森永卓郎流「生き抜く技術」 31のラストメッセージ
森永卓郎
祥伝社
森永卓郎流「生き抜く技術」 31のラストメッセージ(森永卓郎)の要約
最期まで自分のやりたいことに尽力し、人生を楽しみ尽くした森永卓郎氏。その生き方から生まれた「31のメッセージ」には、豊かに生きるためのヒントが詰まっています。大切なのは、完璧を目指すことではなく、小さな一歩を踏み出す勇気です。その一歩が、あなたの人生を少しずつ、でも確実に豊かな方向へと導いてくれます。
ブルシット・ジョブから脱却する方法
人生最大の損失は、「ブルシット・ジョブ」に勤しむことだ。決して、コンピュータの奴隷になってはいけない。(森永卓郎)
現代は「VUCA(ブーカ)」の時代だと言われています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードが示すように、私たちは先の見えない変化の中で生きています。かつての常識や安定が通用しない今、自分の人生をどう生きるのか、誰もが模索する時代になりました。 このような社会において、自らの人生の舵を自分で握ることが、これまで以上に重要になっています。
しかし現実には、多くの人が与えられたレールの上を、ただ何となく走らされているように感じています。特に、「自分の仕事には意味がないのではないか」「誰の役にも立っていないのではないか」と感じる瞬間があるなら、それは「ブルシット・ジョブ(Bullshit Jobs)」と呼ばれる働き方にはまっている可能性があります。
ブルシット・ジョブとは、アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱した概念で、働いている本人ですら「この仕事は社会に必要ないのでは」と感じているにもかかわらず、なぜか存在し続ける仕事のことを指します。
近年では、このような仕事がテクノロジーの進化とともに増えており、特にAIやアルゴリズムに指示される形の労働が、ますます人間性を奪っています。
たとえば、フードデリバリーに代表される「ギグワーク」は、スマホに表示された指示に従って料理を受け取り、指示された場所に届けるだけの単純作業です。そこには創意工夫の余地も、感謝される実感も、達成感もほとんどありません。
同じように、ネット通販の倉庫で商品を棚から取り出し、出荷口まで運ぶ仕事も、ハンディターミナルの指示に従って行動するだけで、しかも効率的に動けたかどうかは秒単位で管理され、成績に反映されます。 このような仕事は、やりがいを感じにくいだけでなく、心身の疲労がたまりやすいという特徴があります。部屋に戻れば泥のように眠り、翌朝また同じ作業を繰り返す。そんな生活を続けているうちに、自分が何のために生きているのか、わからなくなってしまうのです。
しかも問題は、こうした働き方が非正規雇用だけに限られていないことです。むしろ、正社員のほうが長時間労働に縛られ、マニュアル作業を延々とこなすケースも少なくありません。職場の近くに住まざるを得ず、生活コストの高い都心で暮らし、買い物に行く余裕もなく、割高なコンビニに頼りきる日々。疲れた体を無理に動かすために栄養ドリンクを飲みながら、なんとか一日を乗り越える――そんな毎日が続くと、せっかくの給料も心のゆとりも、すべて失われてしまいます。
こうした働き方が社会に広がった背景には、2000年代初頭の「小泉構造改革」があると経済アナリストの森永卓郎氏は指摘します。製造業への派遣労働を解禁し、雇用の安定よりも労働市場の柔軟化を優先した政策は、結果として非正規雇用を急増させ、「仕事の意味」や「働く喜び」といった要素を奪ってしまいました。所得格差だけでなく、仕事を通じて得られる充実感や自由度までもが、一部の層に集中していったのです。
しかし、こうした現実から抜け出す方法がないわけではありません。所得格差の底辺から抜け出すことは難しくても、仕事の喜びの底辺から抜け出すことは意外とたやすいかもしれません。たとえば、思い切って都心での高コストな暮らしを見直し、生活コストの低い地域に移住することで、「もっと稼がなければ」という呪縛から自由になると著者は述べています。
その結果、自分の時間や気力を、自分の人生のために使えるようになるのです。 もし、自分の暮らしを振り返ってみて、「これはブルシット・ジョブの罠かもしれない」と感じることがあるなら、大都市を離れるという選択を、ぜひ一度考えてみてほしいと思います。それは、人間らしい暮らしを取り戻すための、もっとも現実的で即効性のある方法です。
いきなり田舎に行くのが不安なら、「トカイナカ」と呼ばれる、都市と田舎の中間のような地域から始めるのもよいと著者は言います。 ちなみに、森永氏は40年も前に大都市から脱出したそうですが、著者によると、さほど大きな不自由は感じなかったといいます。
私自身も千葉県に住んでいますが、都会と自然のバランスが取れた暮らしの中で、心にゆとりを感じています。家の近くの里山を散歩することは、今では毎日の楽しみとなっています。
VUCAの時代において、外部の環境に振り回されない生き方をするためには、自分の価値観に基づいた「選択」が必要です。誰かに言われた正解ではなく、自分が納得できる生き方を選び取る勇気こそが、これからの時代における本当の強さなのだと思います。
天職を見つけることが人生を豊かにする!
結局、仕事というのは、好きなことならいくら働いてもストレスにならない”天国”と、1時間働いたら苦役になる”地獄”に明確に分かれるのだ。だから、人生のなかで、どれだけ早く自分の天職にめぐり合うことができるかが勝負の分かれ目になると思う。
仕事をするうえで、金銭的な報酬はもちろん大切です。しかし、それ以上に大きなモチベーションとなるのが、「自己実現ができる仕事かどうか」という点です。自分の能力や個性を最大限に発揮でき、社会に対して意味のある貢献ができていると実感できる仕事には、深い満足感があると著者は指摘します。
単に生活のために働くのではなく、「この仕事を通じて自分は成長している」「自分らしさを活かせている」と感じられることが、長期的に見て幸せな職業人生を送るうえで非常に重要です。やりがいや充実感のある仕事こそが、働く原動力となり、人生そのものを豊かにしてくれるのです。 そのためには、自分に合わない仕事に固執せず、柔軟に方向転換していく姿勢も必要です。
大事なのは、失敗を引きずらず、気持ちをスパッと切り替えること。「これは違ったな」と思ったら、思い切って新たなチャンスを探しに行く。その柔軟さが、結果的に多くの経験と可能性を自分にもたらしてくれます。 また、もし何か大きな夢や目標を実現したいと考えるのであれば、頭の中で想像を膨らませるだけでは不十分です。
もちろん、明確なイメージを持つことは大切ですが、最も重要なのは実際に「行動を起こす」ことです。たとえ小さな一歩であっても、毎日積み重ねていくことが未来を確実に変えていきます。1ミリでも進めば、それはもう目標に近づいているということ。結果がすぐに出なくても、継続すること自体が自信となり、やがて周囲からの信頼にもつながっていきます。
こうした考え方は、このブログでもお馴染みのJ.D.クランボルツ博士の「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」にも通じます。この理論は、キャリアはすべて計画通りに進むものではなく、予測できない偶然の出来事をうまく活かしていくことが成功につながる、という考え方です。だからこそ、行動を起こし、さまざまな経験に身を置くことが、人生を豊かにする鍵となるのです。
さらに、人生をより良い方向へ進めたいと願うのであれば、「運がいい人」と積極的に関わることが非常に効果的です。運の良い人の周囲には、自然と人脈やチャンスが集まってきます。まるで海鳥が魚の群れを見つけて飛び込むように、効率よくチャンスに近づくためには、自分を「運の流れ」の中に置くことが大切です。 では、どうすれば運の良い人たちの輪の中に入れるのでしょうか。もっとも現実的で効果的な方法は、「運のよい人にかわいがられること」です。
ただし、誰彼かまわず媚びを売るのではなく、相手にとって役に立つ存在として認められることが大前提です。たとえば、いつも不平不満ばかりを口にしていたり、ネガティブな空気をまとっていたりする人は、どれほど能力があっても周囲から距離を置かれてしまいます。
逆に、やたらと相手にべったりと付きまとい、機嫌をうかがうような態度も、かえって敬遠されがちです。本当にかわいがられる人というのは、普段は適度な距離を保ちつつ、いざというときに全力で助けてくれるような存在です。
必要なときにさりげなくサポートし、相手にとって頼もしい存在になる。そのためには、周囲の流れをよく観察し、いま何が求められているのか、どのような距離感が適切なのかを見極める感性が求められます。人との関係においても、「気配り」と「タイミング」が極めて重要なのです。
リチャード・ワイズマン博士も、運について興味深い言葉を残しています。 「幸運な人ほどのんきでチャンスに敏感になり、運の悪い人は神経質で心が閉ざされている。尊敬するのが一番難しいのが、自分なんです。自分を心から好きになれた人こそ、運がいい人なのだと思います」
つまり、運を良くするためには、まず自分自身を受け入れ、信じることが出発点なのです。自分を好きになり、自分の価値を認めてあげること。それが自然と良い人間関係やチャンスを引き寄せ、人生を前向きな流れへと導いてくれます。
最期まで自分のやりたいことに尽力し、人生を楽しみ尽くした森永卓郎氏。その生き方から生まれた「31のメッセージ」には、豊かに生きるためのヒントが詰まっています。大切なのは、完璧を目指すことではなく、小さな一歩を踏み出す勇気です。その一歩が、あなたの人生を少しずつ、でも確実に豊かな方向へと導いてくれます。
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