アン・H・ジャンザーの「サブスクリプション・マーケティング」の書評

2012年1月から2016年9月までのサブスクリプション・エコノミーの売上高は、S&P500企業の売上高の9倍、米国小売売上高の4倍の勢いで伸びた。サブスクリプション・エコノミーの成長は著しい。(アン・H・ジャンザー)


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サブスクリプション・エコノミーの時代が到来した!

最近、取引先の経営者からサブスクリプション・モデルの相談をされることが多くなりました。アメリカでは数年前からサブスクリプション・モデルが脚光を浴び、Netflix、アドビやセールス・フォースの成功が話題になっていました。アメリカだけでなく、昨年あたりから、日本のスタートアップ企業もサブスクリプション型ビジネスを次々立ち上げています。既存の企業も参入の検討をスタートし、サブスクリプション・モデルが経営者のキーワードになっています。

アン・H・ジャンザーサブスクリプション・マーケティングで次のように述べています。

あなたの会社がサブスクリプション・エコノミーと無縁でも、競合他社はたぶん、取り組みを始めているだろう。エコノミーといえばサブスクリプション・エコノミーを意味する時代がすぐにやってくるかもしれない。

サブスクリプション・モデルでは離脱率(チャーン)が重要になります。もし、あなたの会社にチャーンが多いなら、それをチャンスだと思いましょう。顧客との関係を改善すれば、売り上げをアップできます。

キャンペーンやカスタマーサクセスを通じて、チャーンを下げることができれば、長期にわたって売り上げと成長にプラスの影響がもたらされます。サブスクリプションのチャーンレートを下げるには、次のような方法があると著者は指摘します。
・顧客の本当のニーズを理解し、対処する。
・適切な客、つまり、あなたの会社が提供するソリューションから最大の価値を引き出すことのできる客を引き寄せる。
契約後も長期にわたってカスタマーエクスペリエンスを高めていく。
顧客と長期的な関係を築いて顧客ロイヤリティを高め、信頼を得る。

伝統的なマーケティングの戦略・手法は、契約をーつとって見込み客を客に変えることに主眼におきますが、この手法はサブスクリプション型ビジネスでは通用しません。サブスクリプション・モデルでは、顧客との長期的関係を築いていくことに注力しています。サブスクライバーは見込み客であり、常に彼らと関わり、育てる必要があるのです。

サブスクリプションサービスを提供し、成功を収めている企業には次の特徴があります。
マーケターは自分が所属する居心地のよい部署にこもるのではなく抜けだして、顧客の全体像を把握することに注力している。
他の部署の人々もマーケティングの手法を採用し、マーケティングメッセージを発信している。

顧客の一人ひとりを理解するには、企業は顧客と長期的な関係を築かなければなりません。そのためには、サブスクリプションサービスを利用してもらう必要があるのです。サブスクリプションというビジネスモデルが顧客と企業の姿を変えています。全ての社員がマーケターのように振る舞い、顧客との関係を改善することが求められているのです。

5年以内に私たちは何も買わなくなり、すべてをサブスクリプションという形で利用するだろう。(ティエン・ツォ)

著者のアンは5年以内にすべてのものにサブスクリプションという選択肢が生まれるはずだと指摘します。企業経営者は今すぐに、サブスクリプション・モデルを取り入れるべきです。

 

アマゾンはサブスクリプションの成功者!

アマゾンはアマゾン・プライムを立ち上げ、サブスクリプションモデルのパワーを活かして売上高を飛躍的に増加させた。

アマゾン・プライムは当初、配送料が無料になるサービスで、リピーターを獲得するためのものでした。アメリカでのプライム会員のコストは、現在年額119ドルで、顧客をつなぎ止めるために、アマゾンは付加価値(コンテンツ、即座の対応、利便性)を提供しています。プライム会員の会費は徐々にアップされ、アマゾンは収益を高めています。
・価値あるコンテンツ
プライム会員は動画、音楽の配信サービスやKindle本、オーディブルを無料で利用できる。
・即座の対応
商品は出荷後2日以内に届く。アマゾン・プライム・ナウを使うと、エリアによっては、2時間で商品を受け取る無料サービスを利用することも可能だ。
利便性
ソファーから離れてパソコンのあるところまで行くのが面倒なときは、スマートフォンでプライム・ナウのアプリを使えばよい。アマゾン・レストランというサービスを利用すると、地元のレストランがタ食を玄関まで届けてくれる。

アマゾンは顧客のニーズを見越して満たす方法を常に求めている。先行出荷受注前に商品を発送するの特許を取得したのもその例だ。この小売業界の巨人から目が離せない。

アマゾンはこれ以外にもアマゾン・プライムだけでなく、顧客がニーズに合わせてプランを決められる定期購入サービスも提供しています。これを利用すると、「サブスクライブ・アンド・セーブ」ストアで最大15%の割引を受けることができます。私もアマゾン定期便で、毎月いくつもの商品を受け取っています。実際、プライム会員の売り上げは他の顧客よりも高くなっていることがわかりました。

コンシューマー・インテリジエンス・リサーチ・パートナーズによると、アメリカのアマゾン・プライム会員は年間、平均1200ドルの買い物をアマゾンでしています。これは非会員顧客の約2倍の額になっています。アマゾンは年次報告書で、アマゾン・プライムがマーケティングツールとして世界中で効果をあげていることを明らかにしているほどです。

アドビの成功を見習え!

2011年10月、アドビは定額制メンバーシップ「クリエイティブ・クラウド」を発表しました。それまでパッケージで販売していたソフトウエアをクラウドベースのサブスクリプション・サービスとして提供することにしたのです。パッケージでの販売もその後1年以上継続されましたが、2013年5月、アドビは、パッケージソフトウエアのアップデートはもう行わないこと、クラウドベースの製品の開発にシフトすることを発表しました。

クリエイティブ・クラウドに開発を集中させることによって、イノベーションがさらに加速するだけでなく、アドビシステムズ社がクリエイティブコミュニティに提供できるイノベーションの種類もさらに拡大することとなります。(アドビのニュースリリース)

この決定は当初、報道機関や投資家の不評を買いました。継続的な課金方式への移行は、長期的成長が見込めるものの、短期的には売り上げが減ることを意味しています。しかし、アドビはさらにマーケティング・クラウド、ドキュメント・クラウドを提供し、ぶれることなくSaaSの拡大を図り、批判を恐れずに行動を続けました。

その結果、アドビの収益は改善し、2018年度の総売上高は90.3億ドルとなり、2017年度の73億ドルから大幅にアップさせたのです。ちなみに2016年度は58億5000万ドルでしたから、この3年で売上は2倍近くになっています。その多くがサブスクリプション・サービスで得られたと言いますから、まさに早めの決断、忍耐とコミットメントによって、アドビは成功を手に入れたのです。

サブスクリプション・モデルは既存のビジネスモデルを脅かすのではなく、サポートし、確固たるものします。企業は既存の売り上げを伸ばし、顧客のロイヤリティを高めることができるのです。

顧客は、サブスクリプションだと買うか買わないかの判断を1度だけすればよいので、「お金を使うときの苦痛」を何度も味わわずに済む。そして、サブスクリプションは多くの人にとって本当に便利なものだ。

顧客をつかまえ、丁寧にコミュニケーションすることで、チャーンを防ぎ、売上の拡大を図れます。サブスクリプション・モデルによって、企業はクロスセルからも果実を得られます。サブスクリプション・モデルによって、企業は顧客との関係を強化するだけでなく、新しい商品を知ってもらえるようになり、そこからも売上アップを狙えるようになります。

まとめ

サブスクリプション・モデルがアメリカでは主流になっています。この5年以内にサブスクリプション・モデルが当たり前になり、ほとんどのものやサービスをサブスクリプション・モデルから購入するようになると言われています。この所有から利用の時代には、商品やサービスの販売よりも、顧客との関係づくりに注力すべきです。

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