DXで経営戦略を仕組み化する技術 AI・デジタル時代の成長ロードマップ (田村昇平)の書評

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DXで経営戦略を仕組み化する技術 AI・デジタル時代の成長ロードマップ 
田村昇平
技術評論社

30秒でわかる本書のポイント

【結論】 DXの正体は「IT投資」ではなく、組織を再設計する「経営戦略」の仕組み化である。
【原因】 多くの企業がツール導入そのものを目的化してしまい、古い組織構造や非効率なリソース配分を放置している。
【対策】 デジタルを単なる道具とせず、変革のドライバー(原動力)として、組織構造や人員配置を根底から作り替える。

本書の3行要約

DXの本質はツール導入ではなく、デジタルを核に組織を再定義する「経営戦略」の仕組み化にあります。現場任せでは小手先の自動化に留まるため、経営者が戦略の主軸として関与し、「攻めのIT」へ人員を大胆にシフトさせる覚悟が不可欠です。現状の延長ではなく7年後の理想から逆算する思考を持ち、業務を可視化して未来に最適な仕組みを構築することこそが、成長への唯一の道となります。

おすすめの人

・DXを推進しているが、現場の抵抗やツール導入止まりの状況に悩む経営層
・役員 IT部門と経営陣の橋渡し役に苦戦しているDX推進担当者
・マネージャー AI時代の到来を背景に、自社のビジネスモデルを根本から再構築したい戦略立案者

読者が得られるメリット

・DXを「IT導入」ではなく「経営の意思決定」として捉え直せます。 ツール選定の前に、何を変えるべきか(組織・業務・価値提供)を言語化できるようになります。
・TO BEとAS ISからギャップを明らかにし、「推進エンジン」に変えられます。
・業務の全体像を「紙1枚」で可視化し、打ち手の優先順位を付けられます。ボトルネックは何か、どこから変えるべきかを部分最適ではなく、全体最適から見通せます。

悪いDXと良いDX

・悪いDX戦略:デジタル技術の導入が目的化する。
・良いDX戦略:デジタル技術をドライバーとして変革を実現する。(田村昇平)

デジタル変革(DX)や生成AIという言葉がバズワード化する中で、なぜ多くの企業の現場は変わらないのでしょうか。その答えは明快です。多くの企業は、悪いDX戦略を採用し、デジタル技術の導入が目的化してしまっているからです。

一方で、良いDX戦略=デジタル技術をドライバーとして真の変革を実現するアマゾンのような企業は飛躍的な成長を実現しています。

クラウドを導入した、AIツールを入れた、システムを刷新した。しかし、業務プロセスも組織構造も何も変わらない。これでは単なる「IT投資」であって、「DX」ではありません。

DXで経営戦略を仕組み化する技術 AI・デジタル時代の成長ロードマップ の著者の情システムコンサルティング代表取締役の田村昇平氏は、その停滞の正体を「経営の覚悟不足」という本質的な問いで切り込みます。

本書は単なるIT導入の指南書ではなく、組織をどう組み替え、リソースをどう再配分するかという「経営デザイン」の手法が詳細に書かれています。

デジタル技術は手段であって、目的ではない——この当たり前の真理を、どれだけの経営者が本気で理解しているでしょうか。本書は、その覚悟を問う一冊なのです。

田村氏が最も強調するのは、DX戦略は経営戦略の「ど真ん中」に位置づけられるべき存在だという点です。これは単なる修辞ではありません。多くの企業がDXを「IT部門の仕事」として周辺化してしまうことで、本質的な変革を逃してきました。

しかし著者は明確に断言します——DXは経営判断そのものであり、経営戦略・事業戦略・組織戦略の中核なのです。現場にDXを丸投げすると「自動化」が進み、経営者が自らDXを考えると「変革」が進む。この対比が、すべてを物語っています。

抜本的な改革を成し遂げられるのは、経営者という「最高責任者」だけです。いくら立派な戦略を作っても、実行されなければ存在しないのと同じ。だからこそ、トップダウンでの推進が求められているのです。

著者は、DXが失敗する「あるある」のパターンを極めて冷静に言語化しています。
・無難な改善で終わる内製戦略——社内だけで考えると、波風の立たないDXになりがちで、結果が出せません。

・IT部門長への丸投げ——外部から招聘したITのプロも、現場理解が浅ければ大方針を出すだけで実務に踏み込めません。

・エース不在のプロジェクト——各部門は最も優秀な人材をDXに出したがりません。結果、スキルの低いメンバーによる効果のない施策が大量に生まれます。

この構造的な課題を突破するには、ボトムアップの積み上げではなく、「経営者の意思」によるトップダウンの組織設計が不可欠であると著者は説きます。データが示すように、DX推進において最も重要なのは技術ではなく、経営層のコミットメントなのです。

「攻め」と「守り」のIT再定義が変革の本丸

DX戦略は、単なる施策の延長ではありません。「この会社の未来をデジタルでどう創るか」という、経営戦略そのものです。社員一人ひとり賦臨場感を持ってその未来に共感できたとき、組織は動き出します。そして、変革は現実になっていきます。

本書のコアメッセージは、DXを「経営戦略×組織設計×仕組み化」の掛け算で捉える視点にあります。特に注目すべきは、IT部門の役割を戦略的に二分する設計思想です。

・守りのIT——既存システムの保守運用。徹底的にマニュアル化・標準化し、省力化(自動化)を断行します。
・攻めのIT——DX・新規事業・業務変革を担う「成長エンジン」。ここに人材を戦略的にシフトさせます。

「DXとは、実質的な人員シフトを”組織デザイン”としてやり切ることである」という指摘は、単なるプロジェクト論を超えた、極めて本質的な経営論です。

ここで著者が強調するのが、「ノンコア業務はすべてマニュアル化する」という方針を明確に打ち出すことの重要性です。しかも、それを単なる部門長の指示ではなく、「会社の経営方針」として、トップダウンで位置付けることが肝要だと説きます。

DX戦略は、経営者とIT部門が「二人三脚」で描くべきです。——これが本書の重要な主張です。DXを「ITの案件」として委任した瞬間、戦略はたいてい便利な改善案に縮みます。未来を描く仕事は、最後まで経営の仕事なのです。

ビジョンの策定には、経営トップの洞察力・構想力・判断力が求められます。他社の模倣では、自社にとっての最適解にはなりません。目指す未来は、結局のところ、自社にしか描けないはずです。

ここを誤ると、DXは「最新ツール導入プロジェクト」へと姿を変え、気づけば、導入したけど使われないという、よくある結末に向かいます。 ただし、未来を描くときに「近未来」へ寄せすぎると、話は途端に小さくなります。「現状の延長線上でどう良くするか」ではなく、「現状を前提にせず、どう飛び越えるか」。ここが分岐点になるのです。

経営者は未来を短期的な改善ではなく、長期の戦略として描く必要があります。 未来のスパンは、経営者自身が決めるべきです。10年先でも、7年、5年、3年でも構いません。抽象度が高いほど長期視点になり、具体的な目標ほど短期になります。とはいえ、技術進化があまりにも速く、10年先を正確に見通すのはますます困難になってきました。

そこで著者は「TO BEは7年後から逆算するのがよい」と提案します。7年という時間軸は、技術進化の速度と、組織変革に必要な時間を同時に見込んだ、現実的で手触りのある指針です。

そして要になるのが、TO BEとAS ISのギャップを明確に認識し、それを埋める戦略を描くことです。このギャップこそが、DX推進のエンジンになります。

ギャップが曖昧なまま走り出すと、組織はすぐに「何のために?」に引き戻されます。DXが空中戦になり、会議が増え、現場が疲れ、最後は“誰も悪くないまま終わる”。そんな失速を防ぐには、まず現実とギャップを明確に言語化する必要がります。

本書の実用性が高いのは、精神論に留まらず、具体的な「実装可能な方法論」を提示している点です。なかでも強いのが、現在の業務フローを、Excel、クラウド、果てはFAXや電話に至るまでを可視化します。それを「紙1枚」で描き出すことで、ボトルネックが明らかになります。

DXがうまくいかない会社は、たいてい最初からITやDXのツールを選びに行きがちです。しかし本書は逆で、まずは戦略と全体最適を描いた上で、ツール選びをすべきだと言います。この全体図をベースに、複数の解決策を立て、コストやリスクで客観評価し、絞り込んでいきます。

そこで必ず現れるのが、既存の抵抗勢力です。著者はここでも判断基準をぶらしません。「ソフトウェアはあくまで道具。未来の全体最適像から逆算するバックキャスト思考が必要である」。

テクノロジーに組織を合わせるのではなく、「未来の組織はどうあるべきか」から逆算して、ツールを選び直すのです。この視点の転換が、本質的なDXを可能にします。

また、本書が提唱する「期待→行動→成果→信頼」というDX推進サイクルは、シンプルでありながら本質を突いています。経営者が明確なビジョンを示し、組織に期待を抱かせる。その期待が行動を生み、行動が成果を生む。成果が信頼となり、信頼が次の期待へとつながる。DXとは、この好循環を回し続ける経営戦略の仕組み化なのです。

だからこそ、経営者が「自社DX」のビジョンと道筋を自ら描き、組織に示すことが不可欠になります。現場任せのDXは、現場の忙しさに飲まれて消えていきます。

印象的な事例として紹介されているのが、DeNA・南場智子会長の「AI活用で1500人分の業務を効率化し、新規事業に振り向ける」という戦略的宣言です。これは単なるコストカットではありません。「人の時間と才能を、オペレーションから成長創造へと大移動させる」という、AI時代の攻めの投資判断です。企業は結局、何に人間を使うかで姿が決まります。効率化は目的ではなく、配置転換の原資です。

ソフトバンクグループのAIコンテストに見られるような「圧倒的なインセンティブ設計」も含め、DXを現場のツール選定(ChatGPT、Gemini、Claude等の使い分け)レベルまで浸透させる組織的執念が、競争優位を生み出します。道具の導入ではなく、習慣の設計。ここが勝負どころです。

さらにガートナーは、2026年末までに企業アプリケーションの40%にタスク特化型のAIエージェントが統合される、という見立ても示しています。

「DXはITの問題ではありません。経営者の覚悟の問題です」。この本質を突いた一言が、本書の核心を表しています。経営者が変われば、企業が変わり、社会も変わる——すべては意思決定から始まります。組織を動かし、未来を仕組み化する技術が、この一冊に凝縮されています。テクノロジーは日々進化しますが、それを活かすも殺すも、結局は「人と組織の意思決定」にかかっているのです。

DXは、もはや「やるか/やらないか」ではありません。問われているのは、「いかに本質的に実行するか」です。その実行の質を劇的に高めてくれる、稀有な一冊だと評価できます。本書を手に取り、自社のDX戦略を経営の「ど真ん中」に据える勇気を持つ——それが、2026年を生き抜く経営者に求められる第一歩なのです。

本書のまとめ

・経営者が変われば、企業が変わり、社会も変わる
「DXはITの問題ではありません。経営者の覚悟の問題です」 この一言が、本書の核心を突いています。 経営者が変われば、企業が変わり、社会も変わる。——すべては意思決定から始まります。 変革のリーダーとして一歩を踏み出したいビジネスパーソンにとって、本書は“最強の実践的設計図”になり得ます。

・組織を動かし、未来を仕組み化する技術
 テクノロジーは日々進化しますが、それを活かすも殺すも、結局は「人と組織の意思決定」にかかっています。 DXは、もはや「やるか/やらないか」ではありません。 問われているのは、「いかに本質的に実行するか」です。その実行の質を劇的に高めてくれる、稀有な一冊だと評価できます。

本書を手に取り、自社のDX戦略を経営の「ど真ん中」に据える勇気を持つ。 それが、2026年を生き抜く経営者に求められる第一歩なのです。

本書はご恵贈いただきました。

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