創造する人の時代(茶谷公之)の書評

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創造する人の時代
茶谷公之
日経BP

創造する人の時代(茶谷公之)の要約

オープンイノベーションの時代には、妄想力という能力がこれまで以上に求められます。自社以外のコンテンツや技術を組み合わせて何ができるかを妄想し、複数の要素から生み出される可能性のあるプロダクトやサービスを「脳内開発」することが必要です。この能力は人間にしかできません。

妄想駆動型の人材が求められる理由

人間が唯一テクノロジーに勝てることは「つくる」ことです。  どこまで進んでも、AIは価値を「つくる」ことはできないでしょう。「つくれる」人だけは、ずっと仕事がなくなることはありません。(茶谷公之)

著者の茶谷公之氏は、ソニー歴代のプレイステーションの開発責任者であり、その経験から得た知識と洞察を基に本書を執筆しています。彼は、現代のテクノロジーの進化によって、誰でも創造的な活動に参加することができる時代になったと指摘しています。

例えば、インターネットやスマートフォンの普及により、情報やツールが簡単に入手できるようになりました。これによって、創造的なアイデアを実現するための機会が広がり、多くの人々が自分自身の能力を発揮することが可能になったのです。

著者は、「こんなものが欲しい、あんなものがあったらいいな」と考えること=妄想することが重要だと言います。しかし、妄想するだけでは現実にはなりません。妄想を現実に変えるためには、アイデアを具体化し、実現する力が必要です。アイデアを具体化し、実現するためには、慣れや訓練が必要です。

まずは妄想しましょう。それが企画になり、現実になります。

また、アイデアを形にするためには、技術や知識、経験が必要です。例えば、プログラミングやデザインのスキルを身につけることで、自分のアイデアを具体化することができます。 アイデアを実現するためには、行動力や努力も欠かせません。アイデアを形にするためには、多くの試行錯誤や挑戦が必要です。失敗や困難に直面しても諦めず、継続して取り組むことが大切です。

将来、物を作ることやストーリーを創造するなど、コンピュータが捉えられない非言語的な要素を扱える創造性を持つ人々の価値が高まることは、自然な流れです。コンピュータやAIが得意とするのは、データや論理に基づく処理ですが、人間固有の創造性や感性、ストーリーテリングの能力は、まだコンピュータには真似できない領域です。

したがって、未来においては、こうした人間の創造力や感性を生かすことが、さらに重要性を増すでしょう。物を生み出すこと、物語を紡ぐこと、アートを創造することなど、人間ならではの感性を活かした活動は、テクノロジーが進化してもなお、大きな価値を持ち続けると言えます。このような能力を持つ人々が、未来の社会で高く評価されることは、十分に予測されることです。

数十年後の未来を妄想し、世の中を面白くすることを考える妄想駆動型の人間が、これからの時代に求められる人材なのです。

ネアカがイノベーションを起こす理由

うまくいくプロジェクトは、メンバーの多くが楽観的で、失敗するとは露にも思っていません。「何か新しいことができて、楽しそう」という雰囲気がメンバーから湯気のように立っている印象です。もちろん、技術的な見通しやマーケットの予測もせずに、楽観的というわけではありません。ゴールに対して、勝算が自分たちなりに持てているから、プロジェクト開始当初から楽観的でいられます。  

成功するプロジェクトとは、メンバーが同じデータをどう受け取るかによって左右されます。例えば、成功するか失敗するかが半々の手ごたえの場合、「失敗する確率が50%もある」と考えるか、「成功する確率が50%もある」と考えるか。このように、メンバーがプロジェクトに対してどんな意識を持つかが重要です。

成功するプロジェクトは、メンバーがネアカであることが欠かせません。ネアカとは、結果に対して明るい希望を持てる性格のことです。失敗する可能性があるとしても、メンバーが成功する可能性を見出し、チャンスをつかもうとする姿勢が大切です。

しかし、楽観的であることは単なる希望的観測ではありません。成功するためには、技術的な見通しやマーケットの予測をしっかりと行い、自分たちに勝算があると確信していることが重要です。楽観的であることと現実的な判断力を持つことは両立する必要があります。

ネアカで楽観的でいると、新しいアプローチを試してみたり、その分野のエキスパートに聞きに行ったり、成功に近づくアクションが自然にできます。結果的に成功に結びつく可能性が高くなります。 楽観的な姿勢を持つことは、プロジェクトをうまく成功させるために重要な要素です。

楽観的な人は、困難な状況にもめげずに前向きに取り組むことができます。彼らは新しいアプローチを試してみたり、その分野のエキスパートにアドバイスを求めたりすることで、成功に近づくためのアクションを自然に行うことができます。

また、楽観的な人は失敗や挫折に対してもあきらめずに取り組むことができます。何度もヒットを飛ばす人たちは、総じて楽観的な姿勢を持っています。彼らは失敗を経験しても諦めずに次の挑戦に取り組むことができるのです。私の周りの優秀な経営者もみなネアカであきらめないという共通点をもっています。

多くの成功や失敗、人生の中で見聞きしてきたこと、そして人との交わりのなかで芽生えた感情など、あらゆるレベルの経験や学びからデータを判断し、新たな価値を創造することが「智慧」といえます。これは「勘」に近い概念かもしれません。いずれも大量の場数を踏むことによって育まれます。

「智慧」や「勘」は、大量の場数を踏むことによって育まれます。経験や学びを通じて蓄積されたデータをもとに、新たな価値を創造することができます。例えば、先人の知恵や成功事例を学び、それを自身の経験に織り交ぜることで、より賢くなることができます。

オープンイノベーションの時代において、自分自身が知見や経験が少ないテーマに取り組む状況が生じることはよくあります。そんな時には、その領域に詳しい社内外の人に即座に相談することが重要です。その際、「集合天才」という考え方が役に立ちます。

集合天才とは、価値あるものを生み出す際に個々の天才を待つのではなく、チームや組織の集合的な力を活用するアプローチです。この考え方では、各個人の才能や情報が組織内で有機的に結びつき、単一の天才を超える成果を目指します。要するに、集団で協力することで、より大きな力を発揮し、新しい価値を創造するのが集合天才の核心です。

実際、その道のプロフェッショナルの知識・体験・能力を借りることで問題解決が一気に進みます。もし、あなたが全く知らないテーマにも思い切って取り組むことができるような人が身近にいれば、あなたの可能性は無限大に広がるはずです。

オープンイノベーションの本質は「社外の技術を積極的に活用する」という狭い意味だけではありません。著者は「社内と社外のアイデアの組み合わせで、自社だけでは実現不可能だった新たな価値創造、事業創造、産業創造」と定義します。

オープンイノベーションの時代には、妄想力という能力がこれまで以上に求められます。自社以外のコンテンツや技術を組み合わせて何ができるかを妄想し、複数の要素から生み出される可能性のあるプロダクトやサービスを「脳内開発」することが必要です。この能力は人間にしかできません。多くの要素技術の組み合わせを総当たり的に予想し、最適解を導き出すのは今の人工知能では簡単ではありません。

私もざまざまな学びと経験を通じて、創造的な人生を送れるようになったので、著者のこの考えには共感を覚えました。

AIの進化などもあり、知っていることよりも実際にやってみたことのほうが価値が出る時代です。経験のほうが大きな意味があります。やって見ること、やってみて感じたことのほうがますます重要になる時代を迎えています。

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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