AIプラットフォームが変えるマーケティングの未来

AIアシスタントは急速に、消費者の家庭に定着しつつある。アナリストの分析によると、たとえばアマゾンは、AIアシスタント「アレクサ」とやり取りするためのスマートスピーカー「エコー」をすでに約2500万台販売し、この数字は2020年までに2倍以上に増える見通しだ。(ニラジ・ダワル)

AIスピーカーがマーケティングを変える?

アイビー・ビジネススクールのニラジ・ダワルは、AIスピーカーがマーケティングを激変させると予測しています。アマゾンのAIスピーカー「エコー」が急速に普及しています。iOSやアンドロイド(Android)のアプリ経由でアレクサを使用できるようになったデバイスが何百万台も存在することを考えると、アレクサは、実際にはもっと家庭や職場に入り込んでいるはずです。そして、各社のAIスピーカーは、今後マーケティングで活用される機会が増えていくのです。

各社は消費者に選ばれるAIプラットフォームの座をめぐってしのぎを削っており、今後10年間で、企業が顧客にアクセスする方法はAIアシスタントによって様変わりするだろう。AIアシスタントは、顧客が情報、商品、サービスを入手する時の最初のチャネルになり、マーケティングはAIアシスタントの興味を引く戦いへと姿を変えることが予想される。

買い物時の消費者の選択をAIアシスタントがサポートしてくれます。ルーチンで購入する商品は、ちょうど水や電気と同じように、切らすことなく維持できます。

AIプラットフォームとAIアシスタントも同じように、バリューチェーン内の相対的な力関係や、それを支える競争基盤に変化をもたらし、ブランドや小売企業の戦況を一変させることが予測されます。

大半の消費者はプラットフォームを一つだけ利用し、そのプラットフォームのアシスタントが彼らの自宅、自動車、モバイルデバイスに組み込まれると考えられています。プラットフォームは情報の収集と提供を行い、アシスタントが住宅システムや家電、その他の機器のインターフェースとなります。アシスタントは無限の商品・サービスを揃えたショッピングモールの入り口にもなるのです。私もアマゾンアレクサをメインで使うようになり、ここから買い物をすることが増えています。

消費者がプラットフォームを使うほど、プラットフォームは彼らの習慣や好みを学習し、より的確にニーズに応えるようになる。こうして満足度向上の好循環が回り出す。現在のマーケターは、オムニチャネルの顧客体験をつくり出さなければならないという強迫観念に駆られている。しかし、AIプラットフォームが強力なマーケティング媒体、販売・流通チャネル、そしてサービスセンターという役割を一手に引き受けるようになれば、こうした考え方も薄れていくだろう。

今後は、消費者コミュニケーションの重要な場合によっては最も重要な手段として、また消費者の習慣、好み、消費に関するデータの宝庫として、プラットフォームは商品の価格やプロモーション、そして企業と消費者の関係そのものに大きな影響を及ぼすはずです。成功しているブランドを支えてきたのは、質のよさを示して、買い手のロイヤルティを勝ち取る能力でしたが、だがAIプラットフォームの世界のマーケターは、やがて、消費者が信頼できるブランドから信頼できるAIアシスタントへと、忠誠の相手を変えることに気づきます。

その結果として多くのブランドが、消費者との直接的な関係を強化することから離れて、AIプラットフォームでの自社のポジションを最適化することにフォーカスを移していきます。こうした変化は、顧客獲得、顧客満足、顧客維持という3つの領域で、企業に決定的なインパクトを与えます。

■顧客獲得
AIプラットフォームは、商品の価格、特徴、実績、レビュー(信憑性や関連度によって重み付けをしたもの) や、消費者の好み、過去の行動を踏まえて情報を分析します。これからの顧客獲得は、いっそう科学的で、マルチチャネルではなく単一チャネル(つまりプラットフォーム)を狙った作業になっていきます。このような世界では、プラットフォームのアルゴリズムに影響を与えることが勝利のカギになります。

企業にとっては、Alが各消費者に代わって適用する、カスタマイズされた購入条件を理解することが極めて重要になるのです。この情報を得るためにそして、そのプラットフォームの「優先リスト」に入れてもらうために売り手はおそらくプラットフォームに対価を支払わなければならなくなります。これは、ブランドが実店舗で陳列スペースを確保するために支払う手数料のようなものなのです。

 

AIプラットフォームがブランド価値や生産能力を変えてしまう?

我々は、AIプラットフォームで商品の順位付けや提案が行われるようになるのは不可避だと考え、いずれはこれが大きな収入源になると見ている。これらの支払いはいずれも、形は違えど消費者にアクセスするための支出である。企業が現在、宣伝費、掲載料、陳列スペース代、小売手数料として支払っている金額は、今後は基本的にプラットフォームに割り当てられることになるだろう。

ブランドはAIアシスタントに自社の商品を紹介させることを目的として、提供物やイノベーションの戦略を組み立てるようになります。プラットフォームを夕ーゲットとするマーケティングサービスは、従来のメディアバイヤーよりも大きな説明責任を負い、消費者の実際の行動との関連性を示さなければなりません。

■顧客満足
顧客満足はロイヤルティ、クチコミ、市場シェア、ひいては利益性の原動力となります。プラットフォームは、消費者のニーズをたえず予測して、彼らの商品購入をサポートします。そのためには、消費者の購買パターンや商品の使用状況に関する粒度の高いデータを集めて、彼らの買い物の目的を推測する必要があります。今後、AIプラットフォームは、その瞬間に、その人にとって最も好ましい特徴、価格、性能の組み合わせを予測できるようになり、最終的に、AIアシスタントは顧客のニーズを顧客自身よりも的確に満たせるようになるかもしれません。

■顧客維持
マーケターは、繰り返しの購入は顧客の満足度の高さを示し、ブランドへのロイヤルティの証だと考えます。しかし実際には、その商品に満足しているからではなく、それなりの性能を満たしている限りわざわざ他の商品を探すのも面倒だという理由で、同じ商品を購入し続けている顧客も多いのが実態です。

しかし、AIアシスタントは、今後この顧客行動を変えるはずです。AIアシスタントはノートPCであれチューインガムであれ、任意のカテゴリーに含まれるすべてのブランドを定期的に調査して、消費者の二ーズをより満たしそうな新商品を提案することができます。消費者の中には、単純に変化がほしいからという理由で商品を切り替えようとする者もいるかもしれません。その場合、アシスタントはそれを察知して、その人が好みそうな新商品を定期的に提案します。

購買内容が定期的に見直されるようになった場合、既存のブランドは、ポジショニングの正当性を示し続けることを迫られる。一方、これは挑戦者の立場にあるブランドにチャンスを開くことにもなる。既存ブランドが顧客をつなぎ止めるには変革が必要だが、ブランドの乗り替えの阻止に役立つ情報をプラットフォームから購入できるようにもなる。顧客が離脱しそうな兆候(たとえば、顧客が自分のアシスタントに商品を変えたいという希望を伝える)をブランドが把握できれば、顧客維持の測定基準をリアルタイムで計算し、その顧客をつなぎ止める価値があるかどうかを判定することが可能だ。もし価値があるなら、多の顧客を引き止めるために必要な条件を正確に反映したオファーをカスタマイズして、提供することができる。それを顧客が受け入れれば、ブランドと顧客の両方が勝者になる。ブランドは取引を継続できるし、顧客はより好ましい条件を得られるからだ。

AIプラットフォームはブランドと顧客の両者の間に入り、双方に価値をもたらすとともに、プラットフォーム自身も収益を得られるような形で機能します。挑戦者のブランドは、プラットフォームから得られる情報を顧客獲得 に活用することができます。AIアシスタントを通したプロモーションは、新興企業に選ばれる手法になる可能性が高そうです。もちろん、新規参入を果たした挑戦者は、既存ブランドやその他のライバルの脅威にさらされます。変化する顧客の希望条件を満たすオファーをたえず設計していくことが、競争における差別化、そして、その先の顧客維持の秘訣になるでしょう。このことはブランドにとって、よりよい商品の開発と並ぶイノベーションの重点分野になります。

消費者を相手にするすべての企業は、AIプラットフォームによって、自社と顧客との関係を抜本的に変えることを期待できる。消費者の関心がAIアシスタントへと移り、消費者データやAlの予測能力の価値が飛躍的に高まることで、これまで決定的な資産だと思われてきた生産能力やブランドなどは、いまほど中心的な存在ではなくなるだろう。

プッシュ型マーケティング(プラットフォームがある商品を取り上げて宣伝する)の重要性が高まる一方で、プル型マーケティング(消費者が商品を探すように仕向ける)の重要性は低下していきます。ブランド構築戦略では引き続き消費者が夕ーゲットになるが、Alを狙う場合は、試用と反復購入を促すマーケティングがより効果を発揮するでしょう。

消費財メーカーは長らく、生産能力やブランドへの多額の固定投資を理由に規模の経済の最大化を図り、「自社商品をいまよりどれだけ多く販売できるか」という戦略的課題に照準を絞ってきました。しかし、AIプラットフォームは、多様な商品を提供して消費者との関係を最大限に深めるという、まったく異なる機会を提供します。

消費者と、彼らが保有するAIアシスタントとの信頼関係の構築に注ぎ込む投資は、「この買い手は、ほかに何を必要としているか」という問いを通して回収できるようになります。優れたマーケティング戦略は引き続き重要であり、Alの世界が来ようとも、企業は消費者を獲得し、満足させ、維持しなければなりません。ただし、その内容はAIを意識した物に様変わりする可能性が高いのです。デジタル化が進むマーケティングの世界が今後大きく変わっていきます。マーケターは、AIプラットフォームに意識を向ける必要がありそうです。

まとめ

AIアシスタントがプラットフォームになることで、今後のマーケティングは様変わりします。消費者の関心がAIアシスタントへと移り、消費者データやAlの予測能力の価値が飛躍的に高まることで、これまで決定的な資産だと思われてきた生産能力やブランドなどは、いまほど中心的な存在ではなくなるのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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