いまの世界を作ったのはアイデアであり、未来の世界を作るのはアイデアの力である。だが、雄弁でなければだれもアイデアに耳を傾けてくれない。(カーマイン・ガロ )
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3つのコミュニケーションスキルでプレゼンに勝ち抜こう!
今日はコミュニケーションスキルを高めたい人たちのために、最強の一冊伝え方大全 AI時代に必要なのはIQよりも説得力を紹介します。著者のカーマイン・ガロはあの『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』としても有名です。
本書に数々のコミュニケーションの達人が登場します。シスコのチャック・ロビンスCEOはスピードを重視し、自社技術を活用して生産性を高めています。彼らは自社の「テレプレゼンス」というテレビ会議システムによって、何千キロメートルも離れた顧客との打ち合わせをおこない、出張費を節約しています。シスコの入口ロビーは10カ所ありますが、受付係はひとりだけで、デジタルスクリーン経由で応対します。シスコでは自社製品を使ってさまざまなタスクを自動化し、人員を可能なかぎり削減していますが、これで逆に、対人スキルの価値を高めています。
有名な話ですが、テレビが5000万人に普及するには50年かかりました。フェイスブックは3.5年、アングリーバードはわずか35日でした。シスコはそれゆえ、スピードを重視し、製品開発を急いでいます。シスコでは、伝える力は「実行の潤滑剤」であり、競争力の源泉であるとされています。テクノロジー企業であるシスコは、あらゆるものをデータで計測します。当然、伝える力のスキルアップが幹部に求められています。
シスコでは、社員も管理職も役員も自分のプレゼンを顧客から1点から5点で評価されます。同社のCEOを20年間務めたジョン・チェンバースは、常に4.5点以上を獲得していました。チェンバースがCEOになった1996年、会社の売上は7000万ドルでしたが、チェンバースがシスコのエバンジェリストになった後は、幹部にも五つ星のプレゼンスキルを求めました。その結果、10年後には売上は400億ドルに達していました。彼らはコミュニケーションスキルをアップさせることで、業績を伸ばしたのです。
シスコやグーグル、マイクロソフト、セールスフォース、IBMなどのようにビッグデー夕や人工知能にどっぷりはまっている企業でさえ、話し上手な人がリーダーとして重用されている。伝える力はいたるところで求められているのに、そのスキルを身につけた人材は少ない。だから、古くから伝わる説得の技を身につければ大きな強みとなる。
私たちの世界はイノベーションと繁栄の黄金時代に入っています。過去200年間で、医療も技術も、生活水準もかつてないほど進化しました。
経済学者マット・リドレーは、アイデア同士が交わったために世の中は劇的に変化したと述べています。1800年ごろからイノベーションが起こったのは、アイデアのやり取りがスムーズに行われるようになったからです。歴史学、経済学、英語学、コミュニケーション学を専門とするイリノイ大学シカゴ校ディアドラ・マクロスキー教授は、過去200年間を「大いなる豊かさ」の時代と呼んでいます。この間に、ふつうの人が手にできる財貨やサービスが1万%も拡大したです。 将来的に技術がどういうふうになろうとも、伝える力の価値は上がり続け、説得の力が必要とされるのです。
顧客に考え方を変えてもらうには、ストーリーテリングが効果的なのです。データをどう活用すればお金になるのか、事業を大きくできるのか、成功を大きくできるのかを示せれば、顧客の心をつかみ、行動を変えてもらうことができます。(アビナッシュ・コーシック)
説得の時代に必要なことは、エクセルの図表やグラフではありません。聞き手に身を乗りださせるためには、データ以外のストーリーが必要です。なぜなら、ストーリーには、感情に訴える力があるからです。共感できるストーリーを聞くことで、私たちの脳内で大きな変化が起こります。
著者はアリストテレスの言葉を使いながら、説得力のある話し方を整理しています。
テーマが決まれば議論の方向性が定まり、対話の目標が設定されるわけだが、説得につながる魅力を生むのは第2のステップである。第2のステップでは、論理、信用、感情という3種類のレトリックで議論を支えなければならない。説得するには、まず、議論が論理的でなければならない(ロゴス)。加えて、こちらの人物や信用を勘案し、相手が話を信用してくれなければならない(エートス)。そして、相手と感情的につながれなければならない(パトス)。論理的な証明は重要だが、それは全体の3分の1を占めるにすぎない。エートスやパトスなしに説得はできないのだ。エートスとは、話し手の信用を意味する。
聞き手から、信頼される人は、知恵、徳、善意という3種類の特質を備えています。議論がしっかり組み立てられていれば、知恵を備えていると思ってもらえます。品行方正であると評価されていれば、信頼できるし信用していいと思ってもらえます。聞き手にとっての最善を願っていることが明らかになれば、その人への信頼感が醸成されます。
説得において、パトス、すなわち感情がとても大きな役割を果たすことをアリストテレスは明らかにしてい他のです。プレゼンが一般的になる遥か昔にアリストテレスは、感情がなければどうにもならないと考えていました。
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AI時代のビジネスマンになぜストーリー力が必要なのか?
だれかになにかを売るというのは、夢を売るということなんですよ。自分のストーリーに登場してくれと頼むわけです。(ジェフ・ラルストン)
1963年のマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「私には夢がある」スピーチは、3種類のレトリックすべてをみごとに備えています。現状に対する憤りと明るい未来に対する希望の両面で感情に訴えることで、キング牧師は大きな支持を得たのです。キング牧師は、多くの人の心を動かし、社会的な運動、すなわち公民権運動を巻きおこしたのです。
アリストテレスの時代から、世界はずいぶんと変わりましたが人間の脳はあまり変わっていません。昔、有効だったアリストテレスの技法は今もプレゼンで力を発揮します。
人間は、お互いに感情的なつながりを作ろうとする生き物だ。アイデアがアイデアを生み、いまのような自動化の時代となった。変化の速度がどんどん上がっており、身の回りの世界がみるみる変わっていくのを見て恐れや不安を抱く人も多い。ある種の仕事がごっそり消えたり、まったく新しい仕事が生まれたりするのだ。そのなかで自分はどう戦えばいいのか。どうすれば求められる人材であり続けられるのか。どうすれば活躍できるのか。まずは、仕事に精通することが必要だし、どんどん変わる状況に対応していく柔軟性も必要だ。だが、それだけではいけない。答えは、説得の力、特にパトスにある。
事実のみで人は動かすことはできません。それが、感情ならできるのです。パトスこそが、未来を拓く鍵なのです。
クレアモント大学院大学のポール・ザッ ク博士は、人がだれかにストーリーを語るとき、どの神経化学物質が関与しているのかを研究し、オキシトシン、ドーパミン、コルチゾールなどの効果によってストーリーは人の感情をかき立てることを確認しました。さらに、ストーリーのどの部分が効果的なのかも特定し、「抗しがたいストーリーで感情に訴えると、脳の状態が変わり、信頼や理解、アイデアに前向きとなる」と語っています。
プリンストン大学の神経科学者ウリ・ハッソンは、会話中、脳のどこが活性化するのか、そのパターンを調べ、ある種の会話では、話し手も聞き手も脳の同じ領域で同じような活動パターンが見られる、両者が「神経同期」することを発見しました。このような精神融合が起きるのは、 感動的なストーリーが語られている場合のみだというのです。
ハーバード・ビジネス・レビューには、AIの普及で感情の重要性が下がることはないという研究結果が掲載されています。逆に、自動化の時代にキャリアを全うしたければ感情がとても重要になるというのです。いま、熟練した人ほど収入が多いのは、機械的な作業をすばやくこなす能力が高い、データを評価して方針を定める経験が豊富である、顧客を上手に導けるという3つの能力に秀でているからです。最初のふたつについては、AIと機械学習がすぐにでも人間の上を行ってしまいます。もし、あなたが今後もプロのビジネスマンとしての存在意義を保ちたければ、理解する、やる気にさせる、ほかの人とやりとりするなど、人工知能がまねにくいスキルや能力に着目すべきです。
Yコンビネーターのジェフ・ラルストンは、成功している会社やアントレプレナーは、製品、サービス、ブランドを中心に物語を生みだすと指摘します。
ほかの人の暮らしを変えたいなら、なにかを売りたいなら、自分が作ったものを使ってほしいなら、それがほかの人の物語にどうはまるのかを示さなければなりません。その人が私のストーリーに加わりたいと思うほど魅力的なストーリーを語らなければなりません。変化を生みだし、新しいもの、おもしろいものを作ったわけで、ほかの人にもその物語に加わってほしいわけですから。人間はそうして文明を発達させてきました。みんながひとつになるストーリーを語ることによって。だれかになにかを売るというのは、夢を売るということなんですよ。自分のストーリーに登場してくれと頼むわけです。(ジェフ・ラルストン)
アップル、グーグル、ヴァージン、マイクロソフト、サウスウエスト、スターバックス、ザッボスなど、世界的に称賛されている企業は文化の力で成功しています。また、これらのブランドは、いずれも、リーダーシップの力にも大きく依存しているのです。彼らはコミュニティを醸成し、体験を生みだすことを自分たちの役割だと考えています。人と人をつなぎ、会社を作り、暮らしを変える力を持つのは、人間のエネルギーだとアップルのアンジェラ・アーレンツは語っていいます。偉大なリーダーは、人間のエネルギーを上手に引きだす人なのです。
次の5つ星ホテルのケーススタディを学べば、コミュニケーションの力を理解できるはずです。フォーブス・トラベルガイドで5つ星を得るためには、評価者から800項目の項目をチェックされます。フォーブスの場合、4つ星でも並外れてよいという評価で、サービスも施設も優れています。しかし、5つ星ホテルになるとスタッフの対応レベルがアップします。彼らは宿泊客にほかでは得られない体験を提供しようとします。彼らには思いやりがあり、なにごとにつけ宿泊客を第一に考え、その二ーズを予測します。
フォーブスで5つ星を獲得している世界154軒のひとつが、サウス力ロライナ州キアワ島のサンクチュアリホテルですが、ここの従業員は、どのゲストとも接するたびに心を通い合わせるよう教育されています。
●名前を正しく覚える。
●先にあいさつする。
●ニーズを予想する。
●日々、ストーリーを語る。
サンクチュアリでは、毎日、部門ごとに簡単なミーティングを行います。ここでは宿泊客や行事予定といった連絡のほか、従業員が自分のストーリーを披露します。5つ星サービスとはどういうものであるのかがよくわかるストーリーで、会社のミッションや価値を支えているのです。
たとえば、ゲストのバッテリーが上がってしまったときのストーリーを知れば、このこのホテルのサービスのすごさを理解できます。警備員がブースターケーブルで車の始動を試みましたが、バッテリー交換が必要らしくエンジンはかかりません。レッカー車を待ち、工場で修理してもらうとなると、せっかくの休みが丸1日つぶれてしまうとゲストはイライラを感じていました。それに気づいた警備員は 「自宅の近くに修理工場があります。そこでバッテリーを買ってきて交換しましょう。費用はお部屋に付けておきますよ」と提案したのです。驚くような提案にゲストは大喜びし、その従業員と支配人に宛て、長い礼状を送りました。こういうストーリーを耳にすると、従業員は、自分もゲストのためになにかしようと思い、そういうチャンスを探すようになるのです。
5つ星ホテルの差別化は実は設備や食事ではありません。ゲストは顧客の良い体験を評価し、それを周りの顧客に伝えようとします。ストーリーの力によって、ブランドイメージは強化されるのです。
まとめ
未来の世界を作るのはアイデアの力とそれを伝えるストーリー力です。AIの普及でも感情の重要性が下がらないことがわかっています。もし、あなたが今後もプロのビジネスマンとしての存在意義を保ちたければ、理解する、やる気にさせる、ほかの人とやりとりするなど、人工知能がまねにくいスキルや能力に着目すべきです。人の感情を動かすストーリー力を身につけましょう!
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