ファミリービジネスを永続させる方法(ジョシュ・バロン, ロブ・ラシュナウアー)の書評

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ファミリービジネスを永続させる方法
ジョシュ・バロン, ロブ・ラシュナウアー
ダイヤモンド社

本書の要約

ファミリービジネスを成功させるためには、移譲が鍵を握ります。移譲を一度きりのイベントと捉えるのではなく、プロセスだと考え、関係者と話し合いを重ることで事業承継の成功の確率は高まります。承継を先送りするのではなく、デッドラインを決め、早めにスタートするようにしましょう。

ファミリービジネスを成功させる方法

ファミリービジネスでは次の5つに関して、オーナーシップを発揮する権利がある。・設計 どのようなタイプの所有権を望むか。・決定 どのようなガバナンス構造にするか。・評価 どのように成功を定義するか。・報告 何を伝えるか、何を伝えないか。・移譲 どのように次世代へ委ねるか。(ジョシュ・バロン, ロブ・ラシュナウアー)

日本には何代にもわたって繁栄を続ける老舗企業が数多く存在します。こういった会社の多くは同族企業であり、オーナーシップ制度が他の大企業とは大きく異なります。

会社の所有権を持つのは、比較的少数の親族で、彼らが会社の方向性を大きく左右します。このファミリービジネスを研究している著者たちは、経営者たちのアドバイスをする中で、設計、決定、評価、報告、移譲の5つの権利の重要性に気づきます。これらの権利を理解し、有効に行使すれことで、一族は長期的な成功を手に入れられると言うのです。一方、これらを誤解または誤用すれば、何代もかけて築き上げてきたものが崩壊する可能性が高まります。

ファミリーでは意思決定が重要になります。著者たちは「4部屋モデル」というフレームワークを活用すると、意思決定の間違いを減らせると述べています。会社を4つの部屋があると一つの家だと考え、オーナー、取締役会、経営者、一族全体に4部屋を割り当てます。

取締役会と経営者はオーナーに報告する立場であるため、最初の3つの部屋にオーナーを先頭に一列に並びます。一族の部屋は、メンバーと会社の精神的なつながりを保つために欠かせないものであり、ほかの3つの部屋の横に位置します。これは、一族の影響力と全体の結束力が重要であることを明示しています。

経営がうまくいっているファミリービジネスでは、それぞれの部屋について、誰がそこに所属するか、どの決定がどのようにそこで下されるかを定める明確なルールがある。人々の役割は部屋によって異なる。

たとえば、親族ではないCEOは経営者の部屋を運営できても、オーナーの配当金の使い方を決めることはできません。また、オーナーではない親族は、ほかの部屋に入って決定を下すことはできません。4部屋モデルに基づくガバナンスは、階層と境界を明確にします。

何が重要かを決めるのは、企業の所有者になります。公開企業が四半期の業績にこだわりますが、オーナーは最も自分が価値を置いているものは何かをはっきりさせるべきです。

オーナーは早めの承継を意識しよう!

最も重要なのは、自分が優先する目的に対して、明示的であれ黙示的であれ、どのような選択をしているか理解することだ。それは、あなた自身の基本的価値観に由来するものでなければならない。経済発展や業界再編、規制の変化などの外的要因であっても、あるいは世代交代や家庭争議、経営幹部の異動などの内的要因であっても、状況が変わった場合には、選択を再考する必要がある。

オーナーは自分の目的を明確にし、それを親族や社員に明らかにする必要があります。その上で経営戦略や資本戦略を考えることが重要になります。以下の3つの目的によって、取るべき行動が変わります。

①「成長・支配」を目標とする企業→規模の拡大を重視しながら、意思決定の権限をオーナーに残そうとします。

②「成長・流動性」を目標とする企業→規模の拡大を目指しますがが、オーナーに相当額を支払い、外部からの出資もしくは負債、またはその両方を用いて、エンジン全開で事業を推進し続けます。その結果、支配権を一部手放すことになります。

③「流動性・支配」を目標とする企業→急成長には関心がなく、むしろオーナーのために多額のキャッシュフローを生み出しながら、意思決定権を維持することを望みます。

移譲は一度きりのイベントではなく、プロセスだ。そして継続計画が最後通告ではなく、話し合いに近いものであればあるほど、成功の確率は高まる。

ファミリービジネスを成功させるためには、移譲が鍵を握ります。以下のポイントで移譲を考え、時間をかけて
自分の役割を次の世代に受け渡していきます。

・資産の移譲 同じタイプの所有権を維持するか(単独所有、あるいはパートナーシップなど)、それとも変えるか。

・所有権の移譲 一度にまとめて行うか、少しずつにするか(たとえば、経済的利益を次世代に渡す一方で、過半数の議決権は維持するなど)。税金を最小限に抑えるために、どのような方法(信託、贈与など)を使うか。

・役割の移譲 現リーダーが退くための道筋をどう整えるか。4つの部屋の中から最も有能な後継者を公正に選ぶには、どうすればよいか。バトンをスムーズに渡すにはどうすべきか。

・次世代の育成 

事業継承で問題になるのは、何時スタートするかです。

往々にして、継続計画立案の最大のハードルはスタートを切ることだ。現状の差し迫った懸案事項に直面すると、世代を越えた会話を先送りしたくもなる。関係者の死やアイデンティティばかりが問題になりやすいからだ。そのため、そうした会話をあらかじめ自分の検討課題に組み入れ、その締め切りを設定しておく。オーナーの部屋で話し合ってもよいし、継続計画の専門タスクフォースを設けてもよい。あるいは、取締役会で検討させるのもよいだろう。

オーナーやビジネスを承継する親族がファミリービジファミリービジネスの未来をどう考えるかによって、会社の成長が決まります。多くの利害関係が事業承継には存在しますが、会社を破綻させないためには、多くの労力が必要であることは間違いありません。

死は全てのオーナーに公平に訪れるのですから、早めに対策を練ることが重要です。ファミリービジネスの経営者は早めに事業承継対策を実施すべきですが、この課題を多くの経営者が先送りしています。承継のデッドラインを明らかにし、そこから計画を立案すべきです。優秀な専門家とタスクフォースをつくり、次世代にビジネスを承継できるようにしましょう。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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