仕事の未来×組織の未来――新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す(ラヴィン・ジェスターサン, ジョン・W・ブードロー)の書評

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仕事の未来×組織の未来――新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す
ラヴィン・ジェスターサン, ジョン・W・ブードロー
ダイヤモンド社

本書の要約

新しいワークOSは、常に変革を求められるものです。仕事の変化に対応するために、プロセス、文化、人材、構造、テクノロジーなどの中核的構成要素を柔軟に変化させ続ける必要があります。また、常にニーズに合わせて態勢を変え、適切な方向に向かって進化することが重要です。新しいワークOSが成功するためには、リーダーやマネージャーが、自分自身と部下をパーパスに従って導くことが必要です。

新しいワークOSが変える仕事と組織の未来とは?

脱構築とは、仕事の内容を見直して、タスク(業務)やプロジェクトといった構成要素に分解することであり、その仕事をしている人を能力やスキルの観点から捉え直すことである。再構築とは、そうして分解した仕事(タスクやプロジェクト)と人(能力やスキル)を、組織の構造や所属にとらわれず、新しく最適なかたちに組み合わせることだ。(ラヴィン・ジェスターサン, ジョン・W・ブードロー)

AIが仕事のやり方を変え始めており、その進展はChat GPTの登場によって一層加速しています。このため、企業は人とAIの最適な共存方法を模索しながら、優秀な人材が働きやすい環境を整備する必要があります。このような環境を実現するためには、敏捷性、自動化、多様性と公平性、そしてこれまでになかった就労形態が必要不可欠です。

企業は、これらの要素をバランスよく組み合わせながら、新しい時代に対応するための戦略を策定し、「新しいワークOS」を準備する必要があります。

■新しいワークOS
①組織を構成するジョブ(職務、ポスト)を、タスクやプロジェクトといった構成要素に分解する。
②働く個人を、現在と過去の職務やポストだけで見るのではなく、ケイパビリティ能力やスキルを解像度高く把握する。
③分解した仕事(タスクやプロジェクト)と人(能力やスキル)を最適なかたちに組み直す。

この新しいワークOSによって、組織や個人は従来の枠組みにとらわれることなく、常に最適な組み合わせを探求することができます。これにより、組織はより効率的かつ迅速に業務を遂行でき、同時に個人も自分の能力やスキルを最大限に発揮することができます。

AIは、職務やプロセスを分解し、その構成要素であるタスクや活動を特定することができます。そして、AIによる継続的な業務分析により、人間と機械の最適な組み合わせや、人間が最適な関わり方をするための指針を定めることができます。また、AIを活用した社内人材マーケットプレイスにより、全従業員のスキルや能力を多様なタスクや活動にシームレスにマッチングさせることができます。

これにより、多様なタスクとスキルの組み合わせが可能になり、マネージャーは職務と従業員を組み合わせるだけの役割にとどまることなく、より戦略的かつ効率的な人材配置が実現できるようになります。AIの存在は、タスクとスキルの多対多のマッチングを可能にし、企業にとって不可欠な存在となっています。

ユニリーバは、従業員に固定的雇用とフレックス雇用を選択できるような新しい雇用形態を設けています。この新しい雇用形態により、従業員は自分の都合に合わせて働くことができ、より柔軟性のある働き方ができるようになりました。同社はすでに、AIを活用した「フレックス・エクスペリエンス」プラットフォームを導入し、従業員とプロジェクト機会を迅速にマッチングすることで大きな成功を収めています。

このプラットフォームにより、従業員は自分のスケジュールに合わせてプロジェクトに取り組むことができ、現在のスキルを向上させたり、新しいスキルを開発したり、新しい経験を積むことができます。このような働き方は、従業員が自己成長を促進し、より自己実現につながる働き方を実現することができます。

新しいワークOSに必要な5つの要素

新しいワークOSを維持するためには、システムのゴールを再考し、システムを維持するための十分な調整と統合を維持しながら、絶え間ない進化をサポートするという発想に立つことだ。 

新しいワークOSを実行し維持するために、以下の5つの重要な要素に取り組む必要があります。
①プロセス(活動とワークフロー)
②文化(コラボレーション、行動規範など)
③人材(スキル、能力など)
④構造(仕事の体系や組織化)
⑤規模感のあるテクノロジー(自動化、実現技術、情報システムなど) 

企業が成功を収めるためには、効率的なプロセスとワークフロー、健全な文化、適切な人材、効果的な構造、そして最新のテクノロジーを備える必要があります。これらの要素を最適化することは、リーダーシップにとって非常に重要な役割を果たします。

人間中心の考え方に基づく組織の再創造は、従来の組織の枠組みや仕事の分解にとらわれず、個人の能力や適性、好みに合わせた柔軟な仕事の創造を目指します。これには、新しいワークOSの基盤が必要です。従来のワークOSでは、仕事と個人のつながりが固定的になっているため、個別対応が不可能であり、組織や労働者のニーズや選好の変化に対応することができません。

そのため、ヒューマノクラシーという考え方では、組織を個人が中心となって運営することを目指し、ホラクラシーという考え方では、階層的な組織の枠組みを廃し、小さな自律的なチームが自己組織化することを促進します。

これらのアプローチは、従来の組織の枠組みやワークOSを打ち破り、人間中心の柔軟な組織の創造を目指しています。ただし、このようなアプローチには、組織内での情報共有や意思決定のプロセスの変革など、新たな課題も伴います。これらの課題に対応するためには、従来の組織やワークOSとは異なる、新しい思考やツールの必要性があります。

現代のビジネス環境では、組織には柔軟性と多様性が求められます。多様な人材が増えることで、よりインクルーシブな組織になることが望まれます。このため、組織は様々な人々の声に耳を傾け、その意見を反映させることが必要です。これにより、組織の行動規範や価値観が明確化され、全ての従業員がその価値観に従って行動することができます。

しかし、現代の急速な変化に対応するためには、従来のワークOSでは十分ではありません。企業は時代にフィットした新しいワークOSを採用することで、常に変化し続け、生産性や環境、社会、企業統治の問題に迅速かつ適切に対応することができます。

ただし、新しいワークOSは、常に変革を求められるものです。仕事の変化に対応するために、プロセス、文化、人材、構造、テクノロジーなどの中核的構成要素を柔軟に変化させ続ける必要があります。また、常にニーズに合わせて態勢を変え、適切な方向に向かって進化することが重要です。

新しいワークOSが成功するためには、リーダーやマネージャーが、自分自身と部下をパーパスに従って導くことが必要となります。リーダーやマネージャーは自分自身と部下を明確な目的に従ってリードしなければなりません。

リーダーは、変化に適応し、柔軟にアプローチを調整することができるリーダーシップスキルを求められています。組織の文化や行動規範を実践し、全従業員が共有する価値観を尊重することで、組織が成功できるようになるのです。

人材が参加するプロジェクトを選ぶ際には、やりたい仕事内容や担当する業務だけでなく、そのプロジェクトを導くリーダーの「ブランド」も考慮されるようになってきます。つまり、そのリーダーがどのような手法でチームを導き、成功に導くのかが重要となっています。

このため、リーダーは透明性の高いリーダーシップのブランドと実績を確立することが求められます。その結果、より多くの人材を集め、チームを成功に導くことができるようになります。


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