フレームワークを使いこなすための50問―なぜ経営戦略は機能しないのか? (牧田幸裕)の書評

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フレームワークを使いこなすための50問―なぜ経営戦略は機能しないのか?
牧田幸裕
東洋経済新報社

本書の要約

ビジネスフレームワークは、事象を整理し、情報を網羅的に収集するために必要不可欠なツールです。ただし、フレームワークを単純に当てはめるだけではなく、背景や因果関係などの視点を掛け合わせて、より深い洞察を得ることが大切です。こうしたアプローチによって、より効果的な意思決定を行い、企業の成長を促進することができます。

フレームワークが重要な理由

フレームワークとは、情報を整理する「枠組み」のことだが、もう1つ重要な意味合いがある。それは、「抜け漏れなく、重複なく、全体として網羅的に」情報を整理する枠組みだということだ。(牧田幸裕)

ビジネスフレームワークを使わない場合、自分の頭で事象を整理しようとすると、思いついたことをただただ羅列してしまい、本来検討すべき事象の抜け漏れが生じてしまったり、重複してしまうことがあります。このような場合、分析の前提段階で現状を正確に整理することができず、不完全な情報に基づいた意思決定をしてしまう可能性が高くなります。

MECEは、ビジネスフレームワークの一つで、相互に排他的かつ完全なカテゴリーに分類することで、情報を整理し、明確な思考を促すために使用されます。 MECEは、以下の手順で適用することができます。

1,問題を定義する:まず、解決すべき問題を明確に定義します。
2,ツリーマップを作成する:問題を解決するための概念的な枠組みとして、ツリーマップを作成します。このマップは、全体像を理解し、カテゴリーを整理するために使用されます。
3,カテゴリーを作成する:ツリーマップ内で、排他的かつ完全なカテゴリーを作成します。つまり、1つのカテゴリーが別のカテゴリーと重複しないようにします。
4,カテゴリーを細分化する:カテゴリーを必要に応じて細分化し、全体像を明確にします。
5,情報を整理する:問題に関連する情報を各カテゴリーに整理します。
6,情報を評価する:情報を分析し、問題解決に必要な情報を特定します。
7,解決策を導出する:情報を評価した後、問題解決のための解決策を導き出します。

MECEを使用することで、問題を整理し、情報を簡潔にまとめることができます。これにより、不完全な情報に基づく意思決定をするリスクを減らし、より正確で効果的な意思決定をすることができます。

MECE以外のフレームワークを活用することで、客観的な視点から事象を整理し、必要な情報を網羅的に収集することができます。また、フレームワークを使いこなすことで、企業の現状に応じた適切な戦略や施策を策定することができます。これによって、企業の成長や競争力を高めることができます。

情報収集は現状分析にとって重要なタスクですが、単に情報を収集しただけでは分析ができるわけではありません。収集された情報から視点や示唆を灸り出し、アクションにつなげることが現状分析の真髄です。したがって、情報収集とは分析を行うために必要な事実一情報を集めることであり、現状分析とは収集された情報から視点や示唆を灸り出すことであるといえます。

仮説を持たずに情報収集を行うと、視点や示唆を得ることができません。仮説を持つことで、情報収集の対象を絞り込むことができます。また、仮説を作ることで、必要な知識や情報が引っかかるようになり、取捨選択がしやすくなります。

しかし、多くの戦略立案担当者は情報収集を行えば、自動的に分析ができると勘違いしている傾向があります。このような状況では、著者が「絨毯爆撃型リサーチ」と呼ぶ、役に立たない情報を集めるだけの行為に陥ってしまいます。こうしたやり方では、得られる視点や示唆は非常に少なく、生産性が低くなるばかりです。

また、現場で必要な情報が全て揃うことは稀であり、必要な情報をすべて集めるためには膨大な時間がかかることもあります。そういった状況下であっても、自分なりの示唆を出すためには、論理的に考えてこういう結論になるだろう、こういう示唆が得られるはずだという勇気を持つことが求められます。

フレームワークには、その目的に応じて使用するタイミングがあります。たとえば、BCG-PPMの目的は、事業を4つの象限にプロットすることにより、どの事業に経営資源を配分すべきか、どの事業から経営資源を配分すべきかを明確にすることです。

BCG-PPMは、ポートフォリオ分析の一種で、企業が所有するプロジェクトを評価し、最適な投資戦略を選択するために使用されます。このモデルは、市場成長率と相対的な市場シェアを使用して、プロジェクトを4つのカテゴリーに分類します。
・スター (Star):高い市場シェアと高い市場成長率を持つプロジェクト。企業にとって、最も価値のあるプロジェクトであり、積極的な投資を行うべきプロジェクトです。

・キャッシュ・カウ (Cash Cow):高い市場シェアを持ち、低い市場成長率を持つプロジェクト。企業にとって、収益を安定的に確保できるプロジェクトであり、現状維持が望ましいプロジェクトです。

・問題児 (Question Mark):低い市場シェアを持ち、高い市場成長率を持つプロジェクト。企業にとって、将来的にスターに成長する可能性があるプロジェクトであり、積極的に投資を行うべきプロジェクトです。

・負け犬 (Dog):低い市場シェアと低い市場成長率を持つプロジェクト。企業にとって、将来的に成長が期待できないプロジェクトであり、見直しや撤退が必要なプロジェクトです。

BCG-PPMを使用することで、企業は自社のポートフォリオを分析し、収益性の高いプロジェクトに投資することができます。また、将来の市場動向に対する企業の競争力を予測することもできます。 BCG-PPMは、独立性の高い事業部門を超えて経営資源の配分を検討するために、全社戦略の策定時に使用されます。

同様に、3C、バリューチェーン、5Fs、アンゾフのマトリクス、バリューチェーン分析など、フレームワークはそれぞれ特定の目的と使用方法があります。

しかし、この使用目的やタイミングに関する認識が薄いため、戦略立案担当者は適切でないタイミングでフレームワークを使用することがあります。その結果、フレームワークが提供する情報以外の分析結果を無理に引き出そうとしてしまい、正確な戦略策定が妨げられることがあります。

アンゾフのマトリックス

「アンゾフのマトリックス」とは、経営戦略の分析ツールの一つで、市場と商品の組み合わせによる成長戦略の選択を支援するものです。

市場拡大性とは、既存市場においてどの程度の成長余地があるかを表し、商品開発性とは、既存商品に対してどの程度の開発余地があるかを表します。 このマトリックスには、以下の4つの戦略が示されています。
・市場深耕戦略 既存の市場で既存の製品をより深く販売することに焦点を当てた戦略です。この戦略は、既存の顧客により多くの製品を販売することによって、収益性を向上させることを目的としています。

・市場開拓戦略 市場拡大性が高く、商品開発性が低い場合に選択される戦略です。新しい市場に参入し、既存商品を販売することで成長を目指します。市場調査や販売戦略の見直しが必要です。

・商品開発戦略 市場拡大性が低く、商品開発性が高い場合に選択される戦略です。既存の市場で新しい商品を開発し、販売することで成長を目指します。商品開発力の向上やマーケティング施策の充実が必要です。

・多角化戦略 市場拡大性が高く、商品開発性が高い場合に選択される戦略です。新しい市場に参入し、新しい商品を開発することで、事業領域を拡大し成長を目指します。市場調査や商品企画力の強化が必要です。

経営者がこのマトリックスを活用することで、自社の事業戦略について客観的に評価し、適切な成長戦略を選択することができます。また、成長戦略の方向性を見直す機会としても役立ちます。

売上=顧客数×商品・サービス価格×購入数×購入頻度という公式が作れますが、売上を増やすためには、購入数や購入頻度の向上を図ることが必要となります。

成長戦略を描く上で、「市場深耕」は非常に難しいとされています。そのため、通常は「市場開発」と「商品開発」の領域を最初に検討し、最後に「多角化」の領域を検討することが推奨されます。この理由としては、新規の商品・サービスには開発リスクがあり、新規の顧客のニーズを把握することが難しい場合があります。また、新規市場に参入するためにはチャネル開拓にも多大なコストがかかることが挙げられます。

新しい製品やサービスを開発することには、開発リスクが伴いますし、新たな顧客のニーズを正確に把握することも困難です。このため、成長戦略を考える際には、まず「市場開拓」と「商品開発」に注力することが重要です。

ビジネスフレームワークは、事象を整理し、情報を網羅的に収集するために必要不可欠なツールです。ただし、フレームワークを単純に当てはめるだけではなく、背景や因果関係などの視点を掛け合わせて、より深い洞察を得ることが大切です。こうしたアプローチによって、より効果的な意思決定を行い、企業の成長を促進することができます。

経営戦略のフレームワークを理解するだけでなく、それを使い倒すことで、事業計画の質を高められます。正しい戦略を実行することで、企業は成長できるようになります。著者のフレームワークの活用法を身につけることで、企業の持続的な成長を実現することができます。

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