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パーパス経営: 30年先の視点から現在を捉える
著者:名和高司
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
日本企業は今こそ経営に「志」を取り戻すべきです。壮大な変革目標であるMTPをつくり、自社の悪癖をなくすことが経営者に求められています。デジタルを活用して、MTPを基軸に新たな経営の仕組みをつくることが日本企業の優先課題です。MTPから逆算して、MX(マネジメント・トランスフォーメーション)を実践しましょう。
パパース経営が企業に必要な理由
今、世界中で、「パーパス経営」が注目されている。持続可能性(サステナビリティ)が地球規模での課題となる中、企業にも改めて「パーパス」が問われている。パーパスは「存在意義」と訳されることが多い。しかし、それはいかにも理屈っぽすぎて、よそよそしい。筆者はあえて、「志」と読み替えている。心の内側から湧き出てくる強い思いであってほしいと願うからだ。(名和高司)
経営コンサルタントの名和高司氏は、資本主義が機能しなくなった現代において、「志」を持つことが重要だと述べています。最近、話題のパーパス経営を「志」の視点から、「志本主義(パーパシズム)」と捉え直すことで、日本企業は復活できると言います。
未来を創造するためには、新SDGs(Sustainability×Digital×Globals)の視点を持つべきです。
■Sustainability→10年後ではなく、より長期的な持続性
■Digitalは→シンギュラリティの到来すら論じられてい時代において、人間としての志が改めて問われています。デジタルディストピア(悪夢)を避けるためには、志を基軸にした社会の確立を目指すべきです。
■Globals→分断された社会を再度結び直すためには、世界に共感を呼び覚ます志の発露が必要。
志本経営の源泉は、カネやモノのような目に見える資産ではなく、「志」という目に見えない資産である。それは、社外の顧客やコミュニティ、社内の経営者や従業員に共有されて初めて価値を生み出す。そのためには、自らの志に磨きをかけ、広く発信して共感を生み出すよう仕組みの確立が不可欠となる。
志本経営を実践している企業には、3つの共通点があると著者は言います
①ワクワク→思わず心が「ワクワク」してくるような崇高な目標を掲げること
②ならでは→自社「ならでは」の価値創出にこだわること、良質な「日本流」を世界に訴求すること
③できる! →大きく一歩踏み出すことで、「できる!」感を醸成すること。高い志を実現する思いを共有できれば、失敗を学習機会として取り込みながら、スケールとスピードを高め続けられます。
トランスフォーメーション(変革)の本質は、既存のものを破壊することではなく、転換することにあります。極端なデジタルディスラプションに走るのではなく、過去の資産をリミックスし、リノベートすることで日本企業を再生できます。その際、MTP(Massive Transformation Purpose、野心的な変革目標)が重要な鍵になります。
シンギュラリティ大学のサリム・イスマイルはMTPによって、企業は持続的に成長できるようになると説きます。1、MTP(Massive Transformation Purpose、野心的な変革目標)
最も重要な特徴がMTPで、企業の目標を明確にすることで、前向きな変化に駆り立てられます。
■目標がある
■豊富な資源と結びついている
■大規模
■変化を起こす
■世の中の様子を描いている
■簡潔
■人の心を動かす
■野心的
■有益
2、SCALE
S(Staff on Demand):オンデマンド型の人材調達
C(Community & Crowd):コミュニティとクラウド
A(Algorithms):アルゴリズム
L(Leveraged assets):外部資産の活用
E(Engagement):エンゲージメント(社会的関心)
SCALEとう外側に向けた特徴を実践すれば、企業は世界中な豊富な資源にアクセスできます。
3、IDEAS
I(Interface):インターフェース
D(Dashboard):ダッシュボード
E(Experimentation):実験
A(Autonomy):自立型組織
S(Social Technologies):ソーシャル技術
IDEASという内側に向けた特徴を実践すれば、企業は豊富な資源をマネージメントできるようになります。
MTPを基軸にMXを実践する!
MTPは組織の核となるもので、組織の目標を示しています。飛躍型企業が過去に発表した意見表明報告書を見ると、当時からすれば荒唐無稽とも思えるような設立理念が書かれています。これがMTPです。一度大きく成長できたとしても、ビジネスモデルはすぐに陳腐化するから、常に大きな目標を持つようにすることが大切なのです。 (サリム・イスマイル)
企業はパーパス(MTP)を持つことで、「We」から発想できるようになります。「Me」でも「You」でも「They」でもなく「We」になることで、自らの思いと社会の思いをつなげられます。パーパスをミッション・ビジョン・バリューの上位概念に置き、MTPから経営を捉え直すことが、経営改革の第一歩になります。
サリム・イスマイルは、企業の原点と未来をいかに「つなぐ」かが重要だと述べています。
MTPは『今やっていること』ではなく、『これから達成しようと志していること』です。そして、組織の中の人々だけでなく、外部の人々の心や想像力、野心を搔き立てるものでもあるのです。
資本主義が破綻した今こそ、日本の原点に立ち返って、志からMTPをつくるべきです。Whyは「本来」と「将来」を結ぶ力であり、志本経営の原動力となると信じ、壮大な「志」を設定しましょう。
企業の生産性は、インプット(入力)とアウトプット(出力)の差として現れます。投入した資産に対して、どれだけ高いアウトプットを出せるかが、オペレーショナルエクセレンス、すなわち現場力の差になります。しかし、アウトプットだけでは問題解決や価値創造は実現しません。重要なのは、アウトプット(出力)ではなく、アウトカム(成果)であると意識を変える必要があります。アウトプットだけでなく、アウトカムをWhatの対象とすることで、社員の行動が変わります。
名和氏はパーパス志向とプロセス志向の両立を図るべきだと言います。
志(Why)は成功の必要条件である。しかし、十分条件ではない。問題解決や価値創造の果実としてのアウトカム(What)、そして、そのようなアウトカムを生み出す仕組み(How)がなければ、志だけの経営は早晩挫折する。パーパス志向(Why)かプロセス志向(How)かという二者択一の問いは愚問だ。志本経営を持続させ、進化させ続けるためには、その両者が不可欠なのである。
MTPを基軸に「ワクワク」「ならでは」「できる!」の三拍子を揃え、MTPをお飾りにせずに、社員一人ひとりの信念にすべきです。
MTPが高ければ高いほど、現状とのギャップが明確になります。そのギャップを埋めるためには、桁違いのアウトカム(What)を達成しなければなりません。そのためには、経営者だけでなく、社員一人ひとりの自己変革が不可欠になります。
MTPから逆算して、MX(マネジメント・トランスフォーメーション)を実践しましょう。理想と現実のギャップを明らかにし、自社の悪癖をあぶり出し、克服することで、日本企業は復活を果たせます。壮大な変革目標であるMTPをつくり、できない理由を認めない強い姿勢が、経営者に求められています。デジタルを活用して、MTPから新たな経営の仕組みをつくることが日本の優先課題です。DXではなく、MXにフォーカスする理由がここにあります。
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