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サブスクリプションで売上の壁を超える方法
著者:西井敏恭
出版社:翔泳社
本書の要約
サブスクリプション・モデルでは顧客の「商品やサービスを使い続けたい気持ちづくり」にフォーカスし、顧客を成功させることが重要です。顧客から得られる様々なデータを活用し、サービスを絶改善し、顧客の離脱を防ぎ、LTVを伸ばすようにすべきです。
サブスクリプション・マーケティングの3つのポイント
LTVとは、顧客が生涯を通して企業にもたらす利益のことです。
顧客との関係性が強まれば強まるほどこのLTVは伸びていき、 確かな収益につながります。従来のビジネスの大半は、 顧客は1回購入すれば終わりだったので、 購入1回目までの顧客獲得単価(CPO Cost per order)が着目される傾向にありました。しかし、LTVが重要な指標になると、話は違ってきます。企業は、顧客に「 この商品・サービスを使い続けたい」 と思ってもらえるようなマーケティングをしていかなければならな くなりました。つまり、サブスクリプションとは、 顧客と継続的につながってLTVを伸ばし、 ビジネスを成長させることなのです。(西井敏恭)
デジタルマーケティングの第一線で活躍する西井敏恭氏が、サブスクリプション・モデルの書籍をリリースしたので、今日はこちらをご紹介しようと思います。テクノロジーやソーシャルメディアの進化で、顧客と企業の関係が変わり、顧客の「
著者はサブスクリプション・マーケティングには、3つのポイントがあると言います。
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2、データ活用による顧客体験の改善
3、顧客と企業による成功の共創
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2、データ活用による顧客体験の改善
LTVが伸びていく「使い続けたい気持ちづくり」のためには、データを分析して顧客の不満や満足している部分を見つけ、商品・サービスを改善する手がかりを見つけていきます。アドビでは、顧客がどんな機能をどれだけ使っているかを把握しています。追加のソフトウエアを誰がいつ購入したかなどの決済情報を含めて、サービスのあらゆる利用データを得ることができます。
チャットツールを活用することで、顧客の声をリアルタイムに聞くこともできます。様々なデータをもとに、商品やサービスの改善を繰り返し、顧客との関係をどんどん強化していくことで、企業は収益を高めているのです。サービスの良し悪しも、データによって明らかになり、顧客体験を高めるための機能改善を簡単に行えます。
さらに、顧客がサービスを解約する傾向を事前に発見できます。たとえば、解約した顧客の解約前後のデータを分析することで、解約を未然に防げます。 顧客体験の仕組みをあらかじめ設計しておけば、顧客からのフィードバックが得られ、顧客との関係が変わります。
カスタマーサクセスを目指せ!
3、顧客と企業による成功の共創
サブスクリプション・モデルでは、顧客の成功が鍵になります。改善されていく商品・サービスを利用し続けているうちに、顧客が「こんな体験がしたかったのだ」と得られたもの、それが顧客の成功です。そして、この顧客の成功をコアバリューとよび、サブスクリプションではこのコアバリューをつくることが非常に重要になっています。
サブスクリプションを選ぶ顧客は、商品やサービスを所有したいからではなく、使い続けて得られる成果に対してお金を払います。顧客が本当に望む成功は何か、企業は顧客の成功をつくるマーケティングができているかをつねに考えなければなりません。
サブスクリプションにおいて、顧客はこのきっかけを体験すると「この商品・サービスは使い続ける価値がある」と感じて、解約せずに長く使い続けてくれるため、結果的にLTVが高い状態になります。さまざまなデータを取得できていると、顧客からヒアリングするだけでなく、定量的なデータから「この状態をつくれば、顧客は成功している」という把握ができる指標(サクセスKPI)が見えてきます。
LTVが高くなる状態をつくるために、顧客の利用行動を想像して、「どのようなデータを取得できるのか」「どうすればその指標をより良くすることができるのか」を考え、商品・サービスを設計・改善します。
メルカリでは、ものを販売する、購入するのどちらかがきっかけになり、関係がスタートします。顧客データから、 購入・販売のどちらかだけではなく、購入もするし、販売もするユーザーの方が、LTVが上がることがわかっています。そのため、何かを購入したユーザーには「手元にある○○を販売してみませんか?」とメッセージを出したり、それをサポートするためのクーポンなどを配信し、顧客との関係を深めるようにしています。
自社の商品・サービスにおいてのサクセスKPIを定量・定性の両面から考えてみると、顧客の成功を導き出すことができます。顧客の成功を企業が積極的に支援することで、顧客はそのサービスから離れられなくなります。
顧客の成功体験が広がることで、新規顧客の獲得につながります。音楽サブスクリプションでは、良質なプレイリストに出会うことで、趣味の合う人とつながることができます。自分でもリストをつくる人が現れれば、そのサービスに愛着を感じます。
サブスクリプション・モデルでは、顧客が別の顧客に対してサービスの良さを訴求しているのであって、広告が顧客を連れてくるのではありません。成功した顧客が、次の顧客を連れてくると考え、コミュニケーションを設計すべきです。最初から広告に頼るのではなく、顧客基盤が固まり、利益が出た段階で広告をスタートしても遅くありません。
では、どうすれば、サブスクリプション・モデルをスタートできるのでしょうか?著者はPTCPPというレームワークを紹介しています。PTCPPの5つのステップを踏むことで、サブスクリプション・モデルを使った事業を生み出せます。
・P:ペイン(Pain)の発見 顧客のペインを見つけ、仮説をつくる
・T:トライアル(Trial)で仮説検証 ベータ版で顧客の声をフィードバック
・C:コアバリュー(Core value)づくり コアターゲットに価値を感じてもらえるか?の確認
・P:事業計画(Profitability)の確定 ビジネスとして成立するか?
・P:プロダクトマーケットフィット(Product Market Fit:PMF)
どのような改善が顧客の成功につながるか?
データを重視し、顧客のフィードバックをプロダクトに反映し、顧客を成功させることで、事業がうまくいくようになります。顧客の中からファンが生まれたら、口コミが起こります。そこを入り口に、サブスクリプション・モデルを拡大させましょう!共感→商品・サービスの最適化とパーソナライズ(データから様々な顧客に成功体験を与える)→入り口商品づくりを行う(新規顧客向けの商品づくりと広告による認知拡大)ことで、顧客を拡大できます。
顧客に暮らしの提案ができ、かつ顧客の成功体験をアップデートできれば、顧客の離脱を防げます。新規顧客を獲得し、離脱を防ぐことが成功の鍵だと考えるのです。様々なデータを活用し、顧客を成功させるサービスを生み出し、改善を続ける企業が成功を手に入れる時代になったのです。
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