「何」だけでは失敗の理由はわからない。「いつ」を重視し、自分の行動を改めよう!

成績不振のティーンエイジャーや伸び悩む賃金などの厄介な問題に直面すると、わたしたちは何が、というところに解決策を探す傾向にある。彼らの何がいけないのだろう?現状を改善するために彼らに何ができるのか?彼らに手を貸すためにほかの人たちは何ができるだろうか?だが、もっとも納得のいく回答は、わたしたちが思う以上に、い、つの領域に潜んでいることが多い。とりわけ、いつ学校やキャリアを始めるかは、個人や集団の運命に非常に大きな役目を果たす。(ダニエル・ピンク)

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失敗の理由は何ではなく、いつにある可能性が高い

ダニエル・ピンク氏のWhen 完璧なタイミングを科学する書評ブログを続けます。 ピンクはタイミングの重要性を本書で指摘していますが、何かに取り組む場合には、始まりの威力を意識すべきです。物事にとって重要なのは、好スタートを切ることで、たとえ失敗しても、また新たに始めればよいのです。多くの人は失敗の理由を「何」をに求めますが、「いつ」始めるかが結果を大きく左右することもあります。何をだけでなく、いつを意識するようにしましょう。

まずは、ティーンエイジャーの始業時間を考えてみます。多くの若者は幼児や大人とは異なり、夜遅くまで起きる習性がありますが、これを無視して制度は設計されています。学校教育もこの若者の睡眠を意識し、スタート時間を調整した方がよさそうです。

米国小児科学会(AAP)は2014年に、中学校と高校は始業時間を午前8時30分以前に設定しないよう求める政策方針を発表しました。数年後、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)も、ティーンエイジャーの学習と福祉の向上において、「学校の始業時間の繰り下げは、集団に多大な影響をもたらす可能性がある」と主張したのです。

ニューヨーク州、テキサス州、オーストラリアのメルボルンなど多数の学区がこの証拠を受け入れ、目覚ましい成果を挙げました。始業時間を午前8時35分以降に変更し、ミネソタ、コロラド、ワイオミングの8つの高校の生徒9000人の3年間にわたるデータを検証したところ、こうした学校では、出席率が上昇し、遅刻が減少したことがわかったのです。それだけではなく、生徒は、「数学、国語、科学、社会科という主要科目で」以前よりも好成績を収め、州および全米の標準テストの成績も向上しました。ある高校では、始業時間を午前7時35分から午前8時55分に繰り下げてから、生徒の自動車事故数が70%減りました。始業時間の繰り下げによって生徒の意欲が高まり、精神的安定性が増すなど様々な分野で効果が表れたのです。

「いつ」は年齢によって異なります。その時々の自分の最適なスタート時間を見つけ、重要なことから始めるようにしましょう。

 

新スタート効果を活用し、行動しよう!

2014年、ペンシルベニア大学ウォートン校のフンチェン・ダイ、キャサリン・ミルクマン、ジェイソン・リースの3人が興味深いレポートを発表しました。彼らは8年半分のグーグル検索を分析し「ダイエット」という単語が、元日に必ず急増することを明らかにしました。普段より約80パーセントも検索数が増えていたのです。ダイエットは毎月1日、毎週の週明けなど、暦の周期の各初日にも急増していました。「初日」に関わる日付が、人々のモチベーションのスイッチを入れ、ダイエットをスタートさせたのです。

3人の研究者は、スポーツジムでも同じパターンを発見しました。アメリ力のマンモス大学で、学生は運動施設に入館するたびにカードを通していましたが、研究者たちはジムに通う学生の日ごとのデータを1年分ほど収集しました。その結果、グーグル検索と同様に、ジムに通う学生は「各週、各月の初日、そして元日」に増えることがわかりました。その日以外にも新学期が始まったときと学校の休み明けの日に、普段よりも多くの人が運動しました。

グーグルで検索した人たちとジムに通う大学生にとって、カレンダーの日付が重要な指標になっていました。再度スタートを切るときに特別な日を選んで、やる気を引き出そうとしていたのです。

彼らは「時間の経過を区切る」ために、ある期間を終了して別の期間をーから始めるために、そうした日付を利用していた。ダイ、ミルクマン、リースはこれを「新スタート効果」と名づけた。

何かをするために、わたしたちは「社会的ランドマーク」と「個人的ランドマーク」という、2種類の時間的ランドマークを用いています。社会的ランドマークは、月曜日、朔日(月の1日目)、国民の祝日など、誰もが知っている日です。一方の個人的ランドマークは、1人1人異なります。誕生日や記念日、転職の機会などがそれに当たります。

いずれの時間的ランドマークを活用することで、行動を始められるメリットがあります。それまでの自分自身を過去に追いやることで、再スタートを切るチャンスを私たちに与えてくれるのです。新しいチャレンジを始めるために、人は区切りの良い日を選ぶことで成功に近づけます。

広告主が1月によく使うフレーズは、「新しい年、新しい自分」だ。これが、時間的ランドマークを用いるときにわたしたちの頭の中で起きていることである。

また、時間的ランドマークは、日々の些細なことから注意をそらし、人生の全体像をとらえさせて、目標の達成に集中させてくれる効果もあります。この時間的ランドマークを活用して、再スタートを切れば、すぐに失敗から立ち直れます。

新しい仕事で、重要なプロジェクトで、健康を改善しようとして、よろめきながらスタートを切る人でも、時間的ランドマークを利用して再スタートし、コースを変えることができる。

ダイ、ミルクマン、リースはその後の研究で、何の変哲もない日に個人的な意味を植えつけることで、新たな始まりを引き起こす力が生まれることを発見しました。子どもの誕生日でも、パートナーとのデート記念日でも、個人的に意味のある日だと認めることによって、出だしのつまずきを解消し、新たなスタートを切れるようになります。記念日を活用することで意識が変わり、人は再スタートを切れるのです。

最近の研究から、新スタート効果はチームにも当てはまることがわかりました。たとえば、企業の新四半期がひどいスタートを切ったとします。その改善メッセージを発信する際もタイミングを考えるべきです。失敗を過去に追いやりチームを元の軌道に戻せるようなタイミングを選びましょう。主力製品の販売記念などの意味のある機会を見つけ、やる気を引き出すほうが効果があります。

何しろ、新年の決意といえども確実に実行できるとは限らない。年が明けてからひと月後には、決意の64パーセントしか継続されていないことが、調査からわかっている。時間的ランドマークを設ければ、個人的に意味のあるランドマークならばとくに、ずさんなスタートから立ち直り、仕切り直す機会を、わたしたちに何度も授けてくれる。

やり直すなら何か特別な記念日を活用したほうが効果があります。自分にとって特別な日から再スタートを切ることが正しい処方箋なのです。

就職のタイミングによって、その後の人生が左右されることもわかってきました。リサ・カーンは1980年代に大学を卒業した白人男性の教育や健康、雇用状況について調査しました。その結果、就職のタイミングによって、その後のキャリアや収入が変わることを見つけたのです。

不景気のときに労働市場に加わった者は、好景気のときに加わった者よりも、キャリアをスタートさせた当初、収入が少なかったのですが、当初の不利な立場はその後も変わらず、それから20年間も続きました。

景気低迷時にキャリアをスタートさせた不運な卒業生は、好調時に卒業した幸運な者よりも、収入が明らかに少なかったのです。そして、その差を取り戻すのに20年もかかることがわかりました。

好況時ではなく不況時の卒業により生じる総損失額は、インフレ率を調整すると、平均でおよそ10万ドルだった。タイミングがすべてではなかったが、総収入で6ケタの差を生み出していた。ここでもスタートが、抑えがたい連鎖反応を引き起こしている。生涯賃金の上昇の大部分は、キャリアの最初の10年間に生じる。高給でスタートを切れば、初期の軌道は高いところに押し上げられる。

景気後退期に労働市場に加わった人々は、転職でも不利益を被りがちで、適職を見つけ高収入に向かって突き進むには、その分長い時間がかかるのです。始まりが人々の生計に対し、多大な影響を及ぼしているのです。

不況などスタートに関して自分の力が及ばない場合には、外部の協力が欠かせません。政府が奨学金を充実させたり、ローンを免除するなどの対策を行い、彼らの損失をできるだけ減らすようにすべきです。

まとめ

最近に研究でスタートが大きな影響力を持つことを明らかになりました。スタートは、わたしたちが考えるよりもはるかに長期間影響するのです。タイミングの重要性を理解し、行動することで果実をより多く得られます。時間的ランドマーク効果を利用すれば、誤ったスタートから立ち直り、新たなスタートを切ることができるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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