ユヴァル・ノア・ハラリのホモ・デウス: テクノロジーとサピエンスの未来の書評

成功は野心を生む。だから、人類は昨今の素晴らしい業績に背中を押されて、今やさらに大胆な目標を立てようとしている。前例のない水準の繁栄と健康と平和を確保した人類は、過去の記録や現在の価値観を考えると、次に不死と幸福と神性を標的とする可能性が高い。(ユヴァル・ノア・ハラリ)

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人類は神のような存在ホモデウスを目指す!

秦の始皇帝は不老長寿を求め、多くの人たちに命じ、その秘策を探しましたが、当時の技術では彼の望みを叶えることはできませんでした。多くの労力を使いましたが、彼は長生きできず、結局、始皇帝の死後、秦はあっという間に漢に倒されてしまったのです。歴代の中国王朝は長年飢餓と戦い、20世紀の毛沢東の時代になっても解決できずにいました。それ以外にもペストや天然痘の疾病、戦争という暴力が人々を苦しめました。人類の歴史は飢餓と疾病と暴力の歴史で、つい最近まで人類はこの3大問題によって、長生きできずにいたのです。

21世紀になり、ようやく飢餓と疾病と暴力による死を減らすことができるようになりました。現代人は老化と死そのものさえ克服することに人は狙いを定めました。2010年には、世界で300万人が肥満による様々な病気で亡くなりましたが、その数は飢え、戦争、紛争、テロで亡くなった数より圧倒的に多いのです。欧米人にとって、コカ・コーラはアルカイダ以上の脅威になっています。

ホモ・デウス: テクノロジーとサピエンスの未来の中で、ユヴァル・ノア・ハラリは人間は神を目指し、ホモデウスになると述べています。

人々を絶望的な苦境から救い出せたので、今度ははっきり幸せにすることを目標とするだろう。そして、人類を残忍な生存競争の次元より上まで引き上げることができたので、今度は人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウスに変えることを目指すだろう。

ホモ・サピエンスは現在も進化中で将来、科学技術の飛躍的な発展によって、神のような存在の「ホモ・デウス」に進化していくのです。その時、私たち人類に何が起こるのでしょうか?著者のハラリはこの長編の中で、未来のホモデウスの世界を予測しています。

 

データ至上主義が世界を揺るがす、大変動を巻き起こす!

バイオ・エンジニアリングやサイボーク、無機生命体の3つの領域の技術が進化することで、人は不老長寿を手にします。私たちの代では難しいかもしれませんが、子供達の世代では神の領域に近づいているはずです。ロケットやコンピュータを作った人類は、遺伝子の解明を進め、ホモデウスとなり、今までとは異なる新たな次元に突入するのです。

一部の人間は神のようにスーパー記憶力を有し、知性、抵抗力を有するようになる一方、大部分の人類はその段階まで進化できずに留まるだろう。19世紀、工業化によって労働者階級が出てきたが、21世紀に入ると、デジタル化が進み、新しい階級が生まれてくる。それは“無用者階級”だ。

一部の富裕層は神のような存在ホモデウスになり、それ以外の人たちは無用者階級に成り下がってしまうのです。アルゴリズムが多くの人たちを無価値な存在に変え、世界を退屈なものに変えてしまうかもしれません。しかし、神に近づくことがいきなり訪れるわけではありませんから、今すぐにパニックを起こす必要はありません。サピエンスのアップグレードは、無数の平凡な行動を通して、徐々に進んでいくと捉えましょう。

ただ、未来への考察は怠らないほうがよさそうです。そのために歴史を学び、自分の選択肢を増やすべきです。

歴史を学べば、私たちはあちらへ、こちらへと顔を向け、祖先には想像できなかった可能性や祖先が私たちに想像してほしくなかった可能性に気づき始めることができる。私たちをここまで導いてきた偶然の出来事の連鎖を目にすれば、自分が抱いている考えや夢がどのように形を取ったかに気づき、違う考えや夢を抱けるようになる。歴史を学んでも、何を選ぶべきかはわからないだろうが、少なくとも、選択肢は増える。

私たちが賢明な行動を取れば、その世界を変え、はるかに良い世界を生み出せます。過去から解放され、選択肢を増やすために、歴史から学ぶべきです。本書は人類と動物の関係を整理しながら、人が神に近づいてきたことを明らかにします。

脳や遺伝子の解明が進むうちに、「自由意志」だったはずの人間の行動が、実は生物化学的プロセスで説明されるようになってきました。個人の生物学的データが増えることで、個人の「気持ち」ではなく、データに意思決定を委ねた方が正しいと考えられるようになったのです。生命とはデータ処理に尽きると人間至上主義は古いものになり、データ至上主義に世の中は推移し始めたのです。

2016年の時点では、歴史の待合室でこの任務の採用面接を待っている候補が一つある。その候補とは、情報だ。最も興味深い新興宗教はデータ至上主義で、この宗教は神も人間も崇めることはなく、データを崇拝する。

データ至上主義では、自分のデータを提供し、周りのデータを活用することが正しいとされています。データ至上主義は、政治家や実業家や一般消費者に革新的なテクノロジーと計り知れない力を与えるのです。そう、未来を制するのはデータを掌握する者なのです。データは学問領域の境界を超え、見識を円滑に広めます。世界でデータほど重要な資産は存在しないと言っても過言ではありません。そして、データ至上主義はコンピュータ科学と生物学の2つの学問に根ざします。生物学がデータ至上主義を取り入れ、コンピュータ科学と結びついたことで、世界を揺るがす大変動が起こったのです。

そのような革命では、テクノロジーが政治を出し抜く。AIとバイオテクノロジーは間もなく私たちの社会と経済をそして体と心もすっかり変えるかもしれないが、両者は現在の政治のレーダーにはほとんど捕捉されていない。今日の民主主義の構造では、肝心なデータの収集と処理が間に合わず、たいていの有権者は適切な意見を持つほど生物学や人工頭脳学を理解していない。したがって、従来の民主主義政治はさまざまな出来事を制御できなくなりつつあり、将来の有意義なビジョンを私たちに示すことができないでいる。一般の有権者は、民主主義のメカニズムはもう自分たちに権限を与えてくれないと感じ始めている。世界は至る所で変化しているが、彼らはなぜ、どのように変化しているかわかっていない。権力は彼らから離れていっているが、どこへ行ったのかは定かでない。

テクノロジーが急速に発展することで、議会も独裁者もとうてい処理が追いつかないデータに圧倒されています。今日の政治家は一世紀前の先人よりもはるかに小さなスケールで物事を考えるために、今の政治家たちは壮大なビジョンを失っています。政府家は単なる管理者になってしまったのです。GoogleやFacebookはデータをコントロールしているように見えますが、プロジェクトベースでデータを処理しているだけで、個々のメンバーは何が起こっているかを理解していません。データ至上主義の時代には、ビジョンがなくなり、20年後に何が起こるかを予想しずらくなっているのです。

未来が予測不能な時代には、歴史を振り返ればよいと著者のハラリは言います。

歴史を通して、人間はグローバルなネットワークを創り出し、そのネットワーク内で果たす機能に応じてあらゆるものを評価してきた。何千年間もそうしているうちに、人間は高慢と偏見を募らせた。人間はそのネットワークの中で最も重要な機能を果たしていたので、ネットワークの功績を自分の手柄にして、自らを森羅万象の頂点と見なした。残りの動物たちが果たす機能は重要性の点ではるかに劣っていたので、彼らの生命と経験は過小評価され、何の機能も果たさなくなった動物は絶滅した。ところが、私たち人間が自らの機能の重要性をネットワークに譲り渡したときには、私たちはけっきょく森羅万象の頂点ではないことを思い知らされるだろう。そして、私たち自身が神聖視してきた基準によって、マンモスやヨウスコウカワイルカと同じ運命をたどる羽目になる。振り返って見れば、人類など広大無辺なデータフローの中の小波にすぎなかったということになるだろう。

ホモ・サピエンスが他のすべての動物にしてきたことを、ホモデウスがホモ・サピエンスに対してする恐れがあるとハラリは指摘します。

データ至上主義は人類だけでばく、生命体全てを変化させてしまう可能性があるのです。意識を持たない高度な知能を備えたアルゴリズムが、人類より賢くなった時に何が起こるのでしょうか?近未来に生きる私たちの子供たちは、どのように生きればよいか?を考えることが、今を生きる大人の勤めなのかもしれません。もはや、データ至上主義は誰にも止められない中、どう生きるかが人類の新たな課題になったのです。ホモデウスという超人(新たなエリート)が現れることで、世界はどうなっていくのでしょうか?著者が指摘する「無用者階級」に一部の富裕層以外が本当に陥ってしまうとしたら、未来は暗いと言わざるをえません。

まとめ

本書は私たちに3つの問いを投げかけます。生き物は本当にアルゴリズムにすぎないのか?そして、生命は本当にデータ処理にすぎないのか?知能と意識のどちらのほうが価値があるのか?意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになったとき、社会や政治や日常生活はどうなるのか?この答えを見つけることは難しいかもしれませんが、未来を暗くしないために解決策を探したいと思います。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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