ステファン・アインホルンの「やさしさ」という技術―賢い利己主義者になるための7講の書評2

世の中の暗い面にばかり目を向けていれば、現実を見る目が曇るのは無理はない。(ステファン・アインホルン)

スクリーンショット 2016-01-28 8.23.41

スウェーデンのドクターのステファン・アインホルン
「やさしさ」という技術――賢い利己主義者になるための7講の書評を続けます。
今日は第5講の「やさしさは得か?」を読み解きます。

私たちは毎日毎日、メディアから世の中の暗いニュースを大量に受け取っています。
この結果、世界は事件や事故ばかりで楽しくないと感じてしまいますが
自分の周りには、幸せになれる良い話がたくさんあるはずです。
視聴率や部数を気にするメディアの情報は、悲惨なものに偏ります。
人の不幸を見せることが数字を稼げるとわかっているから
メディアは悲惨なニュースを流してますが
私たちはこの悪いニュースに騙される必要はないのです。
暗いニュースが始まったら、情報を遮断して
世の中のためになることを考えるべきなのです。

本来、人は他者にやさしくしたいと考えて生きています。
人は仲間との関係を良くしたいですし、困っている人を本来は助けたいのです。
現実には、悪意のある行動は、メディアのニュースほど多くはありません。
ニュースに騙されて悲観的に世の中を見るのではなく
社会にやさしくなることが正しいのだと本書から学べます。

人間は他の多くの動物と同じく、群れをなして生きています。
つまり私たちは、自分だけでなく集団が生き延びるための行動をとっているのです。
当たり前ですが、個人の幸福と存続は、集団の幸福と存続に支えられているのです。

ある研究によると、集団の利益に貢献したいという意識が
最も高いのは150人以内の集団だと言います。
世界の狩猟採集民族の村落も軍の一部隊も
だいたい150人程度になっているのにも理由があるのです。
集団の規模が大きくなると集団への帰属意識が弱くなり
個人の利益を重視するようになるというのです。
現代社会は大きくなりすぎたために、利己主義が跋扈していますが
人間は本来は帰属する社会への貢献を考えているのです。
本来人はやさしくなれるはずですから
私たちはもっともっと利他的に行動すべきなのです。

このほかにも、本書では「倫理観」や「快楽」「気前の良さ」から
「やさしさ」の意義が紹介されています。
その中からいくつか私が気になった著者の考えを引用します。

人はよい扱いを受けると他人を助ける傾向があるという箇所に惹かれました。

ある実験で、被験者にテストを受けさせたあと、実際の成績とは無関係に、一部の者には「あなたの点数はよかった」と伝え、残りの者には「あなたの点数は悪かった」と伝えた。その後、被験者はふた通りの方法で試された。まず、被験者を部屋に残し、募金箱を置いておく。すると、テストの点数がよかったと伝えられた人のほうが寄付をする傾向があった。次に、研究者が本を棚に戻すふりをして、床に落とした。今度も、いい点数だと聞かされた人のほうが、より積極的に本を拾うのを手伝おうとした。この実験から、人は自分がいい扱いを受ければ、自分も周りの人を大事に扱おうとすることがわかる。

要はあなたが仲間によい行いをすればするほど
仲間もあなたによい行いをしてくれるようになるのです。
そして何よりも、その人たちはあなただけによい行いをするのではなく
他の人にも以前よりやさしく接するようになるのです。
こうしてよい行いは水面の輪のように広がっていきます。
こういう幸せの連鎖が、自分の周りに起こるとワクワクできますね。
しかも、そのスタートラインは、自分で作れます。
今すぐ他者にやさしくすることを決めて、行動に移せばよいのです。  

著者のステファン・アインホルンの次の言葉を読むと自分の考え方や行動を変えたくなります。

私たちは無力ではない。周囲や自分自身に対して、思う以上に大きな影響力を持っている。結局のところ、これはおそらく真実なのだーひとりの人間が世界を変えられるというのは。

また、本書から利己主義と「やさしさ」が共存するということを学べました。
ダライ・ラマの次の言葉などは、世の中を良くするためには、利己的であってもよいと読めます。

愚かな利己主義者は、いつも自分のことだけを考えて、否定的な結果を招きます。一方で賢い利己主義者は、他人のことを考えてできるだけ手を貸し、自分と相手のどちらにも得になる結果をもたらすのです。(ダライ・ラマ)

他人のために手を貸す賢い利己主義者になって行動すれば
世の中を今以上によくできるのです。
他者と自分の両方をハッピーにするために、賢い利己主義者になることを選びたいものです。

このように宗教、倫理、進化論、行動科学からのアプローチからも
私たちはやさしくしていれば、得をするということがわかっています。
逆に、悪い行いをすれば、何も得られないのです。
誰かを助けたり、人にやさしくするために行動することが
わたしたちがすべき正しい選択なのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

   

 photo credit: in the leaves via photopin (license)

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
習慣化書評生産性向上ブログクリエイティビティライフハック人脈幸せ
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ!
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました