日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方
著者:鈴木貴博
出版社:PHP研究所
本書の要約
日本の製造業のシンボルであるトヨタですら、2020年代を通じて衰退する可能性があります。テスラやグーグル、アマゾンが電気自動車に進出する中、トヨタが旧態依然の開発思想で戦うのは無理があります。トヨタが生き残るためには、社会インフラの中心企業になるかエネルギー産業へシフトすべきです。
7つのショックが日本経済を襲う?
2020年代は多くの日本人にとって厳しいものになる。その変化は徐々にやってきます。逆に言えば備える時間はあるということも事実です。(鈴木貴博)
フューチャリスト・経済評論家として活躍する鈴木貴博氏は、2020年代にはこれから新たに7つのショックが到来すると予言します。
●アフターコロナショック
●トヨタショック
●気候災害ショック
●アマゾンエフェクト
●人ロピラミッドの崩壊
●ポピュリズムショック
●デジタルチャイナショックという7つの変化です。
そしてそれぞれの変化は日本経済や日本社会に甚大な影響を与えます。具体的にはコロナは2020年の夏からは経済問題へと性格を変えます。それとは別の原因でトヨタがこれからの10年間で衰退していくこと、巨大台風だけでなく熱波や熱帯性伝染病など新しいタイプの気候災害が日本を襲うこと、アメリカ同様に日本でも大規模小売チェーンが次々と閉店していくことなどのショックが予測されます。
トヨタという日本を代表する企業も今後10年で衰退する可能性があります。テスラが押し進める電気自動車へのシフトとグーグルやアマゾンが実証実験を行っている自動運転が、トヨタを破壊しようとしています。先日、アップルが自社ブランドの電気自動車を発売すると発表したこともトヨタにとっては脅威となるはずです。
米カリフォルニア州の知事が、2035年にガソリン車の販売を禁止すると発表しましたが、環境問題が政治の重要なテーマになる中、菅政権も電気自動車への転換を進めようとしています。ヨーロッパや中国はより早いタイミングでEVの普及を進めようとしています。
電気自動車にはエンジンが必要なく、パーツも少なくてすむので、バッテリーの性能が高まれば、簡単につくれるようになります。今までの自動車メーカの技術的優位性がなくなり、一気にレッドオーシャンになる可能性が高まっています。
部品メーカーなどを巻き込んだ巨大な産業ピラミッドとなって莫大な雇用と付加価値を創出しています。この構造が崩壊すれば、大変なことになります。その意味でも、日本を代表する製造業であるトヨタの今後の対応が、日本経済の命運を握っているといっても過言ではありません。
トヨタの衰退が避けられない理由
10年後、2030年の世界の自動車産業はCASEをキーワードに業態のメタモルフォーゼ(形態変貌)を引き起こしていることでしょう。C=コネクテッド(すべての自動車がネットワークにつながること)、A=自動運転、S=シェア(自動車の共有)、E=電気自動車化の4つの動きの結果として、自動車産業は自動車を開発し製造して売るビジネスから、社会のインフラビジネスへと変貌します。 そしてその変化の果実を自動車メーカーではなくGAFAやBATHが手にする可能性が高い。ここがトヨタの未来にとっての最大のリスクです。
テスラ車は自動運転のためのAIやソフトウェアはダウンロードによってアップグレードが可能な設計になっています。また、充電池もリプレイスすれば新型と同じ性能になります。トヨタが車というハードを製造しているのなら、テスラは車輪のついたソフトウェアを開発しているのです。
2020年に販売している最新のトヨタ車は、2025年に完全自動運転車時代がくれば性能的に完全に時代遅れになります。一方、テスラ車は定期的にソフトウェアのダウンロードやハードウェアの交換が可能なので、新車のような価値を維持できます。2つの車を比較した時に、消費者はどちらのブランドを選択するでしょうか?
今売られているトヨタ車の消費者にとってのリスクは、数年後の買い替えの際に明らかになります。2025年頃の中古車市場でトヨタ車の価値が無価値になる可能性がある中、トヨタは今までの開発思想を捨て、今すぐにでも変化すべきです。しかし、トヨタの変革スピードはテスラに比べ遅々としたもので、このままの状態が続くとトヨタの衰退は避けられません。
車を個人で買う人口は激減し、日本のカーシェアのインフラはウーバーやリフト、ディディが、車の利用窓口は彼らのエージェントである携帯電話の契約ショップがその役割を果たしていることでしょう。もちろんトヨタは自動車を作り続けてはいるでしょう。世界で一番車の製造に優れているというポジションは維持できているかもしれません。しかし、10年後の未来においてはハードウェアの製造事業はもはや自動車産業全体のコアビジネスではありませんし、中国製の電気自動車と製品的に差異を出すことも難しくなる。2030年のトヨタは、2020年のソニーのスマートフォン事業のような苦しい地位へとすべり落ちていくと予測されるのです。
それを避けるためにトヨタは交通網をコントロールする社会インフラの中心企業になるか、あるいは巨大エネルギー産業の一核を目指す必要があります。そのためにトヨタはGAFAやBATHとの対等合併を目指すべきだと著者は指摘します。
私たちは自らの手でこの悲観的な予言を変えることができます。
企業は企業という記号的な存在ではなく、夢を持った人間の集団であるということです。人間たちが窮地に陥ってもあきらめず未来にチャレンジする。その力が未来を変えるのを目の当たりにするたびに、感動をおぼえる。それは素晴らしいことだと思っています。予言された未来はしばしば人間の力で変えることができる。
何も行動を起こさず傍観を続けていれば、悲観的な未来を迎えることになります。私たちは思考し、行動することで、鈴木氏の7つの予言を変えることも可能です。「未来は変えることができる」こともまた真実だという著者の言葉を信じて、ポジティブな未来を実現しましょう!
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