性格のいい会社(佐藤雄佑)の書評

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性格のいい会社
佐藤雄佑
クロスメディア・パブリッシング

本書の要約

「性格のいい会社」は社員の幸福を重んじる企業で、素晴らしい文化を持った企業です。この企業文化が醸し出す熱意と喜びに満ちた環境に、多くの素晴らしい人材が集い、その場に残り、高いパフォーマンスを発揮し、長期的な成果を生み出すことができます。

性格のいい会社とはなにか?

性格のいい会社と言うと、のんびりしたぬるま湯組織をイメージされるかもしれませんが、全くそんなことはありません。むしろ、事業を成長させることや顧客に対する提供価値を生み出すことにこだわっています。(佐藤雄佑)

ミライフの代表取締役の佐藤雄佑氏は、リクルートの人材コンサルタントとして、数千人の転職相談に乗ってきました。その中で、多くの企業が「いい人材が採用できない」という悩みを抱えていることを知りました。

佐藤氏は、「いい人材が集まる会社とは、どんな会社なのか」をずっと考えてきましたが、その答えが本書のテーマの「性格のいい会社」です。 性格のいい会社とは、人材を尊重し、成長を支援する会社です。また、仕事とプライベートの両立を重視し、社員がいきいきと働ける環境を整えている会社です。 著者は、性格のいい会社が、これからの時代を生き残るための新しい経営の形であると信じています。

組織の居心地は、半径5メートルで決まるというのが佐藤氏の持論です。マネージャーのマネジメントスタイルが変わると、組織全体に影響が及びます。マネージャーがリーダーシップをとり、チームメンバーとコミュニケーションを取りながら目標を共有し、チームのモチベーションを高めるリーダーシップスタイルであれば、チームメンバーの育成やポテンシャルの引き出し方も変わることでしょう。

逆に、威圧的なマネジメントスタイルであれば、チームメンバーの意欲が低下し、チームが弱体化する恐れがあります。したがって、マネージャーが組織に与える影響は計り知れないほど大きいのです。組織全体が良好な成果を上げるためには、マネージャーがリーダーシップをとり、適切なマネジメントスタイルを採用することが不可欠です。

性格のいい会社とは、「社員を幸せにする会社」です。理想論のように聞こえてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。会社であり、上司が社員の幸せを願う。シンプルですが、この想いに溢れた性格のいい会社には、いい人材が集まってきて、辞めずに活躍し、高い成果が出る。そして、顧客提供価値を高め、事業が成長し、会社は存続していく。

人材を獲得し、保持し、最高のパフォーマンスを引き出すことは、どの組織にとっても重要な課題です。特に、採用が困難な時代では、これらの課題はさらに困難を極めます。しかし、社員の幸せを中心に据えたカルチャーの創出と、戦略的な経営管理のバランスが取れた組織は、この課題を乗り越え、事業成長につなげることができます。

組織が最高のパフォーマンスを達成するためには、その基盤となるのは社員の幸せです。社員が働きやすい環境が整えられている場合、その組織は優秀な人材を引きつけ、彼らがより長く在籍することを確実にします。また、幸せな社員は、クリエイティブであり、生産的であり、そしてしばしば会社の目標に対する強いコミットメントを持っています。

ビジネスを成功させ、拡大していくためには、適切な人材の採用と育成、そして健全な組織文化の形成が必要不可欠です。事業の成長は、社員にとっての成長の機会を提供し、仕事への情熱を引き出す力があります。ビジネスと組織文化は、車のタイヤのように、組織の方向性と推進力を制御する両輪です。

私は「経営とはビジネス(事業)とカルチャー(組織)の両輪をバランスよく回すこと」だと考えています。  

しかし、これら二つが均衡していなければ、組織はなかなか正しく進むことはできません。残念ながら、現実には、ビジネスと組織文化のバランスが取れていない会社が多いのが現状です。 良い人材を引き寄せ、育成し、良いカルチャーを創り出すことは、ビジネスの発展にとって不可欠です。

それは、社員が個々の能力を最大限に発揮し、互いに協力して困難を乗り越え、目標に向かって進むための基盤を提供します。 同時に、ビジネスの成長は社員にとっての成長機会とやりがいを生み出します。新しいプロジェクト、新しい役職、新しいスキルの学習、これらはすべてビジネスの成長と共に生じる機会であり、社員が自分自身を挑戦と成長に開放することを可能にします。

ビジネスの目標と組織文化が互いに補完し、バランスを保つことが重要です。どちらか一方が他方よりも優先されると、組織全体の効果と効率が損なわれます。例えば、ビジネスの目標だけに焦点を当てすぎると、社員の満足度やモチベーションが低下する可能性があります。逆に、カルチャーだけに注力しすぎると、事業の目標達成が遅れ、競争力が低下する恐れがあります。

経営者がカルチャーデザインを重視すべき理由

私はカルチャーとはその会社が持つ「共通の価値観」だと思っています。

組織文化は、会社が設定するパーパス、ビジョン、ミッション、バリュー、経営理念といった基盤となる思想から生まれます。さらに、これらは会社が設立以来行ってきた行動や態度、人事制度、そして運用されてきた仕組みを通じて具現化され、形成されていきます。

このような組織文化は、社員が日々の業務を通じて形成し、再形成するものであり、組織全体の行動パターンと価値観を決定します。 そのため、会社の価値観と社員の価値観が一致しているかどうか、これが組織文化の健全性と効果を決定する重要な要素です。

一致している場合、社員は組織の目標と戦略を理解し、これを支持し、これに取り組むことができます。その結果、組織全体の生産性とパフォーマンスが向上します。

一方、会社の価値観と社員の価値観が合わない場合、それは往々にしてパフォーマンスの低下、離職率の上昇、そして組織全体の士気の低下につながります。これは、社員が自分の行動や思考が組織の目標や価値観と整合性が取れていないと感じ、その結果、彼らの動機付けやエンゲージメントが損なわれるからです。

そのため、組織のリーダーやマネージャーにとって、組織文化と社員の価値観が一致しているかどうかを評価し、それらがフィットしていることを確保することは、組織の持続的な成功に向けて重要な任務となります。

多くの会社において、ビジネスモデルや事業戦略といった戦略があるのに対して、カルチャーについては戦略がありません。

今日のビジネスにおいて、企業がビジネスモデルや事業戦略を策定するのと同様に、カルチャーデザインを積極的に取り入れていくことが必要です。

21世紀において、企業の成功においては、カルチャーデザインが重要な役割を果たします。明確なカルチャーデザインは、組織内の共有価値観や行動指針を示すことができ、組織内での協力や相互関係を促進することができます。

また、顧客との関係においても、明確なカルチャーデザインがある企業は、消費者との信頼関係を築き、それが企業のリピート率やロイヤリティにつながっています。企業がカルチャーデザインを意識して取り組むことで、社員のモチベーションや仕事への主体性を高めることができ、結果として業績向上につながることが期待できます。

しかし、カルチャーデザインは単なる企業の価値観を策定することではありません。実行可能で実践的な行動指針を示すことによって、働き方改革やイノベーションの促進にも貢献します。さらに、企業が社会的責任を果たすことにも繋がります。今後も、企業の経営戦略にカルチャーデザインを取り入れることは、企業が成功するために不可欠な要素となっていくでしょう。

組織の戦略と成果を最大化するために、組織の価値観、行動規範、日常的な慣習を整理し、再構築するプロセスです。 新しい時代に進むにつれて、組織の推進力や実現力を左右する要素の一つとして、このカルチャーデザインが重要性を増しています。それは、社員がよりエンゲージメントを持って働き、イノベーションを生み出し、組織全体が一体となって目標を達成するための枠組みを提供するからです。

一般に、組織のビジョン、ミッション、価値観は、その組織のカルチャーデザインの中心的な要素であり、それらを共有することで社員間の連携を強化し、組織のパフォーマンスを高めます。それらは、どのように仕事を行い、どのような行動をとり、どのように互いに関わるかについての一貫した理解を提供します。意識的なカルチャーデザインは、組織の成功を確実にするための強力なツールとなり得ると考え、経営者は戦略と同様にカルチャーデザインを重視すべきです。

「採れる・辞めない・成果出る」組織を作り上げるために必要なこと

性格のいい会社は目的ではなく手段、そしてゴールではなく、スタートです。性格のいい会社をつくるところを起点に、ビジネスとカルチャーの両輪がバランスよく回っていくことで、結果として会社が上手くいくのです。

カルチャーデザインと戦略、この二つの車輪が共に働く組織を目指すなら、その基盤となるのは「自分たちが欲しいと思う人材が、自発的に自分たちの組織を選ぶような会社になる」ことです。この点に関して、著者は「性格のいい会社」がスタートラインになると述べています。

性格のいい会社を創り出すためには、その環境が既に存在する社員にとっても魅力的であることが必要です。なぜなら、自分たちが働きたいと思うような会社にしか、優秀な人材は引き寄せられないからです。また、社員が自分たちの友人を紹介したいと思うような素晴らしい会社にしなければ、良い人材は集まってこないのです。社員を幸せにする性格のいい会社をつくれば、自ずとそういう人材が集まってくるのです。

現代のビジネス環境では、優れた人材を採用し続け、彼らが長期的に企業に留まり、成果を出し続けることが大きな課題となっています。「採れる・辞めない・成果出る」組織を作り上げるためには、社員の幸せをベースにしたカルチャーづくりと経営戦略の両輪をきちんとバランス良く回すことが重要です。

組織の安定性は、長期的な視野で見た場合、極めて重要な要素です。退職率が高いと、新たな人材を採用する必要があり、その過程で発生するコストや時間は避けられません。

退職率が下がることで、コストや時間を削減するだけでなく、組織の能力を積み上げることができます。社員が辞めずに成長することで、会社内での知識や経験を共有することができ、組織としての能力を高めることができます。また、退職率が下がることで、社員自身が長期的なキャリア形成を意識することができ、組織内での定着率も高くなるでしょう。

ビジネスにおいて、組織の安定性は強い競争力を生む重要な要素の一つにもなります。性格のいい会社をつくることを起点に、社員に適切なフォローを提供することで、彼らが成長し、組織能力を積み上げることができます。

さらに、社員が長期的なキャリア形成を考えることで、組織がより具体的かつ現実的な目標を設定することができます。このようなサイクルが長期的に回ることで、確実にビジネスが強化されることが期待できます。いい社員が長く働き、活躍することで、事業成長という成果得られるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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