INNOVATION STACK だれにも真似できないビジネスを創る
ジム・マッケルビー
東洋館出版社
本書の要約
イノベーションスタックによって、企業は飛躍的に成長します。いくつものイノベーションの積み重ね(イノベーションスタック)が企業の強みになります。起業家はひとつや2つのイノベーションに満足せず、次から次に生まれてくる課題を解決するアイデアを絶えず創造すべきです。
企業を成長させるイノベーションスタックとは何か?
イノベーションスタックは世界の中核にある──そして歴史上ずっとビジネスを変えてきた。(ジム・マッケルビー)
モバイル決済業界でイノベーションを起こし続け、勝者になったSquareの創業者のジム・マッケルビーがイノベーションスタックによって、企業は飛躍的に成長すると述べています。イノベーションスタックを起こし続けることで、その業界で最大になれるというのです。
イノベーションスタック→だれも解決したことのない、ひとつの問題を解決する(イノベーション)ことで、次々と起こる新たな問題を解決し続けて得られる一連の発明。積み上がったイノベーション。この積み上げが多ければ多いほど、競合他社に真似されにくくなる。
イノベーションスタックは、だれも解決したことのない問題を解決しようとすることから始まります。未解決の問題を解決するためには、クリエイティブになることが求められています。一つのイノベーションは、他のところに無理や課題を引き起こします。新たな課題を解決するためには、また別のイノベーションが必要となります。イノベーションを起こすたびに、別の課題が生まれるという課題のスパイラルが起こるのです。
このイノベーションの積み重ねが企業の強み(優位性)になります。たった一つのイノベーションでは差別化は難しく、あっという間に真似されてしまいます。起業家はひとつや2つのイノベーションに満足せず、次から次に生まれてくる課題を解決するアイデアを絶えず創造すべきです。
著者は起業家を反逆者、探検家だと定義します。起業家に必要なスキルは、新しいことへの挑戦力とあきらめない力であることがわかります。
ジム・マッケルビーとジャック・ドーシーはクレジットカードの問題(混乱と不当表示)を解決するためにSquareを起業し、ここからイノベーションスタックをスタートさせました。
アルミ製のカードリーダーをプレゼンするためにスティーブ・ジョブズのアポをとることで、イノベーションのタネが見つかったのです。ジョブズの体調が悪くなり、面談は実現しませんでしたが、アップルとの関係を構築することで、同社は偉大な一歩を踏み出しました。ハードを高速にイノベーションすることで、事業が形になっていったのです。
LOFTの携帯売り場からインスピレーションを受けることで、カードリーダーを小型化し、POCを行いますが、顧客から次々にフィードバックを得られました。機能を犠牲にし、カワイさを追求することで顧客体験が変わり、リファラルが起こったのです。
次に課題になったのが、クレジットカードとの提携ですが、ビジョンや課題解決のストーリーを語るデモによって彼らを味方にします。アメックス、マスターカード、VISAを口説く下りは読み物としても本当に面白いので、ぜひ、本書をご一度ください。
その後もSquareは度重なる問題をいくつもの「発明」によって解決していきます。スティーブ・ジョブズが世界初のiPadをデモした時に、リリースされていた金融アプリはスクエアだけでした。その最初の製品がSquareの旗艦製品となり、新たなエコシステムが生まれたのです。
これが爆発的成長のパターンだ。起業的な会社が機能するイノベーションを持っているところへ外部の市場変化が起きる。その新しい変化はイノベーションスタックをターボブーストし、それがすぐに適応して新しいシナジーを作り出す。相互作用がどう機能するか厳密にモデル化はできなくても、パターンはわかる。また世界を変える結果も見えるし、新しい時間的な主の圧力も感じる。
さまざまな開発を続け、イノベーションを起こし続けたことで、SquareはiPadリリースという最高のタイミングに巡り会えたのです。顧客の課題解決のためのイノベーションスタックにより、スタートアップは一気に飛躍できるようになります。
イノベーションスタックが競合との優位性を発揮できる理由
スクエア社では新しい発想がすぐに実現して発展するような環境が生まれた。生死に関わることなら、創造性が保守性を蹴倒す。新しいアイデアはすぐに試され、検証された。 発明とやり直しの組み合わせだ。この二つの要素は、見事に補い合う。
何か新しいことを試し、結果を見て、また新しいことを試すステップを繰り返すのです。このあきらめない力が他社への優位性になるのです。
ほとんどの新しいアイデアは失敗するか、とんでもない欠点を持っていますが、それを解決するうちにやがて顧客から評価されるようになります。失敗を犯したら、すぐに次の解決策を考え、実行に移すのです。
問題─ソリューション─問題の連鎖が続くうちに、問題の解決に失敗して死ぬか、あるいはすべての問題を解決して、手元に絡み合いながらイノベーションの集まりが残ります。この成功した集まりがイノベーションスタックなのです。
Squareは、ハード、ソフトからウェブサイトまで美しくデザインされることで、人々が噂するようになりました。ここから有名デザイナーなどの共同プロジェクトが生まれ、ブランドがクールな存在になったのです。
バンク・オブ・アメリカ(イタリー)の創業者A・P・ジャンニーニのケースからはビジョンとイノベーションスタックの重要性を学べます。弱者のための銀行からスタートし、その顧客のためにイノベーションを起こし続けることで、バンク・オブ・アメリカは巨大な独占市場を手に入れることに成功します。
起業家が、市場のないところで旅を始める。その人物は一連の問題を解決せざるを得なくなって、それがイノベーションスタックになる。そのイノベーションスタックは、先行者利益とあいまって、さらにいくつかの手口ともあいまって、世界を変える企業を創り出す。
ウスウエスト航空のハーブ・ケレハーは航空旅行の世界を万人に開放するというビジョンとイノベーションスタックにより、低運賃、ご機嫌な顧客、最高な定時運行記録、最高の成長率、最高の利益を計上しました。ケレハーはレガシーキャリアのやったことを否定し、同業の手法を何一つとして真似しませんでした。航空業界や政府からの嫌がらせ(ハードシングス)を乗り越えることで、彼らはいくつものイノベーションを起こし、飛躍的に成長しました。
同社は飛行機の活用時間を長くし、10分間で再出発できるよう運行スケジュールを組んだのです。地域航空、食事なしや顧客体験を高める乗務員、馬鹿げたルールの廃止、低価格などで航空業界を一変させました。低価格でありながら最高な顧客体験を追求することが、顧客を喜ばせるイノベーションにつながったのです。
ケレハーは仕事を楽しいものだと定義し、従業員とともに楽しさを追求し、顧客をサウスウエストのファンに変えていったのです。サウスウエスト航空はイノベーションスタックと文化を掛け合わせることで、他社には真似できない存在になったのです。(ケレハー引退後は低価格路線をやめることで、
イノベーションスタックの要素を個別に見てはいけない。イノベーションは全体として発展する。どの要素も、出し入れすれば他の要素のふるまいを変えてしまう。
いくつかのイノベーションを真似ることはできますが、イノベーションスタック(統合されたイノベーション)を真似ることは難しいと著者は指摘します。
普通の会社は他社の真似をすべきですが、新たな顧客を開拓する起業家は顧客に専念し、イノベーションスタックを起こすのです。イノベーションスタックの集まりが顧客に支持されていれば、競合(一部のコピー商品)に負けることはありません。弱小だったSquareが巨大なアマゾンに勝利できたのもここに理由があるのです。
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