アンデシュ・ハンセンのスマホ脳の書評


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スマホ脳
著者:アンデシュ・ハンセン
出版社:新潮社

本書の要約

私たちは1日に何時間もスマホに時間を費やすことで、自らの心と体の健康に危害を与えています。多くの人がスマホに時間を奪われ、生産性を下げています。脳をスマホにハックさせないために、運動や睡眠の時間を増やし、スマホの利用時間を減らすようにしましょう。

なぜ、私たちはSNSやスマホにはまってしまうのか?

新しい情報を得るとそれがニュースサイトだろうと、メールやSNSだろうと同じことなのだが脳の報酬システムが、私たちの祖先が新しい場所や環境を見つけたときと同じように作動する。(アンデシュ・ハンセン)

私たちは1日に何時間もスマホに時間を費やすことで、自らの心と体の健康に危害を与えています。多くの人が1日3時間以上スマホに時間を奪われ、生産性を下げています。脳がスマホにハックされることで、集中力を奪われているのです。

このリスクを知っていたスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツは子供たちのデジタル・デバイスの利用を制限していました。ジョブズの家にはデジタルギアがなく、家族との会話が重視されていました。ゲイツが子供にスマホを渡したのは、子供が14歳になった時だったのです。IT業界のトップはスマホの危険性を認識し、自分たちの家族には使わせていなかったのです。

精神科医のアンデシュ・ハンセンは、スマホと脳に関する研究結果から、スマホのリスクを本書で炙り出し、依存症にならないために、使用を控えるべきだと述べています。

私たちの祖先は周囲の環境を理解すればするほど、外的から身を守ことができ、生き延びる可能性を高めてきました。その結果、自然は人間に、新しい情報を探そうとする本能を与えました。私たちの脳は新しいことを学ぶ度に、ドーパミンを放出しています。このドーパミンのおかげで、人間はもっと詳しく学びたいという欲求を得ます。

新しい情報を得ると脳は報酬をもらえるために、人間は新しいもの、未知のものを探しにいきたいという衝動を感じます。私たちの祖先が生存できたのは、食料や資源が常に不足する中で、この欲求によって新たな食べ物を探すために、移動してきたからです。

現代人の脳の機能は基本的に昔と同じままで、新しいものへの欲求が今でも残っています。パソコンやスマホが運んでくる新しい知識や情報への欲求が高まり、パソコンやスマホのページをめくるごとに、脳がドーパミンを放出しています。その結果、私たちはデジタルのスクリーンの虜になり、脳をハックされてしまうのです。

脳の報酬システムは、不確かな結果報酬を与え、ドーパミンを放出することがわかっています。チャットやメールの着信音が鳴ると人はスマホを手に取りたくなりますが、これもドーパミンが影響しています。たいていの場合、着信音が聞こえたときの方が、実際にメールやチャットを読んでいるときよりもドーパミンの量が増えることが明らかになります。

フェイスブック、インスタグラムやスナップチャットはこの人の確かめたいという欲求を使って、ビジネスを行っています。スマホを手に取らせ、何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を起こさせます。その上、報酬システムがいちばん強く煽られている最中に、デジタルな承認欲求を満たしてくれるのです。

あなたの休暇の写真に「いいね」がつくのは、実は、誰かが「親指を立てたマーク」を押した瞬間ではないのだ。フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなごほうびへの期待値を最大限にもできる。SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを、ちゃんとわかっている。時間を問わずスマホを手に取りたくなるような、驚きの瞬間を創造する知識も持っている。

企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇い、そのアプリが極力効果的に脳の報酬システムを直撃し、最大限の依存性を実現するようにしています。私たちの脳は彼らの広告ビジネスの犠牲になっているのです。

スマホやSNSの使用を制限しよう!

製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える──それに気づいたのは後になってからだ。(ジャスティン・ローゼンスタイン)

フェイスブックの「いいね」機能を開発したジャスティン・ローゼンスタインは、自分のフェイスブックの利用時間を制限することに決め、スナップチャットはやめたと言います。SNSの依存性はヘロインに匹敵するから考え、自らの行動を制限したのです。

もともとは生き残り戦略だったはずの脳のメカニズムのせいで、私たちは「いいね!」などのデジタルのごほうびに次々と飛びつきます。スマホが脳をハッキングすることで、私たちは集中力を失い、生産性を下げているのです。

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりもよい結果が出ました。スマホがポケットに入っているだけで集中力が、阻害されてしまうのです。

モニター上に隠された文字を素早くいくつも見つけ出す、そんな集中力を要する課題をさせる実験でも、同じような結果が出ました。被験者の半分は、自分のではないスマホをモニターの横に置き、触ってはいけないことになっていました。残りの半分は、デスクの上に小さなノートを置きました。その結果、ノートを与えられた被験者の方が課題をよく解けていました。自分とはなんの関係のないスマホが、被験者たちの集中力を奪っていたのです。

スマートフォンの存在がわずかにでもあれば、認知能力の容量が減り、脳が弱ってしまうのです。1日に何百回とドーパミンを放出させるスマホに、私たちはついつい注意を払ってしまいます。

集中力が貴重になった現代人ができることは、SNSの時間を減らすことだと著者は言います。

気を散らされる存在が当たり前になると、それが存在しないときでも強い欲求を感じるようになる。現代社会では集中力は貴重品になってしまったのだ。 SNSがストレスを与え、嫉妬させ、フェイクニュースを拡散しているわけだから、「フエイスブックする」時間を減らすのはいい考えだ。

米国で150人近くの大学生に精神状態についての質問に答えてもらいました。学生たちは無作為に2つのグループに分けられ、片方のグループはSNSを普段通り使い続けました。もう片方はフェイスブック、インスタグラム、スナップチャットを1日最大30分、1サービスにつき10分までと制限したのです。

3週間後、利用を30分に減らしたグループは精神状態が改善していました。調査開始時にうつ症状のあった人たちは、以前ほど気分の落ち込みや孤独を感じなくなっていたのです。

16件の研究で合計12万5000人の子供・若者を調査した結果をまとめると、1日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高めていることが明らかになりました。時間が長くなればなるほど、うつになるリスクは高まります。

4万人の子供・若者を調べると、1日7時間以上使用する人はスクリーンタイムの短い人と比べると、うつと不安の症状が倍も多く見られることがわかりました。1日の時間から睡眠や移動、学校、食事の時間を除けば残りは8~9時間しかありません。ティーンエイジャーの5分の1が、基本的に起きている間の自由時間をずっとスクリーンを見つめて過ごしていると言うのです。これがうつを引き起こしているのですから、親は子供にこの事実を伝え、スマホやSNSの時間を減らす努力を始めるべきです。

多くの人がストレスを受け、集中できず、デジタルな情報の洪水に溺れそうになっている今、運動はスマートな対抗策だ。最善の方法と言ってもいいかもしれない。

幸せになりたければ、 私たちはスマホとの距離をもう少しとるべきです。
■身体をよく動かす。
■睡眠をとる
■社会的な関係を作る。
■適度なストレスに自分をさらし、スマホの使用を制限すること。

今でも私たちは狩猟採集民の脳を持っていて、そこらじゅうに危険を探そうとし、すぐにストレスを感じます。気が散り、同時に複数の作業をするのが苦手な私たちが、スマホに翻弄されることで、生産性を下げているのです。心と体を健康にし、幸せな時間を増やすために、スマホの利用を控えましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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