アンラーン戦略――「過去の成功」を手放すことでありえないほどの力を引き出す(バリー・オライリー)の書評

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アンラーン戦略――「過去の成功」を手放すことでありえないほどの力を引き出す
バリー・オライリー
ダイヤモンド社

本書の要約

①脱学習(Unlearn) ②再学習(Relearn) ③ブレークスルー(Breakthrough)の3つのサイクルを回すことで、変化に対応できる組織がつくれます。企業を時代遅れの存在ではなく、イノベーションを起こせる組織に変えるためにアンラーンのサイクルを理解し、それを実践すべきです。

アンラーンが成長に必要な理由

優秀なリーダーになる人は、常に新しいひらめきやアイデアを求めている。だが、本当にブレークスルーをする前に、まずは一歩下がって、自分たちの可能性や能力を封じ込めている古い形式や考え方、習慣を捨て去らなければならない。今後も成功し続けるためには、過去に成功をもたらしたものを手放す、つまりアンラーンしなければならないのだ。(バリー・オライリー)

過去の知識や体験が成長の邪魔をすることがあります。テクノロジーが進化し、社会が大きく変わる中で、常に新たな知識が求められるようになっています。私たちはいつも何かを学び直さなければ、時代に取り残され、あっという間に古臭い存在になってしまいます。リーダーは過去に成功をもたらしたものを捨て去る勇気を持つべきです。このアンラーン(過去の知識の棚卸し)が、ビジネス成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。

自分を進歩させるためには、新しい知識や技術を身につける必要があります。その際、過去の知識やノウハウが進歩の妨げになることを忘れないようにしましょう。器がいっぱいであれば、新たな水が注げないように、頭の中に空きスペースがなければ、新たな知識は吸収できません。そんな過去の思考や行動をアンラーンしなければ、成長が阻害されてしまうのです。

ビジネスアドバイザー、起業家、作家のバリー・オライリーは、アンラーンには3つのサイクルがあると指摘します。
①脱学習(Unlearn)
自分の行動や考え方がうまくいかなかったり、自分の期待に沿っていなかったり、改善する余地があるようなら、それをきちんと認識し、過去の知識や経験を捨て去るべきです。

②再学習(Relearn)
今の自分を制限している、根深く染み付いた方法や行動、考え方を脱学習すると、新しいデータや情報、視点を受け入れることができるようになります。新しいインプットにより、今までの自分の世界の捉え方に疑問を持つようになれるのです。再学習を選択することで、私たちは成長できるようになります。

③ブレークスルー(Breakthrough)
脱学習したこと、そして再学習したことの結果がブレークスルーになります。脱学習・再学習の2つのステップから生じる新しい情報や洞察はきわめて強力で、あなたの行動やものの見方、考え方に影響を与え、成長を導いてくれます。

成功するためには、脱学習し、新たな方法を再学習し、ブレークスルーしなければならない。

成功したければ、アンラーンのこの3つのサイクルを回す必要があります。

新しい知識を得るためには、もう役に立たなくなったり、時代遅れになって進歩の妨げになっている知識を、脱学習しなければなりません。自分を時代遅れの存在にしないために、アンラーンのサイクルを理解し、それを実践するのです。

経営陣の多くが過去のキャリアで積んできた方法論や考え方は、変化が激しい時代には、もはや通用しないと考えるべきです。現状維持が組織を破壊してしまうのです。リーダーが勇気を持って、古い思考パターンから脱却しなければ、組織はいつまで経っても変われません。リーダーは新しい情報や知識が必要だと考えることから、アンラーンをスタートしましょう。

リーダーのもっとも重要な行動の一つは、組織内でほかの人々に期待する行動を、まず自分がやって手本を見せることです。自分自身でアンラーンを実践し、新たな思考や行動を起こし、成功体験を手に入れるのです。

次に人々にアンラーンを奨励し、アンラーンを行っても安全だと感じさせることによって、アンラーンを組織文化の一部にします。組織に心理的安全性があれば、古い知識を捨て去り、失敗を恐れず新たなことにチャレンジできます。アンラーンが常態化しているクリエイティブな組織をつくることで、イノベーションを起こしやすくなるのです。

アップル、アマゾンやグーグルのリーダーはアンラーンを実戦して、飛躍的な成長を手に入れました。一方、アンラーンを怠った組織であるシアーズやリーマン・ブラザーズは、マーケットからの退場を余儀なくされたのです。

失敗とは何もしないこと!

アンラーンのサイクルを回すために、これまでの成功体験や、時代遅れの考え方や行動をいつ手放すべきか、そして桁外れの良い結果を出すための、新しいものの見方や方法をいつ取り入れるべきなのかを認識することだ。 そう、学ぶことはたしかに前進に必要な一部だが、それだけでは十分ではない。何を手放すべきか、何から離れるべきか、そしていかにアンラーンするかを知るためには、単に学ぶこと以上の努力が必要だ。

まず、最初にアンラーンの問いかけを行い、準備が整ったら、脱学習・再学習のステップに進みましょう。
・自分が期待した成果に及ばなかったのはどこか?
・思った結果が出なかったのはどこか?
・そうした結果に影響を与えるために、自分がしたいことは何か?
・自分の安全地帯から出て、成功するには、どのようにすればいいだろう?
・自分にとって、大きく考え、小さな一歩から始めるものとは何だろう?

考え方を変えるには、まず行動を変えなければなりません。行動を変えれば、世界を違った見方で見られるようになり、違った経験をし始めます。

コンフォートゾーンを抜け出し、今までの常識を捨てて、行動を続けるうちに、脱学習が加速し、新たな発見を得られます。

私は昨年から大学で教えることで、過去の知識や体験を塗り替えられました。自分が学んだことがいかに古く、時代遅れになっていたかを大学で実感できたのです。日々、学生と交流する中で、Z世代から知見やアイデアをもらえ、アンラーンのサイクルを回すことができました。

同じ考え方や行動に固執すると、将来の成功が阻害されてしまう。飛躍的に進歩し、再学習することによって、学んだことをじっくり考えるチャンスが訪れ、より大きく野心的な挑戦への足掛かりができる。

成功するリーダーたちはブレークスルーした後、サイクルを再び最初から回し始めて、新たなイノベーションを起こす努力を続けます。絶えず、脱学習、再学習のサイクルを回すことで、企業の成長が持続するのです。

ブレークスルーを通じて本当にリーダーが達成したいことは次の3つになります。
①結果を熟考する。
②軌道修正する。
③新しい情報や勢いを得て、ループを再び加速させ、さらにブレークスルーを達成する。

高い目標を掲げながら、小さな一歩を踏み出すことが重要です。 大きな博打を打つのではなく、小さな賭けをたくさんするうちに自分にフィットしたやり方が見つかります。

失敗とは、何もしないこと、行動を起こさないことだ。「何かをする」と、何かしら新しい、もしかしたら驚くような情報や洞察にたどり着くかもしれない。だから、どんなことであっても、それはあなたにとって良い結果なのだ。常に何かを学び、何かを発見し、あるいは何かが間違っていることがわかる。

リーダーは今までとは異なる場所である安全地帯の外で、挑戦をスタートすべきです。新しい方法や道具、手法を試すことによって、リーダーたちは過去の決まりきった行動や近視眼的な思考から抜け出せます。彼らは変化することで、より高いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。

顧客体験がリーダーの変革を加速させる理由

イノベーションにつきものの不確実性を切り抜けるには、顧客の反応こそが、もっとも客観的で信頼できる指針なのです。顧客起点の視点を取り入れることで、脱学習・再学習がしやすくなり、ブレークスルーするためのチャンスも見つけやすくなります。

ガチガチに凝り固まった頭から過去の常識を捨て去り、好奇心を取り戻すのです。行き詰まったとき、既存のプロモーションが通用しないときには、アンラーンを行うタイミングだと捉えましょう。

顧客との関係もアンラーンできます。顧客の声に耳を傾ける気さえあれば、顧客からより多くのことを学べます。成功したいなら、顧客の声を聞く耳を持たなければなりません。SNSなどのテクノロジーの進化のおかげで、私たちは顧客からの反応を即座に知り、行動を起こし、顧客体験を改善する方法を提案できるのです。

リーダーが実際に顧客になって、自社の製品やサービスを使ってみるというアクション=新しい行動を再学習することで、ブレークスルーを起こせるようになります。リーダーが顧客視点を手に入れることで、顧客のペインを実感できるようになります。ここからサービスを改善したり、顧客体験をもっと高めるためのアイデアを考えられるようにするのです。

相変わらずの戦略からは、相変わらずの結果しか出ない。リーダーたちは、ほかの人があまり行かない道を進むことにした。昔からの習慣や、欠陥のある活動をアンラーンするためには、考え方や行動を変えるだけではとても追い付かないことに気づいた。望むようなブレークスルーを遂げ、並外れた成果を出すためには、安全地帯から出ることを厭わず、不確実な方法をとる勇気を持たなければならない。そういうリーダーは未来を恐れはしない。未来を生み出すのだ。

当然、新たなイノベーションが起こったときには、アンラーンを行わなければ、瀕死の重傷を負いかねません。そのイノベーションを体験し、思考と行動を変えることで、次に何をすべきかがわかります。他社のイノベーションをスルーしているとやがてディスラプトされてしまいます。リーダーはコダックの二の舞にならないようにイノベーションや顧客行動の変化に絶えず注意を払うべきです。

脱学習・再学習によって、ブレークスルーを経験し、既存のメンタルモデルや方法から自分を解き放つと、並外れた成果を出せるようになります。イノベーションによって世界は常に変化しているのですから、自分も過去にとらわれるのではなく、変化しなければならないと気づけるのです。

ブレークスルーは再学習で学んだレッスンを振り返る機会となり、もっと大胆な挑戦に取り組むためのきっかけにもなります。ブレークスルーを経験することで、私たちはキャロル・ドゥエックの「しなやかなマインドセット」(成長マインドセット)を手に入れられるのです。世界を違ったやり方で見たり、経験することで、世の中の見方まで変わり始めます。さまざまな思い込みを破壊しなければ、やがて成長は止まってしまうのです。

IAGのカタパルト作戦やインテルのアンディ・グローブの戦略転換、ディズニーのマジックバンド、NASAのスペースシャトルなどケーススタディも豊富で、これらを学ぶことですぐにアンラーンをスタートできます。まずは、脱学習から行動を起こし、再学習、ブレークスルーのサイクルを回しましょう。



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