パーパスドリブン経営によって企業が得られる4つのメリット


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BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る
著者:ボストン・コンサルティング・グループ
出版社:日本経済新聞出版

本書の要約

パーパスドリブンな経営を実践することで、事業を再構築し、イノベーションを起こせるようになります。製品・サービス開発、チャネル、コミュニケーションの各過程で、パーパスに立ち返り顧客に寄り添うことで、購買との関係を強化でき、圧倒的なブランド価値も生み出せます。

パーパス策定の4つのステップ

パーパスを独立で扱うことなく、あらゆる企業活動と整合させ、パーパスを基軸とした企業改革、すなわち「パーパス・ドリブン・トランスフォーメーション」まで昇華させることが、パーパスの真の活用に向けての要諦となる。(ボストン・コンサルティング・グループ)

BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る書評を続けます。BCGは今後10年、成長したければ、パーパスを重視すべきだと言います。BCGではパーパスを「我々は何者か」と「世界のニーズは何か」が重なる領域だと定義します。パーパスから戦略・組織・人材を組み合わせ、パーパスドリブンカンパニーになることで勝ち組になれるのです。

企業は以下の4つのステップを踏むことで、自社のパーパスを策定できるようになります。
①Discover(発見)
パーパスを定義する2つの視点のうち、「我々は何者か」について深く考察を加えていきます。自社の歴史を振り返り、既存の企業理念やミッション、ビジョン、バリューを深く理解し、さらに企業の価値観・カルチャーまで踏み込んで、独自の強みや想いを探索していきます。  

パーパスの仮説を立てた後に、経営陣や従業員の想いをインタビューやワークショップで掘り下げていきます。「我々は何者か」の検討結果を「パーパス・プリンシプル」にまとめることで、自社の強みを言語化できます。

次に「世界が求めているニーズは何か」を探求します。ここでは社外からの視点がより重要になるため、外部の多様な専門家に協力をあおぎ、既存のビジネス領域に加えてまったく想像もしなかった社会的ニーズの視点も広げていきます。最近ではSDGsの専門家をチームに取り入れることで、社会的な課題を解決することをパーパスに盛り込む企業も増えています。SDGsやESGを意識することで、古い企業が社会的インパクトを生み出せるようになります。

②Articulate (明確化)
パーパス・ステートメントの背景をストーリーとして語る「ナラティブ」で、パーパスをわかりやすく語れるようになります。パーパスの位置付けや意義を整理したうえで、全体の構造・関係性を図や文章でわかりやすく示し、丁寧に伝えることが必要になります。 

③Activate(活性化)
定義されたパーパスを組織全体に対して発信し浸透させていきます。まず、経営をリードする役員や部長などに発信し、彼らをエバンジェリストに仕立て、社内に広げていきます。パーパスの重要性をしっかりと理解してもらうために、体験型のワークショップを取り入れことで、パーパスを自分ごと化できるようになります。

④Embed(埋め込み)
すばらしいパーパスが定義され、社内に認知が広まったとしても、それらが経営判断、業務機能、行動などと整合しなければ、最終的な社会・顧客への独自の価値創出、すなわち存在意義を実現できません。

パーパスを独立で扱うことなく、あらゆる企業活動と整合させ、パーパスを基軸とした企業改革、すなわち「パーパス・ドリブン・トランスフォーメーション」まで昇華させることが、重要になります。パーパスを絵に描いた餅にしないよう、社内への浸透をはかりましょう。

パーパスを通じた変革のポイント

パーパスは、その定義において「世界が求めているニーズは何か」を自らに問いかけるという特質から、SDGsやESG重視という動向に象徴される企業の社会的インパクトと密接に連関する。

パーパスによって、社会的インパクト経営を具体化できるようになります。
①定めたパーパスに基づいた、社会に価値を提供する領域の特定。
解決すべき課題を社会的インパクトの大きさと長期的なビジネスインパクトとの連関で評価し、優先度を設定し、社会的インパクト経営のビジョンや重点領域を策定します。

②重要イニシアチブの具体化
「社会的インパクトの視点からの事業活動の再設計」と「社会的インパクトを通じたイノベーション」の2つの視点から、社会的インパクト経営を実践します。社会的インパクト経営においては、製品・サービスそのもの、およびライフサイクル全体がもたらす社会的インパクトを最大化することを目指します。

それらの事業活動が中長期にビジネスインパクトとして効果を発揮し、社会的価値と経済的価値が両立するシナリオも構築していくようにします。ビジネスインパクトの切り口としては、従来カバーしきれていなかった貧困層、マイノリティなどでの市場拡大、社会的意義にプレミアムを払う顧客向けのプライシング、サプライチェーンでのリスク低減、コスト削減などが挙げられます。

また、パーパスはイノベーションにもよい影響を与えます。消費者向け製品・サービスにおいて、倫理観を前面に押し出したブランドで事業の成長を後押ししたり、シェアリングを活用した新規事業によって環境負荷低減と成長を実現するなど、社会的インパクトを意識することで、事業機会を拡大し、イノベーションを起こせるようになるのです。

③社会インパクトを実現するための体制整備
まず、意思決定のべースとなる指標を設定します。自社が目指す社会的インパクトを測る指標、その結果としてのプライシング、市場・事業拡大、生産性などの経済的パフォーマンスを測る指標の双方を定めてモニタリングと施策の改善サイクルを回すようにします。

取締役会も含む経営トップ層において、社会的インパクトを重要アジェンダとして据え、意思決定の視点を変えていかなければ、短期の経済的パフォーマンス中心の意思決定の枠から逃れることはできません。社会的インパクト経営を実践したければ、経営者の頭の中を変えなければなりません、

パーパスドリブンの経営を行うことは、ビジネス戦略を再構築につながります。

パーパスは独自性のある強みと顧客・社会のニーズが交差する領域で定義されるが、ビジネス戦略の言葉で言い換えれば、競争優位性が高く、需要の高い提供価値、すなわち「バリュープロポジション」になり、全社経営戦略・個別事業戦略の立案における中核の一つとなる。全社戦略においては、事業ポートフォリオとしてどの事業を伸ばし、どの事業を維持ないし は縮退させるかというメリハリが必要となるが、パーパスが正しく定められていればポートフォリオの判断軸として有効に機能する。

パーパスを基点として自社の存在意義を定義したうえで 競争優位性の高い特定の強みを築いていなければ、パートナーからも評価されませんし、顧客にも支持されません。パーパスドリブンの経営を行わなければ、やがて社会における存在意義を失ってしまうのです。

事業ポートフォリオ戦略において、パーパスは「あればべ夕ー」ではなく、もはや「なくてはならないマスト」になりつつあるのです。

個別事業戦略の立案においてもパーパスを重要な指針とすべきです。パーパスが示すバリュープロポジションは、既存事業においては、その価値を最も必要とするターゲットセグメントの特定・絞り込みにも寄与します。より生産性が高い形で顧客に独自の価値を提供し、結果として顧客満足や対価としての収益性も高まっていくという好循環の起点になるのです。

自らの独自性を突き詰めた結果として、持続的な競争優位性の維持も容易になります。 新規事業やイノベーションにおいても、パーパスは大いに力を発揮します。パーパスドリブン経営によって、企業は4つのメリットを享受できます。

①対象マーケットの拡大
パーパスは個別の製品・サービスを超えた普遍的な存在意義を示すものであり、価値の適用範囲を広げる際にも役立ちます。自らの存在意義は、従来のターゲット顧客層にとらわれることなく広げることが可能になります。

②新製品・サービスによるニーズの深掘り
自らの存在意義から製品・サービスを定義し、顧客の課題を解決する新たな価値をラインナップに入れるようにすべきです。

③イノベーション
パーパスにおいて共通項を持つ異業種と提携すれば、新たなビジネスが生まれるようになります。ベンチャー・スタアートアップと組むことでイノベーションを起こせます。

④顧客や株主とのエンゲージメント・建設的な目的を持った対話
パーパスを企業経営の中核に据えて、独自の競争優位性や提供価値を維持・向上する持続的な成長ストーリーを構築していることは、投資家からもポジティブな評価を受けられるようになります。

パーパスドリブン経営によって、ブランド・顧客体験価値を一気通貫で再設計できるようになります。パーパスを基点としたブランド・顧客体験価値向上において、検討プロセス上で非常に重要なのが、顧客目線を徹底追求したカスタマージャーニーの掘り下げになります。

顧客の行動・思考・価値観などに着目し、製品・サービスを認知する前から始まり、認知・検討・購買・購買後などの一気通貫での顧客体験を、行動観察やインタビューなどで深く分析するカスタマージャーニー分析によって、誰のどんな顕在・潜在ニーズがどのような場面で生じているかをつぶさに洗い出せるようになります。

パーパスやブランドを活かした価値提供ができうるかを特定することで、目指す理想の顧客体験を定義づけるうえでの鍵となります。この分析では決して「売りたい」・「儲けたい」から入ってはいけません。徹底的に顧客志向を貫き、自らが独自に提供可能な「価値」に着目することが、顧客体験価値の向上につながり、かつ、最終的な持続的成長につながっていきます。

「顧客は何に困っているか、何を求めているか」から発想し、顧客体験の質を高めるために、製品・サービスをどう向上させればよいかを発想することで、組織は強くなり、顧客から支持されるようになります。

製品・サービス開発、チャネル、コミュニケーションの各過程で、パーパスに立ち返り顧客に寄り添うことで、購買との関係を強化でき、圧倒的なブランド価値を生み出せるようになるのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
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