よい人生は「結果」ではない 世界最高のアドバイザーが贈る後悔しない人生の法則 (マーシャル・ゴールドスミス, マーク・ライター)の書評

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よい人生は「結果」ではない 世界最高のアドバイザーが贈る後悔しない人生の法則
マーシャル・ゴールドスミス, マーク・ライター
日経BP

よい人生は「結果」ではない  (マーシャル・ゴールドスミス)の要約

人生の充実には、日々の行動、達成したい願望、そして高次の志という3つの要素が密接に関係しています。この「トリプルA」と呼ばれる考え方は、私たちの歩むべき道筋を照らし、より深い満足感をもたらす羅針盤となるのです。志を明確にし、願望と行動を結びつけることで、後悔ない人生を送れるようになります。

5分後の行動が未来を決める!

後悔は、この複雑な世界で充足感を得ようとする気持ちを落ち込ませてしまう対抗勢力だ。本書の第一のテーマは、充足した人生を達成すること──私はそれを、自分が築いた人生と呼ぶ。(マーシャル・ゴールドスミス)

コロナ禍という未曾有の事態は、私たちに多くの気づきをもたらしました。その中で、世界的なエグゼクティブコーチであるマーシャル・ゴールドスミスは、人生の本質的な価値とは何かを追求した一冊、よい人生は「結果」ではない(The Earned Life)を出版しました。(ゴールドスミスの関連記事

本書は、単なるビジネス書や自己啓発書の域を超え、実践的な人生哲学書として読者の心に深く響くものとなっています。「The Earned Life」とは、他人の評価や外部からの承認に依存せず、自分自身が価値を感じられる行動や成果を通じて得た人生を指します。自分の目標や価値観に忠実であることが重要で、その結果として自分に納得できる人生を築くことを意味します。

ここでの「Earned」は、単に結果を求めるものではなく、その結果を得るためのプロセスや努力が重視されます。目的地だけを目指すのではなく、その過程で成長し、自己を実現することが「稼ぐ」人生の本質とされています。

「今から5分後にあなたが何をしているかをもっとも信頼できる形で予測すると、今していることを引き続きしているだろう」という著者の言葉が響きました。例えば、居眠りをしている、家を掃除している、オンラインショッピングをしているとしたら、5分後も同じことをしている可能性が極めて高いのです。

かつての私はこの法則(惰性)を習慣にし、時間を無駄にしてきました。この原則が示唆するのは、私たちの行動には強い慣性があるということです。そして著者は、この短期的な原則が長期的な視点にも適用できると指摘します。「今から5年後にあなたが何をしているか、もっとも信頼できる予測は、今のあなたの姿である」というのです。

今この瞬間の行動が、実は未来の自分を形作っているのです。このルールの気づいてから、私の行動は変わりました。目標を達成するために、時間を大切にするようになったのです。

望む未来があるのなら、その片鱗は今の行動の中に存在していなければならないのではないか。 例えば、5年後に健康な体を手に入れたいと願うなら、今日から少しでも運動を始める必要があります。作家になりたいと思うなら、今日から文章を書き始めなければなりません。理想の未来は、今という瞬間の選択から始まるのです。

ゴールドスミスのこの指摘は、私たちの日常的な選択の重要性を浮き彫りにします。「いつか」という漠然とした未来ではなく、「今」という具体的な瞬間に焦点を当てることで、変化への第一歩を踏み出すことができるのです。 

重要なのは、大きな変化を一度に求めることではありません。むしろ、小さくても意識的な選択を積み重ねていくことです。5分後の自分を少しずつ変えていくことで、5年後の大きな変化につなげていくことができるのです。

自分の人生を築くために必要なことは、どんな人生を送りたいかを決め、その実現に向けて最善を尽くすことです。その目標を描けるのは自分だけです。理想の自分の姿からバックキャスティングを行い、自分の行動をコントロールすることが重要です。

周囲の人々からのアドバイスや励ましは、賢明な選択を助けるツールとなりますが、最終的な決断を下すのは自分自身です。 努力を続けるには、仕組みを作ることが重要です。

断酒をする際、私は理想の自分をイメージし、悪い習慣を良い習慣に置き換えていきました。これによる、衝動的な行動(飲酒・惰性)から目標(理想の自分)を守り、人生を望む方向に導くための強力な手段となります。それによって、人生を新たに築き直すことも可能になるのです。私はこの仕組みによって、理想の自分(著者、社外取締役、大学の特任教授)になれたのです。

人生を充実させるトリプルAとは?

アクション(行動)、アンビション(願望)、アスピレーション(志)。それが、自分の求める人生を生きるための進歩を左右させる。

人生を充実させるためには、行動、願望、そして志という3つの要素が密接に絡み合っています。この「トリプルA」と呼ばれる考え方は、私たちが進むべき道を照らす羅針盤のようなものです。

この3つの要素がそれぞれ独立しながらも、相互に作用し合うことで、人生の成功と停滞を分ける鍵となるのです。 行動は日々の具体的な活動や選択、そして時間の使い方そのものです。それは即座のニーズに応えるために行われ、結果がすぐに見えるものも少なくありません。

しかし、行動はその瞬間的な成果が目立つ一方で、ただ流されるように進めてしまうと、長期的な満足感に結びつかないこともあります。自分の1日や1週間の過ごし方を振り返り、生産的な時間と無駄に過ごした時間をしっかりと把握することで、どのような行動が自分の人生に価値をもたらしているのかを見極めることができるのです。

願望は、私たちが達成したい具体的な目標を指します。それは期限があり、測定可能であり、達成することで一時的な幸福感をもたらします。しかし、それは一度達成すれば終わりを迎える性質を持っています。願望の達成は重要ですが、それだけでは人生全体の充実感を永続的に高めることはできません。

志は、私たちの人生により深い意味をもたらす重要な要素です。志には期限はなく、なりたい姿を描くことが求められます。それは単なる目標達成を超えて、自己の進化と成長を促すものです。志は将来の自分をよくすることを優先します。そのためには、新しい自分になるための行動が欠かせません。

志を追求するプロセスにおいて、私たちは現在の努力が本当に意味のあるものかどうかを徐々に理解していきます。それは単なる成功や失敗の判断基準ではなく、自分の行動が本質的な満足感をもたらすものかどうかを見極める指針となります。

志は人生の後悔を上手に避ける手段になる。後悔しないことが志を抱くポイントではない。それは必ずついてくるおまけだ。志を追求していくプロセスで、今している努力は満足のゆくものか不毛なものかが少しずつわかってくる。だから、いつでも、惨めな気分になっていれば特に、後悔に陥る前に道を変更できる。

特に人生で迷いや不安を感じているとき、志があることで自分の立ち位置を確認し、必要に応じて軌道修正することができます。 日々の生活の中で感じる満足感や不満足感は、私たちの行動が志に沿っているかどうかを示す重要なサインとなります。

もし現在の道筋に惨めさや虚しさを感じるなら、それは方向転換を検討するべき時かもしれません。この気付きは、取り返しのつかない後悔を重ねる前に、新たな道を選択する機会を与えてくれます。 

志、願望、行動という3つの要素は、それぞれが独立しながらも密接に関連し合っています。志という大きな方向性があってこそ、具体的な願望も意味を持ち、日々の行動も価値あるものとなります。同時に、具体的な行動と願望があってこそ、志は単なる理想論に終わることなく、実現可能な道筋となるのです。

人生において完璧な選択を常に行うことは不可能です。しかし、志に基づいて行動することで、たとえ思い通りの結果が得られなくても、深い後悔を感じることは少なくなります。なぜなら、その選択には自分が目指す本質的な価値が込められているからです。

人生をより豊かにする方法(トリプルAでリスク・リターンを捉える)

自分の人生を築くのには終わりがない。「十分に達成したよ。もう十分だ」と言えるような、きっかりとした終わりはない。それなら、息をするのを止めたほうがいい。

ゴールドスミスは、人生の充実感を得るためには、自分自身よりも大きな目標や価値とつながることが重要だと説いています。単に物質的な成功や社会的な地位を追い求めるのではなく、自分が本当に大切にしたいものに焦点を当てることで、人生に満足感をもたらすことができるのです。

私たちの人生には、大きな決断の瞬間が幾度となく訪れます。結婚相手を選ぶこと、住む場所を決めること、キャリアの転換を図ること―――これらの選択は、人生の航路を大きく変える力を持っています。

しかし、これらの重要な決断にあたって、私たちが頼れる確実な指標はあまりにも少ないのが現実です。 その結果、多くの人々は直感や感情に流されて決断を下してしまいます。過去の成功体験や失敗の記憶に縛られたり、周囲の意見に過度に影響されたりすることも少なくありません。

さらに危険なのは、重要な選択を他者に委ねてしまうことです。このような決断の方法は、往々にして後悔という重荷を私たちに背負わせることになります。

著者は不確実な選択の過程に、より理性的なアプローチを導入することは可能だと指摘します。それは、前述のアクション、願望、志というトリプルAを時間軸に沿って理解し、活用する方法です。

この3つの要素は、それぞれ異なる時間的視野を持ち、その違いを理解することで、より賢明な選択への道が開かれます。 まず、アクションは「今この瞬間」という時間軸に位置しています。それは即座の反応や対応を求められる行動のすべてを指します。

朝目覚めて空腹を感じれば食事を取り、電話が鳴ればそれに応答し、信号が青に変われば車を発進させる―――これらの行動の多くは、外部からの刺激に対する反応として生まれます。私たちはまるで操り人形のように、様々な状況に応じて行動を変化させています。しかし、その紐を操っているのが自分自身なのか、それとも外部の力なのかを見極めることが重要です。

トリプルAのフレームワークを活かすことで、自分の選択や行動がどのような目的に向かっているのかを冷静に見極める力が養われます。 まず、ある選択が長期的な志に資するものであれば、それは自分がなりたい姿や追い求める価値に向かって進むための一歩となります。

志は測定することが難しく、具体的なゴールを伴わないこともありますが、その分だけ自己成長や人生の意味を深める重要な指針となります。このような選択は、たとえ結果がすぐに見えなくても、自分の人生に深い満足感をもたらす可能性が高いでしょう。

次に、短期的な願望に資する選択について考えてみます。願望は達成可能な具体的な目標を指し、それが満たされると一時的な幸福感を得ることができます。例えば、新しい資格を取ることや、特定のプロジェクトを成功させることなどがこれに該当します。

このような選択も重要ですが、志と結びつかない場合、その達成感は長続きしないかもしれません。したがって、願望の達成がどれだけ自分の長期的なビジョンに寄与するかを考えることが必要です。

一方、アクションに分類される選択は、目の前の必要を満たすためのものです。これらは即座の結果をもたらし、日々の生活を成り立たせるために欠かせない要素です。例えば、日常のルーチン業務や短期的なタスクの処理などが該当します。

ただし、これらの行動が自分の志や願望と結びついていない場合、単なる消耗的な作業に終わるリスクがあります。 トリプルAを活用することで、リスクを取る価値がある選択とそうでない選択を見極める力が磨かれます。

選択肢が自分の志や願望とどれだけリンクしているかを意識することで、どのリスクが自分にとって価値のあるものなのかを判断できるようになるのです。そして、この判断力があれば、賢くリスクを取り、それを最大限に活用することが可能になります。

たとえば、新しい挑戦や未知のチャンスに飛び込む際も、自信を持ってそのリスクを受け入れることができるようになります。トリプルAを意識的に活用すれば、人生の重要な選択肢において迷いや後悔を最小限に抑えながら、成功と充足感を手にするチャンスが広がります。志に基づき、賢くリスクを取ることで、自分の目指す未来に近づいていけるのです。

トリプルAの視点から次の3つの質問を問いかけ、リスクを意識しながら日々の選択を行うことで、より明るい未来を築くことができます。
①取ろうとしているリスクは、目の前のニーズに応える行動として一貫性があるか?
②その行動は、自分の願望としっかり整合性が取れているか?
③さらに、そのリスクは、自分の志と一致しているか?

目の前の行動が、中期的な目標とどのように結びつき、さらには人生の志にどう貢献するのか。この視点を持つことで、感情や衝動に流されない、より深い洞察に基づいた選択が可能となるのです。 人生の岐路に立ったとき、この時間軸の考え方は、私たちに新たな視座を提供します。それは単なる判断基準以上の、人生全体を見通す力を与えてくれるのです。

著者はよりよい人生を生きるためのステップを紹介しています。まず、他人の期待や価値観に振り回されるのではなく、自分自身の人生を生きることの重要性を再認識します。私たちはつい、社会的な成功や他人からの評価に引き寄せられがちですが、本当に大切なのは自分が何を望み、どう生きたいのかということです。

次に、日々の中で「自分の人生を築く」という意識を持ち、それを習慣にすることが求められます。充実感は一朝一夕で得られるものではありませんが、日々の積み重ねが大きな成果を生むことを忘れてはなりません。日常の中で、何かを成し遂げる喜びや新しい挑戦を楽しむことが、人生を豊かにしてくれるのです。

さらに、この「築く」という行為を個人的な願望を超えた大きな目標や価値観に結びつけることが大切です。私たちの努力が直接的な報酬を生むことは少ないかもしれません。しかし、そのプロセスそのものが人生を充実させ、成長の実感を与えてくれるのです。

人生を築くための5つのテーマとライフ・プラン・レビュー

人生を築くご褒美は、たえずそのような人生を築こうとするプロセスに夢中になることだ。

著者は人生を築くための5つのテーマを明らかにしています。これらのテーマはどれも、私たちがコントロールできるものに焦点を当てているのが特徴です。人生において完全にコントロールできることはそう多くありませんが、これらのテーマに意識を向けることで、より豊かで充実した日々を送ることが可能になります。

①パーパス・目的
パーパス・目的を持って行動することは、多くの人が口にすることですが、ここで重要なのは「明確に示された」目的を持つという点です。ただ漠然とした目標ではなく、具体的に形にされた目的を掲げることで、日々の行動に意味が宿り、それがより高尚でエキサイティングなものに変わります。人生のパーパスが明確であればあるほど、私たちは目指すべき理想の自分に近づくことができるのです。

②人々のそばにいること
これは、関係性を大切にすることを意味します。人生の中で私たちが出会う人々、家族や友人、同僚といった人間関係は、私たちを支え、励まし、時に厳しい現実を突きつけてくれる大切な存在です。どれほど忙しくても、消息不明になってしまうのではなく、つねに共にあるという姿勢を持ち続けることが求められます。この目標を完全に達成するのは難しいかもしれませんが、諦めず挑戦し続けることが、人生をより豊かにする鍵となるのです。

③コミュニティの力
自分一人で達成できることには限りがありますが、適切なコミュニティを選び、その中で助け合うことで、より大きな成果を得ることができます。共鳴し合う関係性は、自分自身だけでなく、周囲にも大きな影響を与えます。一人で輝くことも素晴らしいですが、誰かと一緒に歩むことで得られる充実感は、さらに深いものです。

④人生の無常
この世のすべては永遠に続くものではありません。仏陀が「生老病死」と説いたように、すべては変化し、いずれ終わりを迎えます。この無常を認識することは悲観的なことではなく、むしろ今この瞬間に生きる力を与えてくれます。一瞬一瞬に意味を見出し、人生の儚さを感じながらも、その儚さを楽しむことができるのです。

⑤結果について考える
結果は私たちにとって時に苦いテーマとなりますが、それはポジティブな側面を持つものでもあります。努力のプロセスに集中することで、結果がどうであれ失敗とは感じなくなるのです。人生を築くこと自体が報酬であり、そこにトロフィーやセレモニーは必要ありません。そのプロセスに夢中になれることこそが、人生を豊かにしてくれるのです。

ライフ・プラン・レビュー(LPR)の目的は、人生で計画していることと実際に行うことのギャップを埋めることだ。

著者はLPR(ライフ・プラン・レビュー)というメソッドを本書で紹介しています。LPRは、望む未来の自分を明確にし、その実現に向けた進捗を定期的に見直すシステムです。ただし、多くの自己啓発メソッドのように、モチベーションを高めたり完璧な習慣を追求することを重視しているわけではありません。

LPRが求めるのは、週単位で自分の努力を振り返ること。結果ではなく、どれだけの努力をしたかを重視し、失敗や停滞もプロセスの一部として受け入れます。 この方法では、完璧を目指す必要はなく、大半の週で計画通りにいかない現実を想定しています。

そのうえで、自分がどれだけのミスや怠慢を許容するのか、そしてそれをどう改善していくかを決めるのは自分自身です。

LPRの実践では、人生のさまざまな側面(仕事、健康、家族など)をバランスよく見直し、現在地と目標の差を把握し、具体的な行動計画を立てることが重要です。自己理解を深め、柔軟に計画を調整することで、無理なく成長を続けることができます。

定期的な自己評価や信頼できる人たちからのフィードバックを通じて、効果的なライフプランを作成し、持続可能な成長を目指します。さらに、信頼できる人からのフィードバックを受けて、計画を見直すことで、より効果的なライフプランを作成できます。この方法を使うことで、人生をより良い方向に導き、持続可能な成長を促すことができるのです。

この本が教えてくれたことの中で、特に印象的だったのは「人生のリスト」に対する取り組み方です。残りの人生で何を優先すべきか、どれを手放すべきかを見極めることで、後悔を最小限に抑えることができると著者は述べています。

61歳を超えた今、時間は私にとって何よりも大切な資産です。これからの人生後半戦を充実したものにするために、自分のバケットリストを見直し、本当にやりたいことに優先順位をつける必要性を痛感しました。そして、リストに残った「絶対にやり遂げたい2つか3つのこと」に集中することが、充実感を得るための鍵となると感じました。

本書は、特に人生の転換期にある人々にとって、大きな気づきと勇気を与える一冊です。人生の旅は終わりがないからこそ、その一瞬一瞬を楽しみ、充実したものにしていくことが、何よりも価値ある生き方なのだと実感できました。

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