未来をつくるグロースマーケティング(櫻庭誠司)の書評

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未来をつくるグロースマーケティング
櫻庭誠
クロスメディア・パブリッシング

本書の要約

グロースマーケティングでは企業の源泉である利益を上げることから逆算し、施策を実施します。グロースマーケティングにおいて、LTVが重要な指標となります。顧客を資産ととらえ、データドリブンでLTVがどれくらいになるかを定量化し、それを最大化するための施策を行うことが、利益につながっていきます。

マーケティングで失敗する3つの理由

「マーケティング=集客施策」という狭義の認識で「広告を出稿して集客を増やす」といった部分的な目的達成を目指すのではなく、事業活動全体を見据え、あらゆるフェーズでデータを活用して最適解を出し、最終利益へとつなげていくという点において、グロースマーケティングとは「経営改善」とニアリーイコールな手法といえます。(櫻庭誠)

マーケティングの優劣が企業の業績を左右するようになっています。データドリブンで顧客体験を高め、顧客をファンにする企業が勝ち組になる中、マーケティングの取り組みが遅い企業、昔ながらの営業主体の企業は苦戦しています。

企業で発生するマーケティングの失敗はそのほとんどが、施策の実行者が「事業の最終収益を見据えていない」ことに起因しているとソルブレイン代表取締役の櫻庭誠氏は指摘します。経営者がマーケティングリテラシーを高め、マーケティングに対して戦略投資を行う必要があります。部分最適型の単なるプロモーションを行うのではなく、利益を起点にバリューチェーン全体の変革を行うようにすべきです。

多くのマーケターは、売上、来店数、お問い合わせ数、CV、CVRなど目先の指標にとらわれ、それらの数字を改善すること(部分最適)に労力を費やしますが、企業の源泉である利益から考え、マーケティングを行わないと業績にはインパクトを与えることはできません。

著者はマーケティングで失敗する3つの理由を明らかにしています。
・失敗の理由① 施策が「部分最適」にとどまっている
マーケティングに関して、プロモーションや市場調査といった部分的なとらえ方をすると、必然的に「マーケティングの成功」もまた部分最適にとどまります。

・失敗の理由② データの連動不足
組織の壁を超えられないことで、多くの企業は失敗しています。各セクションが異なる施策を行ったり、データの連携を怠ることで、正しい施策が行われずにいます。各部門がそれぞれ成果や目標を目指すのではなく、自社のパーパス・ビジョンのもと、マーケティング戦略を立案すべきです。

利益を上げるために必要な要因を明らかにし、横断的に確認すべきデータや、全体最適を達成するために欠かせないはずのデータを共有し、正しい施策を実践するようにしましょう。

・失敗の理由③人に起因する問題 
全体最適が進まない背景には、各部署の連動不足に加え、人の問題が隠れていることも多いです。どんな会社でも、変化を嫌う人というのは一定数存在しているものであり、新たなシステムを導入したり、時代に合った仕組みを作ったりする場合には、必ず反対するものです。この反対勢力を味方につけるためには、パーパスとビジョンの旧友が欠かせません。

著者はこの3つの失敗を解決する手法=「グロースマーケティング」を提案します。グロースマーケティングは最終利益を増やすという一点にこだわるマーケティングの考え方です。

グロースマーケティングによって最強の組織がつくれる理由

DX時代の技術を活用し、事業全体を横断的に見ながら各所を最適化し、持続的成長へとつなげていく。それこそがグロースマーケティングの真骨頂です。

事業とは、利益を土台として持続、成長させていくものですが、マーケティングにおいては利益が度外視されてしまうことが多々あります。

利益を上げること、持続的成長することから逆算し、マーケティングを行うことが経営者やCMOに求められています。グロースマーケティングでは、「データドリブン」思考で考えることが原則になります。

過去の経験や経営者の勘といったあいまいな感覚にすがることなく、バリューチェーン上に存在するあらゆる情報を収集・定量化し、それを根拠として正しい判断を下すことで、失敗を減らせます。データと施策の精度が上がることで利益が上がるようになるのです。

■グロースを実現する3つのフェィズ
1、目的の明確化

グロースマーケティングは、その企業のミッションやビジョン、すなわち存在理由を核として行わねばなりません。あくまでミッションやビジョンにのっとったうえで利益を上げるというのが前提であり、目的もまたその範疇で定められるべきものです。

増益を目指すにあたり、どれくらいの成長を目指すのかという具体的な指標を決めると同時に、経営者が何を大切にするのかを明確にします。リーダーと従業員の価値観のすり合わせを行い、目的(企業のミッション・ビジョン)を明確にしたら、目標数字を作成します。

2、データ化とデータ連携
目的が定まったら、データ化とデータ連携を始めます。過去の売上や販売数、在庫量などをデータドリブンの指標として活用します。データのうち最も重視する指標は利益になります。

売上・・・「販売単価×顧客数×顧客あたりの購入数量」
販売単価・・・「原材料費+広告宣伝費+その他の経費+一つあたりの利益」
顧客数・・・「新規顧客+既存顧客」

数字は因数分解し、それらの要素が利益とどのような関係性にあるか、利益を阻害する要因はどこにあるかを明らかにします。

3、ボトルネックの解消
多角的に集めたデータから、現状把握、ボトルネックの発見、対策の実施という流れが作れます。

グロースマーケティングの効果を最大限に引き出すためのポイントは、データドリブンと、利益から逆算した施策になります。

「パーチェスファネル」と「インフルエンスファネル」を組み合わせた「ダブルファネル」によって、顧客の行動を分析することができます。

・パーチェスファネル→顧客が商品を認知し、購入するまでの一般的な心理変化の段階を逆三角形で示したもの。
・インフルエンスファネル→インフルエンスファネルとは、顧客が商品を購入した後の行動に注目し図式化したもので。パーチェスファネルの場合とは逆の正三角形の図式で、リピート購入した顧客が自発的に商品やサービスを情報発信することをゴールとします。

顧客の行動を一貫した大きな流れ、すなわちダブルファネルとしてとらえ、その段階ごとのボトルネックを解消していくというのが、現代型のCRM(顧客関係管理)戦略になります。このダブルファネルをグロースマーケティングにも取り入れるべきです。

LTVは、グロースマーケティングにおいても重要な指標となるものです。顧客を資産ととらえ、データドリブンでLTVがどれくらいになるかを定量化し、それを最大化するための施策を行うことが、利益につながっていきます。

LTVを高める本質的な手法は、顧客をファンにすることです。ファン化した顧客は、製品やサービスだけでなく、ブランドや企業自体にも好感を抱き、定期購入や新製品の購入はもちろん、インフルエンサーとして、SNSで情報を拡散してくれます。

クロスセルやアップセルにより、購入単価を上げたり、購入頻度を高めることでLTVは向上します。顧客との信頼関係を築いた上で、顧客にこれらの施策の提案を行いましょう。

最初の顧客体験をよくすることで、次の購入につながります。その後のコミュニケーションを継続しつつ、顧客ニーズを取り入れて製品やサービスを改善したり、新たなプロダクトを投入したりして、ファン化を進め、LTVの向上へとつなげることで、利益を拡大できるようになります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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