アウトプット思考 1の情報から10の答えを導き出すプロの技術
内田和成
PHP研究所
本書の要約
アウトプットから逆算して、最小限のインプットで正確な判断が可能になると、ビジネスの成果も向上します。頭の中の「20の引き出し」を有効活用し、情報を整理することで、脳内にスパークが生まれ、優れたアウトプットを生み出すことができるようになります。
アウトプットから逆算し、インプットを考えよう!
インプットを最小にして、アウトプットを最大にすることができないかと考えるようになったのだ。つまり、情報収集や整理になるべく時間をかけず、最大のアウトプットを出すという発想である。(内田和也)
現代において、AIの進化は驚異的であり、情報収集力において人間がAIに勝つことは困難になっています。そのため、単に情報を集めるだけではなく、ユニークかつ鋭いアウトプットを生み出すことが重要となります。
内田和也氏が提唱する知的生産術は新しいものを生み出す力に焦点を当てています。同じ情報源を元にして同じ発想をするだけでは、今後仕事で差別化することはますます難しくなり、若い世代や生成AIに置き換えられる可能性が高まります。
著者が指摘するように価値ある自分らしいアウトプットから逆算し、インプットをデザインすることで、パフォーマンスが高い人になれます。
自分にとってのアウトプットとは何かを徹底的に考え、そのために必要なものだけをインプットするのです。目的を達成する方法を明確にし、そこにつながるインプットを心がけるようにしましょう。
具体的には、自分のスタンスを明確にし、そこに引っかかったものだけをピックアップする。例えば自分の目的が「意思決定」ならば、その目的を意識したうえで、必要最低限の情報だけを集める。「説得」ならば、相手が必要な情報は何で、自分には何が求められているのかを明確にしたうえで情報を収集する。 あるいは、自分の志向=得意分野を明確にし、その情報だけが入ってくる仕組みを作る。これが、私が本書で提案したい情報術である。
他の人が100の情報が集まらないと決められない中で、たった30の情報で同じ質の意思決定ができる人間が、優れたリーダーだと著者は指摘します。この能力はリーダーだけでなく、全ての人にとって重要なものです。少ない情報で迅速に決断することができれば、仕事のスピードが向上し、より重要な仕事に時間を割くことが可能となります。そのため、少ない情報で意思決定できる能力は非常に重要なものなのです。
肌感覚で得た情報をマクロで俯瞰し、その後もう一度「掘り下げる」ことで、正しいアウトプットを出せるようになります。なぜそれが起こったのか?という「why」の視点や、「この後、何が起こるのか」といった「so what」の視点から、ものごとを考えるようにしましょう。
脳内の「20の引き出し」がスパークを生む!
本書では的確なアウトプットをするために、「20の引き出し」「デジタルとアナログの使い分け」「脳にレ点を」といったユニークな手法を紹介しています。これらの手法によって、価値あるアウトプットを生み出せるようになります。
「20の引き出し」とは、頭の中に情報を整理して入れるための仮想の引き出しを作り、そこに入手した情報を関連する場所に整理することを指します。新聞や雑誌、ウェブなどで得た情報や、人から聞いた話、街中で見かけてふと気づいたことなど、入手した情報を頭の中の仮想の引き出しに入れておくのです。
例えば、あなたが「リーダーシップ」「イノベーション」「人材育成」に関心があるとすると、これらのテーマごとに引き出しを作ります。そして、ある情報を得たときに「これはリーダーシップにとってのヒントになるな」と思ったら、それを頭の中の「リーダーシップ」の引き出しに入れるのです。
優れたアイデアを「スパーク」させるには、とりあえず面白そうだと思った情報を頭の中で泳がせ、熟成させるべきというのが、私の持論だ。だが、単に「面白い情報」というだけでは、記憶に残りにくいのも事実。「この引き出しと関連した面白い情報があったな」というほうが、記憶への定着率が格段に高まる。
20の引き出しを作ることで情報のアンテナが立ち、必要な情報が次々飛び込んでくるようになります。私はイノベーション、起業、マーケティング、読書、知的生産術、ケーススタディなどの仮想の引き出しを脳内につくっています。
「デジタルとアナログの使い分け」は、デジタル技術を活用しながらも、アナログな手法や思考を大切にするアプローチです。情報プロセスの一部にアナログを入れることで、他者との差別化ができるようになります、情報を素早く収集するためにはデジタルが便利ですが、深い理解や感性を養うためには手書きなどのアナログのプロセスが求められます。
現場に行く、顧客へのインタビューを重ねる、書籍や専門家へのヒアリングなどのアナログの情報収集を行うことで、アウトプットの質が高まります。デジタルとアナログのバランスを取ることで、より洞察力のあるアウトプットが可能になります。
二次情報よりも一次情報が大事だというのは、多くの人が言っていることだ。そして、私もそれに全面的に同意する。やはり、自分が直接見聞きした情報というのは、圧倒的に強い。何より臨場感が違う。直接人と会って話を聞くことで、その話の内容だけではなく、細かいニュアンスも伝わってくるし、こちらの思考も刺激される。紙で同じ内容を読んだのとでは、大きな違いがある。
私は社外取締役、著者や大学の特任教授として活動することで、経営者やコンサルタント、士業などのプロフェッショナルの方々とダイレクトにコミュニケーションを取ることができるようになりました。彼らが語る実践的なケーススタディが、私の新たな武器になり、この数年でパフォーマンスが以前よりアップしました。
特に、現場に足を運び、様々なプロフェッショナルと「雑談」することが重要だと感じています。その場の空気から生まれる雑談が次のビジネスにつながります。
雑談を重ねるうちに、経験や知識が積み上がり、良いアウトプットが生み出せるようになります。また、ネットワークを広げることで、さまざまな情報に触れる機会が増え、より多角的な視点で物事を捉えることができるようになりました。
「脳にレ点を」とは、情報を取り入れた後にしっかりと脳内で整理し、自らの考えや意見を練り上げることを指します。情報だけを収集しても十分なアウトプットが生まれるわけではなく、脳の中にしっかりと情報を埋め込み、それを活用しながらアウトプットを心がけるようにします。
また、アウトプットの仮説を立てることで、必要な情報をスピーディに集められるようになります。結果、短時間で情報収集ができるようになり、仮説の精度を高められ、それを実践することで結果を出せるようになります。
内田氏は情報収集の重要性に独自の見解を持っています。彼は情報収集を最小限に抑えるべきだと主張し、時間をかけて情報を集めるよりも、アウトプットから逆算し、必要最低限の情報で判断することが最大の成果を上げる方法だと述べています。この手法を実践することで、アウトプットの質を高められるのです。
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