スーザン・デイビッドのEA ハーバード流こころのマネジメント

EA(エモーショナルアジリティ)をもつ人には行動力がある。変化が激しく複雑な世界に柔軟に対処している。ストレスの多い状況や挫折に耐える力があり、それでいて熱意や包容力も失わない。人生には困難がつきものだと理解したうえで、価値観に従って行動し、長期的目標を追い求める。もちろん怒りや悲しみといった感情と無縁ではないが(無縁な人などいるだろうか?)、好奇心や自分への思いやり、寛容な精神をもって感情と向き合っている。その場の気持ちに流されず、欠点も含めたありのままの自分を最大の目標へと向かわせているのだ。(スーザン・デイビッド)


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EA(エモーショナルアジリティ)を持とう!

EA(エモーショナルアジリティ)を持つことで、人は変われると心理学者のスーザン・デイビッドは指摘します。多くの優れたリーダーは自分の思考や感情をうまくコントロール術を持ち合わせていますが、それを私たちも習得できるのです。EAによって思いやりの心やGRITが養われ、よりよく生きることができます。

自分の感情の扱い方を知るために、著者のスーザンは日記のパワーに気づきます。日々、日記を書くことが心の支えになり、気持ちを整理できると気づくことで、彼女はトラウマから抜け出せ、ポジティブになれたのです。つらい感情は避けるのではなく、しっかりと向き合うことが大切だと知ることが、彼女が心理学を学ぶスタートラインになったのです。

感情の敏捷性 (EA)とは、いまこの瞬間に身を置き 、自分の目標や価値観に合った生き方をするために行動を変え、また、行動を貫くことを可能にするプロセスを意味する。

スーザンはEA ハーバード流こころのマネジメントの中で、(EA)を身につけるための 「4つのステップ」を紹介しています。

ステップ①向き合う
ウディ・アレンはかつて、成功の80%は「向き合う」ことだと語りました。自分の考えや感情、行動に対して、好奇心と優しさをもって積極的に向き合うようにしましょう。私たちは、考えや感情をいかに扱うべきかを学んではじめて、その先に踏み出すことができるのです。私も日々自分と向き合う時間を朝晩確保しています。特に、朝、日記を書くことで自分を客観視できるようになりました。
ステップ②距離を置く
自分の考えと感情に向き合ったら、次は少し離れて観察し、それらをありのままの姿で受け止めます。距離をおき、冷静になることで、自分が経験している厄介な感情の正体を見きわめ、最適な対処法を探すことができるようになります。一歩離れて広い視野をもつことは、いわば自分を多様な可能性に満ちたチェス盤ととらえるようなものなのです。
ステップ③理由を考えながら歩む
頭のなかの状態を整理して落ち着かせ、考えとそれを抱く自分のあいだに空間をつくれば、自分の価値観や、大きな目標といった本当に大切なことに集中できるようになります。まずは恐怖や苦痛など、非生産的な影響をもたらす感情的要素を自覚し、受け入れ、そこから距離をとるのです。そうすれば考えと感情を、長期的な視点から見た自分の価値観や願望と結びつけ、目的地に到達する新しい方法を見つける力を得られます。目標を明らかにすることで正しい選択をすることができるようになるのです。
ステップ④前進する
小さな工夫の原則:従来の自己啓発論では、自分を変えるには崇高な目標や抜本的な自己変革が欠かせないと説くことが多いのですが、昨今では正反対の見解が有力視されているそうです。すなわち、ちょっとした工夫でも、それが自分の価値観に裏づけられたものなら、人生を大きく左右する可能性があるという見方です。これがとくに当てはまるのは、日々の生活で当たり前になっている決まりごとや習慣に工夫を加える場合です。小さな工夫を毎日積み重ねれば、きわめて大きな影響力となり、卓越した成果をもたらすことができるのです。
シーソーの原則:挑戦と能力のあいだでうまくバランスをとり、自己満足に浸ったり、プレッシャーに押しつぶされたりせずに、喜びと情熱、そして活力をもって挑戦していかなければなりません。下着メーカーのスパンクスを創業したサラ・ブレイクリーは、女性として最も若くして自力で億万長者になった実業家の一人として知られています。そんな彼女は、毎晩夕食のときに父親から、「さて、今日はどんな失敗をしたのか話してごらん」と言われたそうです。その意図は彼女の自信をくじくことではなく、むしろ子どもたちが限界を押し広げられるように、励まそうとしたからです。新しいことや難しいことに挑戦してつまずくのは悪いことでありません。

生涯にわたって挑戦と成長の感覚をもち続けるーそれこそが、EAの究極の目的である。

私たちのうちなる声が感情を乱す原因だった!

私たちは、真実とはかけ離れた物語(嘘)を自分に語ることで、葛藤を抱え、時間を浪費しています。時にはこれがプライベートもダメにします。さらに深刻なのは、こうした物語の世界と、自分が本来目指している世界とのあいだに対立が生じることです。人は平均して1日当たり約1万6000語を口にしますが、内なる声である思考は、さらに数千語もの言葉を生んでいます。心の中のひどいおしゃべりで、自分に対して休みなく批判や分析を浴びせかけてきます。私たちの内なる語り手も先入観にとらわれて混乱しているのかもしれません。あるいは自己正当化や自己欺隔に陥っていることもあります。

私たちは、途絶えることのないおしゃべりの川から浮かび上がる発言を事実として受け止めるが、そのほとんどは評価と判断が混在し、感情によって強化されている。なかには前向きで役立つものもあるが、後ろ向きで役立たないものも多い。いずれにしても、内なる声は中立的であることも、冷静であることもない。

目標を明らかにして、自分に自信を持たない限り、うちなる声に邪魔されます。思考の罠にはまらないように自分をコントロールすべきです。また、内なる語り手は決して黙ってくれないので、心を落ち着ける術を学びましょう。瞑想を習慣にすることで自分の虚の世界から離れるようにするのです。

困難な状況に向き合おう!

人生の満足度を決めるのは何か。生きていくうえで、不安や悲しみ、後悔は避けられない。しかし長年にわたる心理学の研究によれば、そういった経験の数や深刻さよりも、困難な状況に対していかに向き合うかによって人生の満足度は左右される。感情を封じ込め、あるいは思い悩んだあげく、感情に行動が支配されるのを許すのか。それとも好奇心と寛容さをもって、慈悲深く向き合うのか。

自分を苦しめる現実を直視し、次の言葉を投げかけることで感情をコントロールできるとスーザンは述べています。「よしわかった。お前はそこにいる。私はここにいる。だったら話し合おう。私には過去の経験も自分の感情もぜんぶ収められる大きな器がある。だから自分という存在に関することは何でも受け入れられるし、自分の感情のせいで打ちひしがれ、尻込みすることはない」。現実の世界で人生を充実したものにできるかどうかは、自分の欠点や影の部分といかに共存し、そこから学ぶかによって決まります。そして光と影を融和し、学習する道のりの第一歩が、自分の感情と向き合うことなのです。

イギリスの研究者たちが数千人を対象に行った調査によると、充実した人生の鍵となる「幸福を呼ぶ習慣」として科学的に認められているもののうち、総合的な満足感と最も強い相関関係にあるのが自己受容だということがわかっています。しかも、これが最も疎かにされていました。調査の協力者たちは、他人に力を貸すことが得意だと答えていますが、自分自身への寛容さについては、約半数が10点中5点以下だと回答したのです。自己受容について満点をつけた協力者は5%にすぎませんでした。自分に優しくすることをそろそろ私たちも考えたほうがよさそうです。

だが真実と和解をもってしても、世界に完全な秩序をもたらすことはできない。この世界が理想的な場所になることはないだろう。唯一の良策は、受け入れる習慣を身につけることだ。実際には簡単ではないが、目の前にある事実を受け入れないかぎり、自分やまわりの状況は変えられない。受容は変化の必要条件なのだ。現状の世界がそのままであることを許容しなければならない。なぜなら、この世界の現状をコントロールしようという試みをやめたとき、初めて調和が可能になるからだ。嫌いなものは嫌いなままでいい。まずは反目し合うのをやめること。戦いが終われば、変化を起こすことができる。

目の前にある現実と争うのをやめたとき、建設的で実りある努力へと移ることができるのです。著者はクライアントに対して、自分に寛容で優しくなるため、子ども時代を振り返るように助言しているそうです。両親や経済的環境、個性、体質などは自分では選べません。これまでも配られた手札で勝負してきたのだと気づけば、自分に対してもっとあたたかく、寛容な
目を向けられるようになります。私たちはずっと、与えられた状況のなかで最善を尽くしてきたはずです。

次のステップとして、子どものころの自分を思い描いてみましょう。子どものあなたは傷ついていて、大人になった現在のあなたのもとに駆け寄ってきます。あたなはその子をあざ笑い、説明を要求し、自業自得だと責めるでしょうか?きっと動揺しているその子を腕に抱き、慰めるはずです。

自分はもう大人だからといって、同じように優しくしない理由があるだろうか?罪悪感と差恥心を分けて考える苦難の時期であればなおさら、自分を思いやるのは重要だ。恋人と別れたり、失業したり、昇進を逃したりすると、人はすぐに自分を叱り、責め、罰してしまう。頭のなかで「ああすべきだった、こうすべきだった、こうできたのに」「自分はどうしてダメなのか」という言葉がうずを巻き始める。それは卑屈な妖精か何かのように、つきまとって離れない。

離婚経験者を対象とした研究によると、離婚というつらい経験をしたばかりの時期に自分を許せた人は、「自分には魅力が足りなかった」などと自分の「落ち度」を責める人とちがって、9ケ月後には傷が癒えていました。つらい時期に自分の感情と向き合うときは、罪悪感と差恥心を区別しなければなりません。罪悪感とは、自分の失敗や過ちを自覚した結果として生まれる、心の重荷や後悔の感情です。少しも楽しくないが、ほかの感情と同じく、罪悪感にも目的があるのです。罪悪感があるからこそ、私たちは過ちや悪事を繰り返さずにいられます。

罪悪感の欠如は、反社会的人物の最大の特徴の一つだ。罪悪感が過ちと関係しているのに対して、差恥心の性質はまるで異なる。差恥心は嫌悪感とも関係し、個人の存在そのものに意識が向いている。自分を悪いことをした人間ではなく、悪い人間と捉えるのだ。差恥心の強い人が、自分は惨めで価値のない存在だと考えやすいのはそのせいだろう。

差恥心を感じたとしても、それを修正するような行動にはつながりにくいのです。それどころか、差恥心がある人は身構えた反応を示しやすいことがわかっています。非難を逃れ、責任を回避しようとすることで、つまらない結果を引き寄せます。他人に責任を押しつけようとする傾向もあり、対人関係も悪くなります。

自分への思いやりの心を持とう!

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犯罪心理に関する調査によれば、収監中に差恥心をみせた囚人は、罪悪感を示した囚人に比べて再犯率が高かったのです。二つの感情の最大の違いは、自分への思いやりです。たとえ、間違いをおかしても、私たちは過ちを正し、謝罪し、社会に借りを返すことができます。過ちから学ぶ努力をすれば、自分を変えられます。そして、自分への思いやりは、差恥心を防ぐ手段にもなります。「自分を思いやることは、決して甘えではない」とスーザン・デイビッドは指摘します。

自分を思いやるのは、甘えではなく、むしろ自分を第三者の視点から見つめることである。現実を否定するのではなく、自分の挑戦と失敗を人であることの一部として認めるような、俯瞰的で寛容な見方だ。

模擬的な就職面接の調査結果を知ることで優しさの重要性に気づけます。研究者たちが面接を受けに来た相手に自分の最大の弱点を説明するよう求めたところ、自分に対する思いやりが強い人が、そうでない人に比べて短所を小さく見る傾向はありませんでしたが、面接に対して感じる不安や脅威はずっと小さかったのです。実際、自分を思いやることは自分を欺くこととは相容れません。まずは自分がどんな人間で、何を感じているのかという事実に向き合わないかぎり、本当に自分を思いやることはできなません。思いやりが足りないと、失敗の可能性を否定しようとして虚勢を張り、自信過剰に陥りやすくなります。また思いやりがないと、自分に対してだけではなく、世の中に対しても容赦ない目を向けるため、失敗の可能性を考えただけで尻込みしてしまいます。

他者と競争することは避けられませんが、自分に思いやりを持つことでGRITを鍛えられます。小魚の自分が、より大きく生存競争の激しい池で奮闘している事実を直視すれば、思いやりの気持ちが必要だと理解できるはずです。

自分への思いやりは、自己を再定義し、同時に失敗する自由を与えてくれる。また、独創性を発揮するのに欠かせない、リスクをとる余裕も与えてくれる。また、自分への思いやりが競争力を高めることもある。思いやりがあればこそ、健康的な食事、運動、十分な睡眠、厳しい時期のストレス管理にも関心が向かうからだ。自分への思いやりは免疫システムを強化して病気を防ぐ効果まである。さらには社会的なつながりを広げ、物事に前向きに取り組むよう後押ししてくれる。こういった効果はすべて、絶えず前進し、最良の自分でいるために役立つことばかりなのだ。

自分の人生を有意義なものにするには、心のなかに喜びと痛みの両方を受け入れる場所をつくり、居心地の悪い状態であっても不快でないと感じられるようになるしかありません。感情を「良い」「悪い」ではなく、単なる「状態」として捉えるようにしましょう。

私たちの社会には、内面的な葛藤が生じたら何らかの対処をすべきだという根強い思い込みがあります。葛藤と格闘するのは無意味です。意志の力だけではストレスを抱えてしまいます。本当にすべきことは、シンプルで何もしないことなのです。

あわてて出口に駆け寄るのではなく、心のなかの経験を招き入れ、息を吹き込み、その輪郭がどこにあるのか知る必要がある。気が重くなるような感情を排除し、承認や正当化によって抑え込むのをやめると、貴重な教訓が得られる。自己不信や自己批判、怒りや後悔は、あなたが最も見たくない、暗く陰うつな、悪魔が住んでいるかもしれない場所に光を照らす。そこには傷つきやすさや弱さが隠れている。

自分の中の感情と向き合うことで、落とし穴を予期し、危機に備えられるようになります。「もしあなたが内なる感情と外界に向かう行動の選択肢を区別し、その両方に向き合うことができれば、人生はさらに意義深いものになるし、いまよりも毎日を気持ちよく過ごせるようになる」と著者のスーザンは指摘します。自分との対話を重ねることで視点が多様になり、重要な決断をするときに役立ちます。

まとめ

嫌なことが起こった時に無理に感情をコントロールするのはやめましょう。大切なのは、誠実に自分の経験と向き合い、事実を受け入れることです。悲観的な思考の罠に陥らずに、自分に優しく接することです。他者にばかり思いやりの心を持つのではなく、自分自身にも思いやりの心をもちましょう。いったん嫌なことと距離を起き、頭を整理し、客観視するうちにやるべき答えが見つかります。私たちがいまいる場所を理解し、自分が目指す場所を確認することでより良い選択ができるようになります。

参考図書 スーザン・デイビッドのEA ハーバード流こころのマネジメント――予測不能の人生を思い通りに生きる方法

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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