がん闘病日記
森永卓郎
三五館シンシャ
がん闘病日記 (森永卓郎)の要約
がんと戦いながらも、人生と仕事を楽しむことに焦点を当てた一冊が「がん闘病日記です」。森永卓郎氏のメッセージは、私たちに生きることの大切さを再確認させ、日々の瞬間を大事にし、仕事に喜びを見出す心構えを教えてくれます。がんにも関わらず、最後まで希望を持ち続ける著者の姿勢は、私たちに勇気を与えてくれます。
残された日々を悔いなく生きる方法
私は「いつ死んでもいい」とは思っていないものの、延命にはこだわっていない。 それは、いつ死んでも悔いのないように生きてきたし、いまもそうして生きているからだ。(森永卓郎)
著名な経済アナリストとして知られる森永卓郎氏は、突然、膵臓がんという厳しい現実に直面します。余命わずか4カ月という宣告を受けてからの日々を彼は克明に記録し、本書を出版します。 森永氏は、自身の体験を通じて、がん患者とその家族が直面する様々な困難や葛藤を赤裸々に描き出しています。
本書には森永氏特有のポジティブな姿勢が貫かれています。膵臓がんという厳しい状況下にありながらも、著者は前向きな態度を失わず、むしろユーモアを交えながら自身の経験を語っています。この姿勢は、読者に希望を与え、どんな困難な状況でも前を向いて生きる力を与えてくれます。
本書は単なる闘病記にとどまらず、人生の価値観や優先順位を見直すきっかけを与えてくれる作品でもあります。森永氏は、がんと向き合うことで得た新たな気づきや、人生の本質的な喜びについても語っています。家族や友人との絆、仕事に対する向き合い方、そして自分らしく生きることの大切さなど、読者に多くの気づきを与えてくれます。
診断を受けた際の衝撃や不安、治療に伴う苦痛、そして死の恐怖と向き合う日々など、がん患者特有の心の揺れ動きも生々しく綴られています。しかし、著者は絶望に打ちひしがれるだけでなく、自分の与えられた仕事に時間を費やすことを選択します。
本書の特筆すべき点は、著者が単に自身の体験を語るだけでなく、がん患者を取り巻く環境や社会的な課題にも目を向けていることです。医療現場の実態や、医療費や相続手続きの問題点、患者と医療従事者とのコミュニケーションの重要性、そして家族や友人のサポートがいかに大切であるかなど、多角的な視点からがん患者の生活を描き出しています。
また、森永氏は経済アナリストとしての視点も活かし、がん治療に関わる経済的な側面にも言及しています。高額な治療費や、働くことができなくなることによる収入の減少など、がん患者が直面する経済的な問題にも光を当てています。これらの情報は、同じ境遇にある患者や家族にとって貴重な情報となるはずです。
本書の魅力は、著者の率直で誠実な語り口にあります。森永氏は自身の弱さや恐れを隠すことなく表現し、それゆえに読者の心に深く響きます。がんという過酷な現実に直面しながらも、自分とファンのために仕事をする著者の姿勢は、私たちに生きるとは何か?を教えてくれます。
いまやる、すぐやる、好きなようにやるというのが森永流
私が社会に出てから44年が経過した。その間、私がずっと貫いてきた信条は「いまやる、すぐやる、好きなようにやる」ということだ。
森永氏は、ステージ4のがんになっても自身の仕事に対する独自の姿勢を貫いています。周囲の目を気にすることなく、自分が正しいと信じることや、やりたいと思うことを今も実行しています。
森永氏にとって仕事とは、単にお金を稼ぐための手段ではなく、むしろ、「遊び」に近いものだと言います。 著者の仕事のスタイルは、まず行動してみることを重視しています。とりあえずやってみて、そこで間違いや失敗があれば、素直に謝罪するというアプローチを取っているのです。この方法は、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する勇気と、自分の過ちを認める謙虚さの両方を兼ね備えていることを示しています。
獨協大学の森永ゼミでは、2年時にユニークなアプローチで学生のプレゼンテーション能力を磨いていると言います。このゼミの特徴的なモットーは「黙れよりスベれ」。プレゼンの授業には、失敗を恐れずに積極的に挑戦することの大切さが込められています。
このゼミでは、学生たちの自信を育み、実践的なコミュニケーション能力を養うことを目的にしています。 スベるというトレーニングによって、学生たちに「どんなことが起こっても動じない鋼の心臓」を身につけていきます。
注目すべきは、このゼミスタイルが就職活動を見据えてつくられた点です。著者は厳しい就職市場で学生たちが勝ち残るために必要なスキルを見極め、それを育成するためのカリキュラムを考案したのです。プレゼンテーション能力、臨機応変な対応力、そして精神的な強さは、就職活動において大きなアドバンテージとなり、有名企業からの内定を獲得していると言います。
常に自分の信念に従い、失敗を恐れずに挑戦し続けることで、独自の視点や考え方を磨けます。 死が近づいた今もレギュラー番組や書籍の執筆を続けるのも、この姿勢の裏返しだと言えます。
世のなかには、どんな仕事を、どのようにするのかを上司が明確に指示してほしいと言うサラリーマンがたくさんいる。 しかし、本当にそんな仕事の仕方をして楽しいだろうか。少なくとも私が仕事をしていて、一番幸せを感じるのは、自分の思いのままに仕事をさせてもらうことだ。だから、まかせてもらうと燃えるのだ。
著者は、一般のサラリーマンの働き方に一石を投じています。森永氏は仕事で最も幸せを感じるのは、自分の思いのままに仕事をさせてもらえる時だといいます。自由に自分のアイデアを実現できる環境こそが、仕事への情熱を掻き立てるのです。 このような考え方は、従来の日本の企業文化とは一線を画すものかもしれません。
しかし、自主性と創造性を重視するこのアプローチは、個人の成長と企業の革新につながる可能性を秘めています。 仕事を任せてもらえることで、森永氏は「燃える」と表現しています。これは、責任を与えられることが、モチベーションの源泉となることを示唆しています。
単に上司の指示に従うだけでなく、自分なりのアプローチで課題に取り組むことで、仕事がより刺激的で充実したものになる可能性があります。 この働き方を身につけることで、個人の成長にも大きく寄与します。自分で考え、決断し、実行することで、問題解決能力や創造力が磨かれていくのです。
本書は、がんの闘病期であるにもかかわらず、仕事を楽しむ、人生を楽しむことにフォーカスしています。著者のメッセージから、私たちは生きることの尊さを再認識し、日々の生活を大切し、仕事を楽しむマインドセットを学べます。がんという厳しい現実を描きながらも、最後まで希望を失わない著者の姿勢を見習いたいものです。
本書に収録されている著者の童話「新版 アリとキリギリス」に、悔いなき人生を生きる秘訣が書かれているので、ぜひご一読ください。
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