BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還るの書評


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BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る
著者:ボストン・コンサルティング・グループ
出版社:日本経済新聞出版 

本書の要約

BCGは今後10年、成長したければ、パーパスを重視すべきだと言います。BCGではパーパスを「我々は何者か」と「世界のニーズは何か」が重なる領域だと定義します。パーパスから戦略・組織・人材を組み合わせ、パーパスドリブンカンパニーになることで勝ち組になれるのです。

パーパスはなぜ重要なのか?

構造変化の中で、企業が次の10年の勝者となるには、経営の根幹である企業目標、戦略、組織、人材マネジメントのすべてにおいて大きな進化を遂げることが不可欠である。変化の波は大きく、経営者が従来の企業経営の常識の中で対症療法を繰り返しても、すぐに次の波動への対応を求められ、企業は疲弊するばかりだ。経営の軸を定め、その根幹を進化させた企業のみが、目指す方向への歩みを速め、2020年代の勝者として存在し続けられる。(ボストン コンサルティング グループ )

大きな時代のうねりの中で、企業を2020年代の勝者へと導いていくために、今、日本企業の経営者は何を考えていけばよいのでしょうか?

経営者は、常に「なぜ?」「何を?」「どのように?」を考察し、具体的なアクションとして示すことが求められています。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、今、経営者に重要なことは「なぜ?」を自問し、それを追求していくことだと指摘します。

「なぜ?」は深い洞察を通じて経営者に骨太の軸を生み。その一方で、「何を?」「どのように?」は、この軸に基づき、経営者が状況に応じて柔軟に発展させていく問いなのです。このブログでも何度もパーパスの重要性を紹介していますが、経営者はまずMTP(壮大な野望)を設定すべきだと私は考えています。

BCGとグループのブライトハウスでは、パーパスを「我々は何者か」と「世界のニーズは何か」が重なる領域と定義し、経営者はこのパーパスに基づき、企業を経営すべきだと言います。

経営者がパーパスから戦略・組織・人材を組み合わせ、パーパスドリブンカンパニーになることで次の10年の勝ち組になれるのです。

アメリカの経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルでは、従来の株主資本主義を否定し、ステークホルダー重視へ移行する流れをスタートしています。彼らは「企業のパーパス(存在意義)に関する声明」において、企業間で共有する根源的な義務として、以下の5つをあげています。
■顧客への価値提供
■従業員への投資
■取引先との公正かつ倫理的な関係
■コミュニティの支援
■株主への長期的な価値創出
これらの視点を軸に、すべてのステークホルダーに対する価値を提供していかなければ、企業は生き残れなくなっています。

パーパスこそが最も重要なことである理由

パーパスは「製品をつくり・売る、サービスを提供することを超えて、わが社は、なぜ社会で存在する価値があるのか」「もしわが社が消滅したら、世界はかけがえのない何を失ってしまうのか」といった企業固有の存在意義を包含する。

パーパスをつくるために、経営者は以下の質問に答えなければなりません。
①我々は何者か?
創業からの歴史や培ってきた独自の組織能力を深く考察したうえで、各社の根源的かつ独自の強みを突き詰めていきます。その中では、競争優位性や価値の源泉となる「強み」を明確化すべきであり、さらにその企業に属する人々が有する固有の価値観、信念、アスピレーション(想い)、カルチャーなどの内的な側面も考察します。  

②「世界が求めているニーズは何か?
社会・ヒューマニティの観点でのニーズ、経済的なニーズも含めて、その企業が充足すべき世界のニーズを考察します。株主価値などの経済的価値も包含する一方、より広いステークホルダーに対する提供価値を、ESG(Environment, Social, Governance:環境・社会・ガバナンス)や、国連が示したSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)も考慮しながら考察してきます。  

この2つの視点、すなわち「我々は何者か」と「世界が求めているニーズは何か」が交差する領域が、その企業が社会のニーズに対して独自の強みを活かして存在意義を発揮するパーパスなのです。

 

パーパスとビジョン、ミッションの違いをBCGは以下のように整理します。
●パーパス=Why(存在意義)
●ビジョン=Where(目指す状態)
●ミッション=What(その実現に向けた道筋)
パーパスはビジョン・ミッションより上に位置する最上位の概念になります。

パーパスを通じて自社ならではの存在意義や提供価値を明確化し、それらを経営の仕組みへ埋め込み、そのパーパスを体現することで、これらの各ステークホルダーにとって「良い会社」になることができる。それにより、その対価としての業績向上、持続的な成長や経営基盤の確立などが可能になり、結果的に企業経営者や取締役会などの経営トップ層にとっても「良い会社」となる

さまざまなステークホルダーにとって、パーパスが「良い会社」となることの基軸になります。
●顧客にとっての良い会社
顧客の顕在・潜在のニーズや期待を的確に捉えたうえで、他では得られない商品・サービスや顧客体験を提供することで、共感し信頼できる「良い会社」と見なされます。これらは自社の存在意義そのものであり、パーパスを定義づける2つの質問を通じて定義することにより、独自性の高い価値すなわちバリュープロ ポジション(価値提案)が明確になっていきます。

●従業員にとっての良い会社
報酬や成長の機会を得るという意義も大きいですが、企業や自らの職務の社会的意義を感じることによって、働くうえでのモチベーションが高められることも重要な条件になります。この観点においてパーパスは、企業の存在意義を個々人の働く意義につなげて議論し伝えることで、他の企業・組織では感じることのできない貴重な働きがいの再発見に貢献します。

●取引先にとっての良い会社
当該企業が自社の利益や株主還元のみに閉じず、取引先との価値共有(共感)やWinーWinの持続的取引関係が実現できる点が重要となります。パーパスの重要な性質の一つにステークホルダー主義や持続的な価値創出があることからも、適切なパーパスの設定とその発信を行えば、取引先との目指すゴールの共有を確固たるものにし、持続的な共存関係を築く礎となります。

●社会にとって良い会社
サステナビリティなどの社会の要請と調和した姿勢を示すことが、21世紀のスタンダードに沿った「良い会社」として重要なポイントのなります。パーパスは自らの独自の提供価値をESGやSDGsとも絡めて検討することから、この社会との調和を直接的に示すことが可能になります。

●投資家にとっての良い会社
株主価値向上が求められることは明確ですが、短期的な利益創出のみに集中せず、社会や多様なステークホルダーと調和した、中長期の持続的な価値創出モデルが一層重要となっています。

■パーパスを策定するための7つのパターン
①経営戦略・事業戦略の大きな方針転換
経営戦略や事業戦略を変更する際には、自らが有する独自の強みや価値観に立ち還り、今日的な社会・顧客のニーズも踏まえたうえでパーパスを定めると良いでしょう。

②SDGs/ESGの本業への本格的な組み込み
本業を通じて社会的課題を解決し、成長や企業価値向上と融合させていく発想が企業には求められます。

③企業統合やジョイント・ベンチャー設立などのM&Aに関わる場面
複数の企業を統合した場合には、最上位レベルでの企業の存在意義を再定義する必要があります。

④危機時
倒産リスクが高まるなどの危機を迎えた際には、ビジネスの再構築や従業員の誇りを高めていくことが欠かせません。自らの組織の存在意義に立ち還り、自分たちでしか社会に提供できない価値は何かを突き詰めることにより、再生への光明を見出すヒントが見えてきます。

⑤社員のエンゲージメントの急低下時
パーパスは顧客や社会に対する存在意義に加えて、従業員にとっての意義を再定義するうえでも有効です。

⑥新たなCEOの就任時
今後の経営方針を策定したり組織を束ねたりしていくために、役員や従業員を広く巻き込みながらパーパスを検討することで、過去・将来を俯瞰し、企業全体のベクトルを再確認するというニーズが存在します。

⑦創立後10周年・50周年・100周年などの節目
創業からの過去の軌跡を振り返り、成果をあげた歴史を称えるとともに、次の10年・50年・100年に向けて、どのような顧客・社会のニーズに、どのような独自の価値を提供し、存在意義を高めていくかがテーマとなり、パーパスの議論が効果的なタイミングとなります。

経営者がパーパス、ビジョン、ミッションを明らかにすることで、経営の軸を見出せるようになります。その軸で企業を力強く牽引することで組織が強くなり、次の10年で勝ち組の仲間入りができるようになるはずです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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