ヴァネッサ・ヴァン・エドワーズのCAPTIVATE 最強の人間関係術の書評

世界で1カ所だけ、男性の寿命が女性と同じ場所があります。それは山深い辺鄙な場所で。男性でも女性でも特に長生きする人が多い地域― いわゆる「ブルーゾーン」の1つです。これがそのブルーゾーンでイタリアのサルディーニャ島―コルシカ島とチュニジアの間の地中海に浮かぶ島です。イタリア本土とは300キロも離れていませんが、100歳を超える人の割合は6倍です。北アメリカと比べると10倍という高率です 男女で寿命に差がないのはここだけです。(スーザン・ピンカー)


photo credit: Bilderschachtel Photography Lunch break via photopin (license)

長生きと幸せな人生のためには人との密接な関係が欠かせない!

長生きするエリアとして地中海エリアは有名です。今まで地中海式の食事が長生きの理由だとされてきましたが、心理学者のスーザン・ピンカーはそれ以外の理由をTEDトークで紹介しています。彼女の動画を視聴すると人とのコミュニケーションの重要性を再確認できます。食生活と運動は確かに健康に大きな影響を与えますが、寿命にとっては人との密接な関わりの方が重要だと言うのです。100歳を超える人たちにピンカーはインタビューを試み、その結果、人との密接なつながりによって人は長生きできると結論づけたのです。

サルディーニャ島の村民のように自分が所属しているという感覚は、女性だけでなく生物として欠かせないものです。人と人との直接的な交流を都市や職場や行動目標に 採り入れるようにすれば、免疫系が強化され、血流や脳の中に幸福感を生むホルモンが増えて、長寿の可能性が高まります。私はこれを「村の構築」と 呼んでいます。自分の「村」を作って維持することが命に関わる問題なのです。

コミュニケーションをよくして、多くの人と密接な関係を築ければ、幸せになれるだけでなく、長寿になれるのです。ピンカーの話を信じて、周りの人との関係を改善すべきです。対人スキルを習得することで人生が変わります。ここまで書いて一冊の本を思い出しました。対人関係知能(PQ)が発達すれば、もっと良い人生を送れるようになると言うヴァネッサ・ヴァン・エドワーズの以下のメッセージを思い出しました。

「対人スキルは、生きるのに必要な社会的潤滑油だ」という。人間の行動には法則がある。そのことがわかれば、すべてがうまくいくようになる。(ヴァネッサ・ヴァン・エドワーズ)

ヴァネッサの書籍CAPTIVATE 最強の人間関係術の中身をマスターすれば、周りの人とあっという間に仲良くなれ、その後も良い人間関係を築けます。また、PQをアップでき、その結果、年収を高めたり、幸福度や人生の満足度も上げられます。本書には人と仲良くなるメソッドがたくさん紹介されていますが、今日は自分の欠点にフォーカスしたいと思います。

欠点がコミュニケーションを活性化する??

欠点がないふりをして人にいい印象を与えようとしても、そんなことは不可能だし、疲れるばかりだ。心を開くことこそが、人との距離を縮めてくれる。

私たちは自分の隠そう隠そうとしますが、人との交流を深めたければ、それは得策ではありません。自分の弱みをさらけだすことは勇気が必要ですが、自分をオープンにするほうが人と親しくなれ、強い絆を築けます。自分の弱みや欠点が相手を安心させ、心を開いてもらえるのがその理由です。欠点を打ち明けても相手との関係にヒビは入りませんし、むしろプラスに働きます。

エリオット・アロンソン、ベン・ウィラーマン、ジョアン・フロイドら研究者たちは、人は失敗した人をどう思うか調査することにしました。被験者を2つのグループに分け、両グループにテストでいい成績を取ったと話す学生の音声を聞かせることにしたのです。学生は自分の生い立ちを説明したあと、テストで90点を取ったことを控えめに話しました。ここに一つの仕掛けを施し、失敗をするとどうなるかをチェックしたのです。一方のグループが聞いた音声は、終盤で学生がコーヒーの入ったマグカップを倒して服を汚してしまうようにしました。もう一方のグループが聞いた音声にはそんな場面はありません。その後、両方のグループに、「この学生は好感度が高いですか?」と質問したところ、被験者たちは、話をしただけの学生よりも、コーヒーをこぼした学生のほうにずっと好感を覚えました。なぜ、失敗した学生に親しみがわいたのでしょうか?それは、ミスをすると人間味が増し、親近感を感じるからです。

人は誰でもミスをするし、親近感を覚える人を好きになる。

失敗や欠点を相手に見せることで、人間関係がよくなり、幸せになれるなら、失敗や欠点で悩むのは金輪際やめたほうがよさそうです。悩みが減れば、ストレスも減り、本当に長生きできそうです。完璧になるのは不可能ですから、ありのままの自分を受け入れ、それを隠さないようにするのです。実際、弱みには人を引きつける魅力があり、この弱みのおかげで、人は正直で共感できるリアルな存在になれるのです。弱みは魅力だと信じて、自分の言動や行動を変えてみましょう。

フランクリン効果を信じよう!

人に好かれたければ、ベンジャミン・フランクリンの真似をするのも効果的です。1700年代当時、フランクリンは影響力のある著述家であり政治家として活躍していました。ペンシルベニア州の議員だったとき、彼は政敵でもある気難しい政治家の支持を得なければならなくなり、あるメソッドでその政敵と仲良くなりました。本好きだったフランクリンは、その政治家が自宅の大きな書斎に1冊の希少本を持っていることを知っていました。彼は手紙を書き、その本を貸してほしいと頼んだのです。その政治家は承諾し。本を貸してくれました。数日後、フランクリンはその本にお礼の手紙をはさんで返却したのですが、次のミーティングに参加したとき、その政治家は別人のように友好的で親しみやすい態度で接してきました。フランクリンは「人は、誰かの頼みごとを聞くと、その人を好きになりやすい」という法則を実践したのです。この現象はフランクリン効果と呼ばれていて、多くの人が活用しています。

それから約100年後、ジョン・デッカーとデイヴィッド・ランディは、フランクリン効果を実験で検証することにしました。まず、被験者に「すべてのアンケートに答えていただければ、謝礼をお支払いします」と伝えたのです。このアンケートを実施する「責任者」は実は俳優で、しかも被験者がアンケートに答える間、できるだけ横柄な態度を取るようにと頼まれていたのです。アンケートが終わると、被験者はこの俳優から小額の謝礼を受け取りました。この実験はここから面白くなります。
実験①では、「責任者」が実験室の外まで被験者を追ってきて、こう頼みました。「お金を返してもらえませんか?この実験は私のポケットマネーで実施しているのですが、もう資金が底をつきかけているんです」。実験②では、「偽の秘書」が被験者のあとを追ってきて、同じことを頼んだのです。実験③では、謝礼を受け取った被験者はそのまま帰宅し、誰からも何も頼まれませんでした。数日後、3つの実験に協力してくれた被験者に、責任者の好感度の高さを評価してもらったところ、驚くべき結果が出ました。なんと責任者の好感度を一番高く評価したのは、実験①の被験者たちだったのです。とても嫌な態度の人物を好ましい人物だと感じたのです。人は助けてほしいと訴え、弱みを見せたときに共感を得られることがここからわかります。

著者のヴァネッサ・ヴァン・エドワーズは頼みごとなどせずに、フランクリン効果を発揮する方法を紹介しています。その方法は極めて簡単です。ただ、周りの人にアドバイスを求めればいいのです。

人とうまくつきあって長続きする関係を築くには、アドバイスを求める方法が一番お勧めだ。

著者はその理由を3つあげています。

・アドバイスを求めることは、やんわりと弱みをさらすことでもある。アドバイスがほしいと頼むのは、知識がたりないと認めるか、相手に助けを求める行為だからである。
・アドバイスを求められると、相手は自分の意見が言える。相手は負担に感じるどころか、うれしくて生き生きするアドバイスを求めるということは、相手が「この人の意見は聞くに値する」と判断したからに他ならないのだから。
・アドバイスを求めると、相手の性格を診断しやすくなる。相手のアドバイスは、その人間性を知るきっかけになる。相羊の考え方や、相手がもっとも重視するものは何かなどのヒントが得られる。

アドバイスを求めるといっても、堅苦しく考える必要はありません。目の前にいる人にアドバイスを求めると会話を盛り上ります。出会った人が過去のエピソードや貴重な体験を話したら、それに関係するアドバイスを求めるようにするのです。私は読書好きな仲間にはオススメの本を聞くようにしています。熱心に本の話を聞くうちに共感が生まれ、一気にその人と仲良くなれます。

初対面の人にも遠慮せずにアドバイスを求めましょう。好きなレストランやカフェを聞くことで、会話が盛り上がるはずです。フランクリン効果の恩恵を受けるためにも、日常生活の中で周りの人たちからアドバイスを求めるようにすべきです。

まとめ

長生きするために必要なことが、人との密接な関係から生まれることがわかってきました。長生きで幸せになるためには、コミュニケーション能力を鍛え、人との関係をよくすればよいのです。私たちは欠点を見せることで、周りの人から身近に感じてもらえます、自分の失敗や欠点を伝えることで、人との距離を縮められます。また、フランクリン効果を活用するのもよいでしょう。相手にお願い事をしたり、アドバイスを求めると短時間で関係を強化できます。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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