100兆円の巨大市場、激変 プロップテックの衝撃
著者:桜井駿
出版社:日経BP
本書の要約
PropTechという新しいテクノロジーに注目が集まっています。土地や建物(Property)の活用に、ICTやAI、VR/ARなどの最新技術を用いることで、新たなビジネスやサービスが続々と誕生しています。アメリカや中国が先行する中、日本でもベンチャー企業がPropTechに参入し、顧客の利便性を高めています。
PropTechとは何か?
PropTech(プロップテック)とは、Property(土地、建物)×Technology(技術)を掛け合わせた造語である。(桜井駿)
FintechやHealthtechの企業が次々とIPOする中、最近、PropTechのベンチャー・スタートアップに注目が集まっています。土地や建物などの不動産にまつわる財産をテクノロジーで再定義することが、最近のトレンドになっています。
アメリカのOpendoorの上場によって、PropTechの動きが加速しました。同社は個人向けの不動産買取再販事業を展開し、時価総額は1.5兆円を超えています。2014年に設立されたOpendoorはわずか7年足らずで巨大なPropTech企業へと成長を遂げたのです。
アメリカには他にも成長の可能性のあるPropTechのスタートアップが数多く存在しています。巨大な市場でリーダシップを取る可能性がある企業に大量の資金が集まります。リスクを厭わない多くの投資家が、PropTechのベンチャー企業を後押ししています。中国でもPropTechが盛り上がり、アメリカと中国が世界のPropTechを牽引しています。
PropTechはマーケットが以下の様々な領域に影響を及ぼすため、ネクストFintechと呼ばれています。
●Fintech
●ConTech(建設テック)
●CREtech(企業不動産、商業不動産テック)
●スマートシティ
●MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)
最近では、PropTechはLaaSとして捉えられています。LaaSはLife as a ServiceあるいはLife time as a Serviceの略で、PropTechがエンドユーザーの利便性を高めると言われています。
1、プレーヤー型のPropTech
プレーヤー型のPropTechでは、スタートアップ自らがITを活用し、エンドユーザーである個人や法人向けに不動産関連サービスを提供します。垂直統合、ワンストップでデジタル化された事業展開を行います。世界 150都市840拠点以上でフレキシブルオフィスを展開するWeWorkは、プレーヤー型のPropTechの典型です。
2、サポーター型のPropTech
「サポーター型」は、不動産事業者向けにITツールを提供します。不動産事業者などを対象に、業務の効率化をサポートする製品やサービスを提供します。
OpendoorはiBuyerの先駆け
iBuyerとは、Instant Buyerの略で、テクノロジーを用いて住宅価格に即時でオファーを出して買い取る企業を指す。 企業が個人の売り手から直接住宅物件を購入し、最終的にそれらを再販売する形だ。なぜ「インスタント」かと言えば、従来の不動産会社とは異なり、オンライン上でAIや機械学習を用いて不動産の評価を迅速に行い、現金買取を即時に実施するためである。
Opendoorは2017年にEric Wu氏らによって設立されました。Opendoorは、自身の戸建住宅を売却したい個人向けに、オンライン上で物件を査定しスピーディーに買い取りを行う「買い取り再販事業」を展開しています。オンラインで ユーザーから売却のオファーがあった場合、査定結果を24時間以内に無料で提示し、売却までの時間という顧客のペインを減らしています。
同社には、住み替えニーズが発生した際の顧客に対して、不動産取り引きを円滑に提供するという思いがあります。オファーした見積もりが安すぎれば顧客が不利になりますし、高すぎればOpendoorの損失となる可能性が高くなります。両者がWin-Winになるため、査定精度を向上させるために、複数のモデルを活用したアンサンブル学習を採用しています。
「自動評価モデル(AVM)」と「比較市場分析(CMA)」を活用することで、最適なプライスを提示しています。 Opendoorでは膨大な取り引き情報を基に、日々分析モデルを開発し、適正価格のオファーをスピーディに提示しています。
Opendoorは、買い取り価格の約5%をサービス料という名目の手数料で徴収しています。米国における不動産取り引きの手数料は一般的に6%で、それを買い手・売り手のエージェントが折半しています。通常の取り引きにおいては、3%以外にも費用が掛かるため、Opendoorを利用すると顧客は費用を抑えられると言います。
今後も、様々なPropTechが生まれてくることは間違いありません。不動産、金融、建設は、
今回の新型コロナウイルスの感染拡大やPropTechサービスの浸透により、顧客は新たなテクノロジーやサービスを受け入れています。規制やルールの変更、AI、VR、3Dテクノロジーの進展がPropTechを加速させ、顧客のペインを取り除いていきます。
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