リデザイン・ワーク 新しい働き方(リンダ・グラットン)の書評

two person sitting in front of table
リデザイン・ワーク 新しい働き方
リンダ・グラットン
東洋経済新報社

本書の要約

①社員と社内の人的ネットワークと社内の職種について理解する。②仕事のあり方を新たに構想する。
③新しいデザインのアイデアについてモデルをつくり、検証する。④モデルに基づいて行動して、新しい働き方を創造する。という4つのデザインプロセスによって、働きやすい組織がつくれます。優秀な人を集めるために、このプロセスを通じて組織のシグネチャーを明らかにしましょう。

なぜ、新しい働き方を導入する必要があるのか?

社会全体がパンデミックを経験したことにより、私たちが仕事と職業生活になにを望むのかを考え直す千載一遇の好機が訪れた。コロナ禍は、ものごとの根本的な前提の多くを問い直し、新しい行動パターンを採用し、どのように仕事をおこなうかについて新しい物語を紡ぎ出すきっかけになったのだ。(リンダ・グラットン)

ライフシフトのリンダ・グラットンの新刊がリリースされたので、早速紹介したいと思います。世の中が猛烈に変化する中、私たちの「仕事のあり方」「働き方」も大きく変わっています。人生100年時代の生き方を提案してきた著者は、「働く意味」 「人生の豊かさ」を“リデザイン(再設計)”していく必要があると指摘します。

仕事の世界に大きな影響を及ぼすテクノロジー・人口動態・社会の変化について理解することで、自分の新しい働き方のヒントが見つかります。特に今回のコロナ禍が組織と人の働き方を変えるきっかけになったことは間違いありません。

テクノロジー・人口動態・社会の変化を受けて、ベンチャー企業や一部の大企業では、新たな働き方を追求する動きが加速しています。ロボティクスやAIの進展によって、社員のスキルに対するマインドと行動も変化しています。
・素早くスキルを磨き直す(=アップスキリング)
・新しい職種で働くために新しいスキルを学んだりする(=リスキリング)

人生100年時代には、長い職業人生を送る可能性が高まり、フルタイムの教育→フルタイムの仕事→フルタイムの引退という昔ながらの3ステージの人生が時代遅れになりつつあります。

マルチステージの人生を生きることが当たり前になれば、社員は、柔軟に会社に加わったり会社を辞めたり、副業を始めたり、再び学生に戻ったり、世界を旅したりできることを重んじるようになるだろう。

今回のコロナパンデミックにより、働き方が大きく変化しています。
①人々のデジタルスキルが高まった。
②官僚主義が葬り去られた。
③「柔軟な働き方」がもたらす恩恵と困難が見えた。
④「オフ」スイッチの大切さがわかった。
⑤人と人とのつながりの重要性が再確認された。

仕事のあり方を設計し直す中で、パーパスの役割が重要になっていきます。社員のやる気を引き出すパーパスがある企業に優秀な人が集まるようになってきました。
・どのようなパーパスを強化したいのか?
・新しい働き方をデザインすることを通じて、どのように自社の重んじる価値を追求し、生産性を高められるのか?
・自社のパーパスのために、いまどのような能力を──ひとりひとりの人間の能力とテクノロジーの能力をはぐくみたいのか?
をリーダーは明らかにする必要があります。

社員が自ら動けるパーパスがあることで、組織の生産性が高まるだけでなく、イノベーションも起こせるようになります。

組織を強くする働き方をリデザインするためには、4つのデザインプロセスが必要だと著者は指摘します。
①社員と社内の人的ネットワークと社内の職種について理解する。
②仕事のあり方を新たに構想する。
③新しいデザインのアイデアについてモデルをつくり、検証する。
④モデルに基づいて行動して、新しい働き方を創造する。

働き方をリデザインするための4つのデザインプロセス

自社のパーパスおよび価値観と全面的に共鳴し、社員の能力とモチベーションを活用して、究極的には生産性を向上させ、成果を挙げられる働き方を構築したほうがいい。それが自社だけの「シグネチャー(独自性)」になる。

①自社の重要な要素について理解する  
・あなたの会社では、どのようなスキルや人的ネットワーク、職種が生産性を向上させるために重要なのか?
・社内の知識の流れはどうなっているのか?
・社員は仕事と会社になにを求めているのか?
・人々は生涯を通じてどのような職業人生を経験するのか?を理解します。

生産性の4つの要素(活力、集中、連携、協力)や人的ネットワークと知識の流れをまずは理解することから始めましょう。その際、強い紐帯と弱い紐帯の強みを考慮し、イノベーションが起こるように組織をリデザインします。オフィスで働く意味を問い直し、偶然の出会いをデザインすることで、新たなアイデアが生まれやすくなります。

社員の体験を明らかにし、ペインを取り除いたり、好ましい要素を増やす努力を行い、時間、場所を考慮し柔軟性をもった働き方を提供することで、優秀な人が集まり、定着する職場をつくれるようになります。

②未来の仕事のあり方を新たに構想する  
働き方に関する深い理解を土台に、最適な仕事のあり方を設計します。オフィスを協力の場と位置づけ、社員同士が会話を交わし、人と人が偶然出くわす機会をつくることはイノベーションに効果があります。

それぞれの社員の自宅を健康と活力の源と位置づけてもよいでしょう。在宅勤務のあり方は人それぞれ異なることにリーダーは留意すべきです。その上で、社員の勤務時間のあり方を工夫することにより、集中と調整を促進することも構想のなかに入れ込みます。

社員を信用することだ。自宅で仕事をしている人たちが強いエンゲージメントと高い生産性をもって働いていると信じる必要があるのだ。

オフィスで働く人と在宅で働く人の評価設計も重要な要素になります。オフィスに滞在するよりも個々のメンバーの成果を重視すべきです。

よりよいチームをつくるために、以下のポイントを意識し、新しい働き方の構想を練りましょう。
・自分に適した仕事場をつくる。
・日々の習慣を確立する。休憩することに罪悪感をいだかない。
・非公式なコミュニケーションを通して、同僚たちとつながる。
・テクノロジーを有効に活用して、ほかの人たちとの距離をなるべく感じないようにする。
など社員の生産性とコミュニケーションづくりができるモデルを構想します。

③モデルをつくり、検証する  
構想したアイデアモデルをつくり、潜在的なリスク要因に照らして検証します。
・そのモデルは、未来に適応できるか?
・短期的、中期的、長期的に見て、時代遅れになることなく、目的を果たせるか?
・そのモデルは、すでに始まっているテクノロジーの変化を可能にし、社員がそれに応じたスキルの転換を成し遂げる後押しができるか?
・すべての社員が公平で正義にかなうと感じられるものになっているか?などを検証します。

④モデルに基づいて行動し、新しい働き方を創造する  
新しい働き方のモデルを自社の慣行に組み込み、企業文化に根づかせていきます。そのためには、リーダーの行動、そしてリーダーが語る物語が大きな意味を持ちます。具体的には、リーダーはマネジャーの役割がきわめて大きいことを理解し、マネジャーたちが役割を果たせるよう支援しなければなりません。人に共感を与えるパーパスをつくり、それを語ることが現代のリーダーに求められています。

社員とのコ・クリエーションを大々的に推進し、新しい働き方のデザインを選択する過程に社員を参加させ、変革のプロセスに社員を関わらせる必要があります。社員がリデザインに関わることで、新しい働き方がスムーズに定着します。本当に働きたいという組織を社員とともにつくることをリーダーはもっと意識すべきです。

企業は、自社ならではのシグネチャーとも言うべき働き方を確立することを目指すようになった。ほかの会社とは異なる独特の働き方を採用することにより、人材を引きつけ、自社につなぎとめ、生産性を向上させ、イノベーションを後押しすることが目的だ。働き方に関して自社のシグネチャーを確立することは、今日のすべての企業が直面している手ごわい課題であり、同時に大きなチャンスの源でもある。

「働く人を大切にする職場に人は集まる」という著者のメッセージがやがて、組織の常識になるはずです。時間、場所にとらわれず、パーパスを実現したい優秀な人が働きやすい環境をつくることで、組織は成長します。他社とは異なる自社らしい働き方を採用することで、多様な優秀な人材が集まり、イノベーションを起こせるようになります。

働き方が大きく変わる中、社員とともに自社のシグネチャーを確立できるリーダーが求められています。働き方のリデザインをすることは簡単なことではありませんが、先延ばしをすることは得策ではありません。本書のフレームワークとケーススタディから、新しい働き方を組織に導入するための多くのヒントを得られます。



この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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