THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法
ダニエル・コイル
かんき出版
本書の要約
強力なチームには特定のスキルセットが必要です。それらは、安全な環境の提供、弱さを開示すること、共通の目的を設定することです。これらの要素は日常のシグナルや合図によって形成されます。これらを実践し、優れた文化を築き上げること、最強のチームを形成することで、利益を上げることができるようになります。
チームの文化がなぜ重要なのか?
チームの文化には、おそらく地球最大級の力があるだろう。成功しているビジネス、優勝したスポーツチーム、幸せな家族には、かならず力強いチームの文化がある。反対にチームの文化が存在しない環境や、むしろ毒になる文化がはびこる環境もある。(ダニエル・コイル)
NYタイムズ・ベストセラー作家のダニエル・コイルは、本書でチーム文化の構築に関する深い洞察を提供しています。コイルは、世界で最も優れたチーム—Pixar、Google、アメリカ海軍SEALsなど—ケースから企業文化の重要性を明らかにしています。
これらの強いチームには3つの共通点(スキル)があるとコイルは言います。
①安全な環境(Build Safety)
②弱さの開示(Share Vulnerability)
③共通の目標(Establish Purpose)
①安全な環境(Build Safety)
安全な環境とは、チームのメンバーが自身の発言や行動によって脅かされることがない状況を指します。つまり、メンバーが自由に意見を述べたり、行動を起こしたりすることができる状態です。このような状況を実現するためには、リーダーやメンバー全員が心理的安全性の重要性を理解していることが必要です。
メンバーは自信を持って意見を出すことができ、その意見が受け入れられることで、チームの意思決定や業務にプラスの影響を与えることができます。このような環境では、メンバーは自身の能力や専門知識を活かすことができ、チーム全体の成果に貢献することができます。
ヒット作を連発するPixarには、この安全な環境が用意されています。作品へのフィードバックのミーティングでは、肩書きにとらわれず、率直に意見を交換することが求められています。そして問題を発見すると、協力して解決策を探り、作品のレベルを高めていきます。自由な意見交換が、チームの創造力とイノベーションを促進しているのです。
以下の3つのシグナル(普段の何気ない仕草や振る舞い、言動)が、安全な環境を生み出すと著者は述べています。
1、エネルギー
目の前で起こっている他のメンバーとの交流を大切にしている。
2、個別化
メンバーを独自の存在と認め、尊重している。
3、未来志向
関係はこの先も続くというシグナルを出す。
これら3つのシグナルをすべて合わせると、最終的に自分がここにいて安全だと思えるようになります。また、相手を大事にしているという帰属シグナルを打ち出すことで、チームの関係がよくなり、定着率がアップすることもわかっています。
信頼関係と安全な環境を構築するためには、「小さなシグナルを送り続ける」ことが鍵を握ります。このアプローチは、チームメンバーがお互いを理解し、信頼するための土壌を作り出します。以下に、そのような代表的な「帰属的シグナル」をいくつか紹介します。これらのシグナルを組み合わせることで、相手との関係をよくできるのです。
1. 「あなたはチームの一員である」(帰属意識)
このシグナルは、メンバーそれぞれが自分がチームに所属していると感じ、一体感を生む効果があります。
2. 「このチームは特別で、高いレベルが期待されている」(期待の表明) チームの成果に対する高い期待値は、メンバーのモチベーションを高め、全体のパフォーマンス向上に貢献します。
3. 「あなたにはそのレベルに到達する力があると信じている」(信頼) この信頼の表明は、メンバーが自信を持って取り組む背中を押し、さらなる成長を促します。
4. 「あなたの話を聞いている」(傾聴)
メンバーの意見やアイデアを尊重することで、より良いコミュニケーションと信頼関係が築かれます。
成功するチームの5つの要素
人は、孤独や不安を感じるとパフォーマンスが下がります。逆に、他人との良い関係と信頼感があれば、その力は倍増します。共感や思いやりを日常的に示すことで、チーム内の信頼関係が深まります。 また、物理的な距離を短くしたり、コミュニケーションの頻度を高めることも重要です。
よいシグナルが何度も共有されることで、チームは強くなります。
目的意識の高い環境はこうやってつくられる。どんなに立派な言葉でも、1回しか伝えないのでは意味がない。小さなシグナルをつねに送り合い、チームとしての目標をメンバー全員で共有するのが大切だ。気の利いたことを言う必要はない。一見すると「当たり前」の内容を、ぶれずに伝え続けていくことに意味がある。
MITのアレックス・ペントランドは成功するチームには、いくつかの共通の特徴があると指摘します。以下に示す5つの要素は特にパフォーマンスを高めるうえで重要だと言います。
1.チームの全員が話し、話す量もほぼ同じで、それぞれの1回の発言は短い
この要素は、チーム内での平等な発言機会を確保することにつながります。それによって、多様な意見や視点が出ることで、より良い決定が下される可能性が高くなります。
2.メンバー間のアイコンタクトが盛んで、会話や伝え方にエネルギーが感じられる
アイコンタクトは信頼を築く基本的な要素であり、その結果として生まれるエネルギーがチーム内のコミュニケーションを円滑にします。
3.リーダーだけに話すのではなく、メンバー同士で直接コミュニケーションを取る
これによって、情報や意見が集中しないようにし、各メンバーが責任感を持って参加する環境を作り出します。
4.メンバー間で個人的な雑談がある 個人的な雑談は、チーム内の人間関係を深め、結果として仕事の効率や協力性が高まることが多いです。
5.メンバーが定期的にチームを離れ、外の環境に触れ、戻ってきたときに新しい情報を他のメンバーと共有する
外部の情報や視点を取り入れることで、チームが閉じこもりがちな状態を防ぎ、新しいアイディアや解決策が生まれやすくなります。
これら5つの要素は、チーム内での「心理的安全性」を高める効果もあります。「ここは安全だ!メンバーがつながっている」という心理的安全性が確保された環境では、失敗を恐れずに新しいことに挑戦しやすく、学習と成長が促されます。ベンチャーであったグーグルが広告ビジネスでオーバーチュアに勝てたのも、この心理的な安全があったからなのです。
②弱さの開示
お互いに弱みを見せ、理解し、そして補い合うことによってチームは強くなります。強みだけでなく、弱みも含めた相互補完の関係がチームワークを生み出すのです。チームとは、一人ではできないことを皆で協力して成し遂げるために集まった人々の集まりです。つまり、個々の弱みを見せることが、お互いに協力し合うチームになっていくのです。
弱みを見せることは、自己開示とも言えます。自己開示によって、メンバー同士がお互いをより深く理解し、信頼関係を築くことができます。誰もが完璧ではなく、誰もが弱みを持っています。その弱みを認め合い、受け入れることで、お互いの成長や発展に繋がるのです。
特にリーダーは、積極的に自分の弱みを見せるべきです。リーダーが自ら弱さを開示することで、他のメンバーも同様に自分の弱さを出せるようになります。これにより、メンバー同士が互いの弱さを受け入れ合い、共感し合える空気感が生まれるのです。
③共通の目標
チームが共に目指すべき明確な目的やビジョンを設定することで、メンバーのモチベーションが高まり、効率的に作業を進めることができます。さらに、リーダーシップの役割も重要な要素として挙げられています。優れたリーダーは、メンバーの意見を尊重し、彼らの能力を引き出すことができます。また、リーダーは明確なビジョンを示し、チームをまとめる力を持っています。リーダーの存在は、チームの結束力を高めるだけでなく、方向性を与える役割も果たします。
コイルは、「共通の目標を持つ」ためには、価値を言葉にして伝え続けることが重要であると指摘します。チームメンバーが目標を明確に理解し、共有することで、一致団結した行動が生まれます。組織やチームが目指すべきは「理想と現実をつなぐ物語」を紡ぐことなのです。
具体的には、組織がどのような未来を追求しているのか?現状はどのようなものなのか?そのギャップを埋めるために何をすべきなのかを明示した行動指針です。 目標とする最高の姿のストーリーが浸透すると、チームの力は最大限に高まるとコイルは主張します。
強固な文化によって、利益が高まる理由
成長したいのなら、優先順位を言葉で表現するべきだ。さらに、その優先順位を守るために必要な行動も、言葉ではっきり表現する。(ダニエル・マイヤー)
目標をシンプルな状態で見える化しておくことで、メンバーがどの方向に進むべきかを常に把握できるため、効率的なチーム運営が可能になります。目標を明確にすることは、チームメンバーにとって重要です。メンバーは、目標がはっきりしていることで、自分の役割や責任を理解しやすくなります。
スローガンや標語は、目標を簡潔に表現するための有効な手段です。メンバーはこれらのメッセージを通じて、自分たちの役割や目標に集中することができます。メンバーはやるべきことを理解し、間違った行動をしなくなるのです。
短いメッセージやストーリーは、目標や理念を伝えるだけでなく、チームの文化を形成するためのツールとしても活用することができます。メンバーはこれらのメッセージやストーリーを通じて、チームの共通の価値観や行動基準を共有し、一体感を持つことができます。また、短いメッセージやストーリーは、メンバーの記憶に残りやすいため、文化形成にもつながるのです。
安全な環境、弱さの開示、共通の目標という3つの条件に支えられた強い文化を持つチームには、以下のような行動様式が共通して見られたと言います。
・会話、アイコンタクトが多い
・物理的距離が近い
・人の話をさえぎらない
・お互いに質問が多い
・ユーモア、笑いが絶えない
・礼儀や親切を忘れない
・ちょっとしたことでも 「ありがとう」 を言い合える(感謝が溢れる職場)
チームの文化は、ストレートに数字になって表れる。200以上の企業を対象にしたハーバード大学の研究によると、強固な文化を持つチームは、過去11年で純利益が756パーセントも増加した。
組織やチームの文化が、純利益やその他の成果にどれだけ影響を与えるのかについては、多くの研究や事例が示しています。特に、ハーバード大学の研究はその影響の大きさを明確に示しており、強固な文化を持つ企業が過去11年間で純利益を756%も増加させたというデータは非常に注目に値します。
特に、「信頼と協力」を文化として持つ企業やチームは、その価値観がメンバーの行動や意思決定に良い影響を与えます。目標を達成する気持ちが組織に溢れ、効率や生産性を高め、最終的には純利益へとつながっていくのです。 しかし、文化は一朝一夕に形成されるものではありません。それを形成・維持・発展させるためには、組織のリーダーシップが非常に重要です。
リーダーが明確なビジョンや価値観を示し、それをチームに浸透させることで、一体感を生み出しやすくなります。また、コミュニケーションの機会を作ることで、メンバーが価値観や目標に対して共通の認識を持つようになります。
本書は、優れたチームがどのようにして信頼と協力の意欲を生み出すのかについて、具体的な事例と共に解説しています。この本を読むことで、私たち自身のチームや組織においても効果的なチームを作り上げるためのヒントを得ることができるでしょう。
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