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LOONSHOTS<ルーンショット> クレイジーを最高のイノベーションにする
著者:サフィ・バーコール
出版社:日経BP
本書の要約
ルーンショットとは、「誰からも相手にされず、クレイジーと思われるが、実は世の中を変えるような画期的アイデアやプロジェクト」を指します。ルーンショットを続けるためには、相分離 、動的平衡、クリティカルマスの3の条件をクリアしなければなりません。
ルーンショットとは何か?
同じ人から成るチームや企業の振る舞いが突然変わる。これはビジネスの謎の一つだ。たとえば起業家は、社員が保守的でリスクを嫌うから大企業は破綻する、などと言う。おもしろいアイデアは小さな企業から生まれる。なぜなら、私たちはリスクをとることを全く厭わないからだ(と彼らは自分に言い聞かせる)。だが、そうしたスタートアップ企業に大企業型人材を入れたら、いきなりテーブルを叩いて大胆なアイデアを支持するようになるだろう。同じ人物が、保守的な振る舞いでプロジェクトを潰すこともあれば、起業家としてみんなの先頭で旗を振ることもある。(サフィ・バーコール)
メンバーは自分が置かれている環境によって、思考と行動を変えます。集団が小さいときは、プロジェクトの結果に対する全員の関与度が高くなります。スタートアップやベンチャーが成功すれば、メンバー全員がそこそこの資産家になれますが、もし、大きく失敗すれば、全員が失業してしまいます。
チームや企業が大きくなると、結果への関与度は下がり、職位上のメリットが高まります。この2つが入れ替わるとシステムが崩れ、同じメンバーでも異なる行動をするようになります。組織が大きくなれば、同じ人々で構成される同じ集団が、「ルーンショット」を拒絶するようになるのです。
本書のタイトルの「ルーンショット」とは、物理学者でバイオベンチャー起業家の著者のサフィ・バーコールの造語です。ルーンショットとは、「誰からも相手にされず、クレイジーと思われるが、実は世の中を変えるような画期的アイデアやプロジェクト」を指します。
ルーションとには以下の3つの特徴があります。
1、最も重要なブレークスルーは「ルーンショット」、すなわち誰からも相手にされない、一見ばかげたアイデアやプロジェクトが生まれます。
2、ブレークスルーをテクノロジーや製品や戦略に転換するには、大規模な集団が必要になります。
3、チームや企業など、何らかのミッションを持つ集団の行動に「相転移」の科学を当てはめることで、ルーンショットを素早く上手に育てるための実践的ルールが明らかになります。
イノベーションを起こす組織(アーティスト)は重要ですが、それだけでは企業は大きくなれません。組織を維持拡大させるためには、組織(フランチャイズ)の力も必要になるのです。
イノベーションを起こし続けるために必要なこと
ルーンショットとフランチャイズの両方に目を配り、一方が他方を支配することがないよう、それぞれが相手を促進・支援できるよう心がける。 こうした庭師が築く構造は共通の原理を備えている。それを私は「ブッシュ・ヴェイル ルール」と呼ぶ。
「相分離」とは,相転移現象の一種です。 例えば,氷が水に、水が水蒸気に状態が変化する現象が相転移であり,その状態変化の間に、氷と水、または水と水蒸気が共存している状態が相分離になります。組織運営にもこの考え方を取り入れることで、組織の規模が大きくなっても、変化に適応できるようになるのです。
ルーンショットに取り組む集団とフランチャイズに取り組む集団を分ける「相分離」を実現すると同時に、動的平衡(両集団間のやりとりのしやすさを確保する)を保てばよいのです。
ルーンショットは2つの相の微妙な動的均衡の上にのみ存在します。組織はルーンショットとフランチャイズの両方の相のバランスをとる「ブッシュ・ヴェイル バランス」が必要となります。組織がダメになる「相転移」を引き起こす要因がわかれば、 相転移が起きる時期の予測や、転移の防止が可能になるというのが著者の私たちへのアドバイスなのです。
実世界の典型的な制御パラメータの値を見たとき、150というマジックナンバーを境にインセンティブが突然変化する。この規模のとき、綱引きをする力のバランスが変わり、システムは突然、「ルーンショット重視」から「昇進重視」へと変わり果てる。
イノベーションを起こすための組織の最適なサイズは150人くらいであることがわかっています。イノベーティブな組織を作るためには、150というマジックナンバーを意識すべきです。
組織の中で、ルーンショットを続けるためには、以下3の条件をクリアしなければなりません。
1、相分離
ルーンショット集団とフランチャイズ集団を分離します。
2、動的平衡
ルーンショット集団とフランチャイズ集団ののシームレスな交流を促します。
3、クリティカルマス
いくつものルーンショット集団が存在することが求められます。 企業が成功したら、いくつものルーンショットに投資し、そこから新たなブレイクスルーを起こしていく必要があります。
イノベーションを起こすためには、バカげたアイデアを信じ、3度の死(大きな失敗)を乗り越える必要があります。大企業ではフランチャイズを意識するあまり、ルーンショットが軽視され、イノベーションが起こりづらくなります。今こそ、日本企業はクレイジーなアイデアを実現できる組織をつくる必要があります。
急速に進化する市場のなかの初期プロジェクトは、嵐のなかを舞う葉っぱのようなもの。最後にどこへ行き着くか予測するのは難しい。葉っぱが着地したあとで、このテクノロジーが市場を破壊したというのはやさしい。
本書のおわりに──「ルーンショットとディスラプション」の違いが書かれていますが、イケアやウォルマートのスタートラインを見えば、ルーンショットの重要性を理解できます。破壊的イノベーションとは事後的解釈でしかなく、バカげたアイデアをプロダクトに発展させたイノベーターがいたからこそ生まれたものなのです。
本書はボリューミーな一冊ですが、このおわりに読むだけでも十分価値があります。おかしなアイデアを口にする社内の人を無視しないことが、イノベーションを起こす秘訣です。
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