であるためには、常に中立的なスタンスを維持すべきだとロジャースは指摘します。ロシアや他国がドルから離脱すれば、米ドルに対する懸念を深める国が増えて行きます。そして、中国がドル離れを決意すれば、その流れは決定的になります。

ロジャースは長期的には米ドルに対して悲観的な意見を持っていますが、現状はまだドル資産を所有していると言います。今後は暗号通貨などのデジタル資産が基軸通貨になる可能性もあると述べています。

日本に対してロジャースが悲観的である理由

歴史を遡れば、1920年代にイギリスより豊かな国は存在しなかった。しかし、税金を引き上げていくうち、50年後の1976年に国家が破綻した。日本も何か手を打たなければ、50年後、いやもっと早くに破綻してしまうだろう。

ポルトガルやスペインも、かつては豊かで成功した国でしたが、今は衰退しています。ロジャースはイギリスやポルトガルの例を示しながら、日本の未来に対してネガティブな姿勢を示しています。

50年後、日本の総人口は7500万人にまで減少し、債務が急激に増え続け、労働人口も激減します。今後、ものすごい勢いで子供を増やすか、移民を受け入れるか、とんでもないスピードで借金を減らせなければ、日本の安全で豊かな社会が続く見通しは絶望的だと述べています。社会保障費の高止まりが続き、若年層への増税が避けられなければ、あっという間に日本の国力が削がれてしまいます。

このまま何もしなければ、日本には恐ろしい未来が待っている。すぐに消滅することはないが、経済破綻した他国と同じように、外資に買われまくる運命をたどるだろう。

消費のために国民を借金漬けにしているような国の未来は絶望的で、この状態が続けば、 大多数の中間層は、今よりも貧しくなるというのがロジャースの考えです。

最近では、日銀のコントロールが効かなくなっています。相場参加者のほとんどが日銀は信頼できないと感じていて、円を売り込んでいます。日銀が緩和を続ければ円安は続き、いずれ日本国内の誰かが、ここまでの円安は健全ではないと気づきます。市場参加者がやがて相場を支配するようになると、多額の債務を抱える日本には大きな試練が訪れ、今以上の円安が起こります。

日本の大半の人はインフレの怖さをあまり気にしていませんが、円安に備えて、分散投資を行うべきです。「プランB」の準備が必須で、資産の一部を円とは別の通貨に分散しておいた方がよさそうです。日本の財政赤字は確実に膨らんでいく一方で、日銀が金融緩和でお金を刷り続けている以上、 将来、円の価値は確実に下がって行きます。円資産だけでは、資産を目減りさせてしまうのですから、様々な資産に分散投資を行うべきです。

海外に資産を移せば、資産防衛だけでなく、国内ではお目にかかれないような優秀な投資商品を購入できます。結果、自分の資産を大きくする可能性も高まります。

私は長期で保有できるものに投資したいので、テクノロジー株よりはコモディティを注視している。 

ロジャースは農業や金や銀などの貴金属の投資を行うべきだと言います。円安に備えるなら、米ドルや他国の通貨に投資をすることも重要になります。長期的に日本が没落していく中で、投資のスタンスも変える必要があります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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