立入勝義氏のUBER ウーバー革命の真実の書評

アマゾンの急成長により、トイザらスが閉店に追い込まれ、アップル(Apple)やネットフリックス(Netflix)が急成長したことで、タワーレコードやブロックバスターといったアナログ店が廃業しました。インターネットの普及により、物理的な制約条件はどんどんゆるくなってきており、同じような「革命」は世界のあちこちで起きており、既存の市場を破壊しています。革命は消費者目線で見たらよいことかもしれませんが、追いやられるほうからすると、脅威と恐怖以外の何ものでもありません。いかに消費者目線を体現するか、それ次第で、一つの非現実的なビジネスアイデアが巨万の富を築くことがある、ウーバーはまさにそんな革命的ビジネスモデルです。(スティーブ ・ボイヤー)


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なぜ、ウーバーは革命的な存在になれたのか?

仲間の立入勝義氏よりUBER ウーバー革命の真実を献本いただいたので、本書の書評を早速、書いてみたいと思います。本書はアメリカで暮らす、「多動」の立入氏にしか書けない一冊です。立入氏は日米の事業コンサル、ソーシャルメディアの情報発信にも長けたマルチプルワーカーですが、今回、彼は実際にウーバーでお金を稼ぐ立場に身をおきます。顧客、ドライバー、コンサルタントなどの多様な視点から UBER(ウーバー)を解体し、私たちにアメリカのシェアリングエコノミーの現状をレポートしてくれたのです。

ウーバーは今でこそ勝ち組として有名ですが、そもそも市場を開拓したのはサイドカーというベンチャーでした。皮肉なもので、最初にマーケットを開拓した先駆者サイドカーは、業界トップの地位を維持できずにGMに売却されてしまいます。ウーバーや競合のリフトは必要なときに、必要な経営資源と市場からの注目を集めたがゆえに成功できましたが、サイドカーはそのスキルが足りずに生き残ることができませんでした。

ウーバーは合法と非合法の境目にいましたが、スピーディに資金を調達し、規制と戦いながら大きくなる道を選んだのです。当局もウーバーのコンセプトの新しさに翻弄され、明確な判断を下せませんでした。そこを見逃さなかったウーバーは果敢に攻め、周りを突き動かし、資金を調達したのです。ウーバーの革命性を理解した一部の投資家のベンチャースピリットがなければ、ウーバーはどこかで挫折していたはずです。実際、多くの投資家たちがウーバーの訴訟の多さから、投資を諦めたと言います。シリコンバレーの投資家も判断を間違えるほど、初期のウーバーの動きはイノベーティブだったのです。

ウーバーはもちろんマッチングやプライシングをコントロールしてはいるが、あくまでもプラットフォームとして中立的な位置を維持しているとも言える。それぞれの運転手は従業員ではなく個人事業主であり、ウーバーは、ライドを必要とする一般人と彼らを繋いでいるだけなのである。このコンセプトが斬新なものであったため、当局も当初はどう取り締まるべきかわからなかったはずで、その間にウーバーは大きく勢力を伸ばした。これはビットコインなどの仮想通貨にもまったく同じことが当てはまる。旧態依然とした法規制が及ぼない範囲で急速な進化を遂げ、既存産業を破壊する製品やサービスというのは、えてして、「合法」と「非合法」の境目、いわゆる「脱法」的な立ち位置となっているものである。(立入勝義)

アメリカのタクシー産業に大打撃を与えたウーバーは、顧客とドライバーの両方を満足させながら、短期間で独自のポジションを確保し、時価総額を高めていきました。多くのシリコンバレーのベンチャー企業がネットにとどまり、広告収益モデルをベースに事業を展開したのとは異なり、ウーバーは既存のタクシー業界に殴り込みをかけ、広告とは違うビジネスモデルで勝負したところにその新しさがあったのです。

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ウーバーの成長を支えた4つのポイント

■シェアリング・エコノミー
■GPSとスマートフォンの普及と進化
■AIを利用した独自のアルゴリズムの構築
■米国のキャッシュレス文化

ウーバーの成功はまさにタイミングが合致したことが主な原因です。4つのイノベーションがほぼ同時に起こったことで、ウーバーはエア・ビー・アンド・ビーとともに時代の寵児になれたのです。

立入氏はウーバーがウーバーたり得た最大の理由を、AIを利用した独自のアルゴリズムの構築だと指摘します。
■ユーザー情報の管理ユーザーのプロフィール、課金情報、レーティング
■ユーザーと運転手のマッチング近隣にいる運転手とユーザーを繋げる役割。
■プールなどの相乗り時のマッチングユーザーAの目的地方面に向かいたいユーザーBを経路内で拾って、いっしょに連れていく。
■最適な走行ルートの自動化道路の混雑状態などを加味して、最適な道順を示す(運転者は通常ウーバーアプリ、あるいはグーグルマップ、あるいはウェイズを選択することができる)。
■混雑に応じて値段が変わるサージシステムの計算特定の時間帯や地域で極度な需要過多が起きている場合は×1.3(1.3倍)、×1.5(1.5倍)というように料金が変動する仕組み。
顧客とドライバーの両方の声をAIで分析し、マッチングすること、アプリのUI、UXの使いやすさを追求したことが彼らの勝因だったのです。

シリコンバレーの投資家の琴章憲氏はウーバーのビジネスが画期的だった点を以下のように整理しています。

ウーバー(とエア・ビー・アンド・ビー)以前のシリコンバレー発のインターネットビジネスの王道は、あくまでもネット上に留まり、従来存在した広告収益モデルをべ一スとするものでした。既存のビジネス(リアルビジネス)との競争を避ける気運というか美学みたいなものがなんとなくありました。しかし、ウーバーは実際に既存産業に殴り込んでいって、それを倒し、市場から広告とはまったく違うお金(リアルマネー)を獲得するに至りました。まさにディスラプトを地で行く革新的なビジネスモデルだったわけです。ある意味、彼らが最もシリコンバレーらしい企業と言えるかもしれません。(琴章憲)

ウーバーは直接の競合であるイエローキャブを実際に倒産に追い込む、破壊的なモデルなのです。

ウーバーとエア・ビー・アンド・ビーがそれまでの新興インターネットサービスと大きく異なる点、それは既存産業をディスラプト(破壊)してきたことです。ウーバーは既存産業のタクシー業界に殴り込みをかける形で参入し、実際にそのシェアを大きく奪い、アメリカのタクシー業界を破壊しました。今後もウーバーは成長を続け、様々な業界を破壊しそうです。通勤や移動に関するビッグデータをおさえたウーバーには、多くの可能性が見えています。トヨタとの自動運転の提携が話題になっていますが、今後も様々なジャンルで既存産業を破壊してくるはずです。

経済学者の小原一郎氏が指摘するように膨大な顧客とドライバーのビッグデータをリアルタイムに解析できることがウーバーの強みで、アマゾンのように大化けする可能性が高まっています。

情報には規模の経済の側面があるので、ウーバーをみんなが使えば使うほど、ウーバーはよりよいサービスを提供できるようになります。たくさんの情報が収集され解析されることで、価格は適正化されていきます。たとえば、ウーバーが各運転手の運転行動に対する詳細な情報を得ているとしましょう。そのデータが詳細であればあるほど、データには活用価値が生まれます。もしウーバーが自分で自動車保険を提供するようになったとしたら、掛け金の設定をする際にそのようなデータを最大活用するでしょう。運転が上手で事故の確率が少ない人、というのを客観的に識別できるわけですので、その分、安い掛け金をオファーすることができますし、逆もまた然りです。それほど詳しいデータを収集することができない保険会社は、ウーバーに太刀打ちできなくなるでしょう。こういったことは、経済学の観点では特に目新しいことではないのですが、ビッグデータの収集と処理速度が飛躍的に向上したことで、リアルタイムで処理ができるようになったという点が革新的です。結果として価格付け(プライシング)はより精緻化され、ビジネスが最適化されることは間違いありません。(小原一郎)

最後にウーバーの今後のリスクについて考えてみたいと思います。立入氏は6つのリスクをあげていますが、実際に各国の規制や訴訟リスクがウーバーの最大の脅威だと思われます。

1.法的訴訟リスク
2.犯罪
3.採算性の悪化
4.競合に敗れる
5.買収した会社を巡るトラブル
6.セキュリティ問題

また、現状のビジネスモデルで十分な収益性が担保されているわけでもなく、訴訟費用や、敗訴の際の懲罰金などで一気に経営が悪化する可能性もあります。競合のリフトとの差も絶対的なものではありません。いくつかの課題はありますが、ウーバーがこれをどう乗り越えていくかも楽しみです。今週からアメリカに行くので、本書を参考にしながら、改めてウーバーを体験し、レポートを書きたいと思います。

まとめ

世界70ヶ国以上でサービスを展開し、7兆円規模の時価総額を誇るユニコーン企業のウーバーの上場が決定しました。ウーバーは他のシリコンバレーの企業とは異なり広告モデルを採用せずに、あっという間に既存のタクシー産業を破壊しました。訴訟が続く中でも、ウーバーは果敢に攻めの経営を続け、スピーディーに資金を調達し、事業を拡大させたのです。

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