科学的に証明された 自分を動かす方法―なぜか目標を達成できてしまう、とてつもなく強力なモチベーションサイエンス
アイエレット・フィッシュバック
東洋経済新報社
本書の要約
志を持った目標は、自分自身の成長のための原動力となります。成功への4つのキーステップは以下の通りです。①明確な目標設定、②モチベーションの維持、③複数の目標の管理、④周囲のサポートの活用。モチベーションサイエンスを取り入れ、目標達成の行動を習慣化することで、結果を出せるようになります。
モチベーションサイエンスで目標を達成する方法
どこかを目指したいときも、人生で大切なものを守りたいときも、人は自分で決めた方向に向けて自分自身を力強く引っ張る必要がある。その力がなければ何一つ達成できないと言ってもいい。(アイエレット・フィッシュバック)
モチベーションサイエンス学会の元会長のアイエレット・フィッシュバックは、本書でどうすれば目標を達成できるかをわかりやすく解説しています。
モチベーションサイエンスは、私たちの行動や意欲を理解し、改善するための重要なツールです。ただし、その応用範囲はそれだけにとどまりません。モチベーション理論は、自分自身を動かすことにも役立つのです。
私たちは、置かれた状況によって自分の行動が変わることがあります。例えば、空腹のときには、目の前にあるものを我慢せずに食べてしまうことがあります。しかし、このような行動を改善するためには、状況を調整することが重要です。具体的には、冷蔵庫に新鮮なフルーツや野菜を常備しておくことが有効です。これにより、視界に入るものが健康的な選択肢になり、食生活を改善することができます。
また、自分自身のモチベーションを高めるためには、家族や周囲の人に対して宣言することも効果的です。例えば、健康的な食生活を目指したいという目標を家族に伝えることで、自分自身に対して責任感を持ち、誘惑に負けずに行動することができます。例えば、ドーナツを手に取る前に、自分に問いかけることができるでしょう。「私は本当に健康的な食生活をしたいのか?」と。
断酒を成功させるためには、環境を変えることが重要です。自宅や周囲の人々が酒を取り扱わない環境を整えることで、誘惑を避けることができます。また、飲みたいという欲求を他の飲み物(お茶や炭酸水)で満たすことも大切です。私はこの方法で断酒に成功しました。
私は酒をやめるために家中のアルコールを廃棄し、飲み友達との関係も断ちました。アルコールのない環境を整えることで、酒をやめられたのです。
モチベーションサイエンスの応用は、私たちが日常生活で直面する様々な課題に対しても有効です。私たちは、自分自身を動かすために、状況を調整し、自分の行動を変えることができるのです。モチベーション理論を活用し、より良い生活を送るために、自分自身をサポートしましょう。
目標を達成するための4つのステップ
パワフルな目標は、実現のための努力にエネルギーを与えてくれる。
私たちは志のある目標(本当にやりたいこと)によって、自分を引き上げることができるのです。行動の変容を実現するための基本要素は、成功への鍵とも言える4つのステップで構成されています。
①目標の明確化
②持続的なモチベーションの確保
③複数の目標の管理
④周囲のサポートの活用
以下4つのステップを明らかにしてきます。
①目標の明確化
何を達成したいのか、その答えが先ず必要です。志のある目標を設定することで、行動の方向性が定まります。家を購入する場合には、家族と楽しい時間を過ごす家を持ちたいということが目標で、節約や貯金はそのためのタスクです。タスクではなく、ワクワクすることを目標にすることで、人は努力できるようになるのです。
目標は「もっと努力する」という抽象的な願望ではなく、「健康になるために(あるいは、パーティにー出るため)1ヶ月で5キロ減量する」というような具体的で数値化できるものです。この指標を設定する際、努力しなければ達成できないやや手強い目標を設定するとよいでしょう。
夢想は心地よいかもしれないが、モチベーションツールとしては、ほとんど役に立たない。目標が抽象的すぎると、それは夢想になってしまい、行動を伴いにくくなるのだ。
目標が具体化されると、進捗の確認や達成感を得ることが容易になります。目標に向かう過程やその結果に対する強いインセンティブが存在し、私たちの関心や興味を長期間保持させることができます。
②持続的なモチベーションの確保
目標達成というゴールまでの長い旅の中で、モチベーションを維持することは容易ではありません。自らの進捗を定期的にチェックし、達成したことや修正が必要な部分を確認することで、達成への情熱を維持できます。
その目標が外部からのプレッシャーや期待に基づくものではなく、私たち自身の真の願望や情熱から生まれています。これにより、持続的な努力や献身的な取り組みが自然と生まれるのです。その目標から、うれしい気持ちやワクワクな感情が生まれると人はポジティブに行動できるようになります。感情が継続のインセンティブになることを忘れないようにしましょう。
自制心とは、誘惑に打ち勝つ力のことを言います。これを強化する一つの手法が「プリコミットメント」と呼ばれるもので、これは事前に自分の意志を固め、誘惑となるものを排除するという戦略です。例えば、過去の恋人との関係を断ち切るために、その人の連絡先を消去するのはプリコミットメントの典型的な例です。
もしくは、報酬を目的とする行動が完了するまでそれを受け取らないという方法も考えられます。 これらの方法は、経済学の基本原理、特に「選択肢が多い方が良い」という考え方に反するものかもしれません。経済学では、好きでない選択肢は無視すればよいとされています。
しかし、自制心の視点からすると、選択肢を自ら制限することで、誘惑を事前に排除するという行為が合理的であると言えるでしょう。 誘惑を避けるための別の方法として、その目標がなぜ重要であるのか、そしてその誘惑が実はそこまで魅力的でない理由を明確に意識することです。
このプロセスによって、脳内で目標の価値を強化し、同時に誘惑の価値を低下させることができるのです。これは「脱価値化」という手法として知られています。
さらに、人間は一度習慣を形成すると、その習慣に従った行動を自動的にとるようになります。そのため、自制心を発揮する行動を繰り返すことで、それが習慣として身につき、自然と誘惑に打ち勝つことができるようになるのです。
私自身、毎朝のブログ執筆を決意し、それを朝のコーヒータイムと合わせることで日常の一部にすることができました。最初は筆が進まなかったブログも、今では朝のルーティンとなり、14年間1日も欠かさず記事を書き続けています。
③複数の目標の管理
人生は一つの目標だけに特化して進むものではありません。異なる目標や願望が交差する中で、どれを優先するか、どのようにバランスを取るかを学ぶことは、多忙な現代社会においては不可欠です。
自分の目標を明確にし、それを効果的に達成するための方法を図にしてみると、その全体像が見えてきます。初めに、大きな上位目標を設定します。これは「キャリアの向上」「人間関係の深化」「趣味や休息の充実」といった広範なものから、自らが志向する「ボランティア参加」や「環境問題への対応」といった具体的なものまで様々です。
そして、それぞれの上位目標に対して、具体的な下位目標や実行ステップを挙げます。例として「健康的な生活」を目指す場合、下位目標として「日々の運動」「質の良い睡眠」「栄養バランスの取れた食事」などが考えられます。 続いて、これらの目標間の関係性を線で示します。助け合う関係は実線、競合する関係は点線で表示します。
定期的な運動が良質な睡眠を助ける関係がある場合、これらを実線でつなぎます。逆に、運動のために早起きして、それが短い睡眠をもたらす場合は、点線で示します。このようにして、目標間の相互作用を視覚的に捉えることができます。
また、複数の目標に貢献する「多目的型の手段」を特定することも鍵となります。例えば、瞑想は心の安定だけでなく、集中力の向上や睡眠の質の向上にも役立つ場合、これは多目的型の手段と言えます。このようなアクションを優先的にとることで、効果を最大化することが期待できます。
このプロセスを通じて、自分自身の目標とそれを達成するためのステップが視覚的に明確になります。そして、これにより、より効果的なアクションプランの策定や目標達成の確率を高めることができるのです。
④周囲のサポートの活用
自分の人生にかかわる人たちを思い浮かべてみよう。その人が宣言した目標や行動など、相手の価値観に同調したほうがよいか、それとも補完する行動をしたほうがよいか。場合によってはどちらも必要かもしれない。自分の行動や目標が、相手の行動や目標とどのようにかみ合うか考えよう。 一人での挑戦は孤独であり、多くの障壁に直面することが予想されます。しかし、家族や友人、同僚など、周囲の支援やアドバイスはその障壁を乗り越える助けとなります。
目標達成の道のりは、独りで進むものではありません。チームや仲間との協力がその鍵となるのです。モチベーションの維持はもちろん、利己的な動機をコントロールし、チーム全体の協力を引き出すことが求められます。単に他者からのサポートを受けるだけではなく、積極的に貢献することで、チームの一体感や結束力が高まります。
自分を変えるという志のある目標は、個人の進化と成長の推進力となります。目標達成に必要な4つの主要なステップは、①具体的な目標の設定、②継続的なモチベーションの保持、③複数の目標の管理、④他者からのサポートの最大化です。モチベーションサイエンスの理論を取り入れて、行動の継続性と習慣性を高めることで、目標を現実のものとする力を身につけることができます。
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