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2030年を生き抜く会社のSDGs
次原悦子/サニーサイドアップグループ
青春出版社
本書の要約
SDGsも含めて社会変革を促すようなアクションは、一企業の活動だけで実現できるものではありません。多くの企業が小さな一歩を踏み出すことで、世の中をより良い方向に動かせます。企業はSDGsを実践する際に、他者にそれを伝えることを忘れないようにしましょう。PRを行うことでその輪を広げられるようになります。
SGDsの小さな一歩を踏み出そう!
SDGsで大切なのは意識し続けること。そして啓発によって気づきを与え続けること。SDGsを意識することが、取り組む企業にとっても、その企業の商品やサービスを使う消費者にとっても、「当たり前の状態」でなければなりません。当たり前の状態とは、SDGsの「S」、サステナブル(持続可能)な状態ということでもあります。
SDGsは、年間12兆ドルの経済効果と3億8000万人の雇用を生むと言われています。SDGsにビジネスチャンスがあるだけでなく、経営にサスティナブルな要素を取りれないと顧客や取引先から支持されなくなります。最近では、SX(サスティナブル・トランスフォーメーション)がキーワードになっています。
私のクライアントでもSDGsを意識する経営者が増えています。SGDsを実践するだけでなく、周りに伝えなければ、顧客から評価を得られなくなっています。PR会社のサニーサイドアップグループは、世の中にその輪を広げるためにしっかりとPRすべきだと言います。
中小企業でも大上段に構えずに、自分のやれることからスタートすべきです。「今日できることを一つ、まずやってみる」と決め、SDGsの17項目の一つを経営に取り入れてみましょう。
世界を変える発明やイノベーションも、目を見張るような現場のカイゼンも、気の利いた新サービスも、すべては小さな気付きを最初の一歩に変える『50センチ革命』から始まる。(未来の教室とEdTech研究会)
どんな大変革も、小さな一歩の積み重ねによって起こります。まずは、自分の周囲の50センチの課題を意識し、そこからSDGsをスタートしましょう。世界の人々が、自分の周りの50センチで行動を同時に起こせば、世の中が良い方向に動き始めるはずです。SGDsもソーシャルアクションも、今日できることからスタートし、それを継続することが大事なのです。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの理想的な取り組み。
2017年、アメリカの金融会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、「ジェンダー・ダイバーシティ・インデックス」という投資ファンドを立ち上げました。これは、女性を幹部に起用している割合が高い米国企業を組み合わせたファンドです。
同社はこのファンドのプロモーションを立体的に展開しました。 ニューヨークの金融街・ウォール街には「チャージング・ブル」という名の巨大な雄牛の銅像が立っています。このチャージング・ブルはウォール街の象徴となっています。
そこに同社は「Fearless girl(恐れを知らぬ少女)」という「少女像」を設置しました。少女は腰に手を当てて、雄牛を睨みつけるたけだけような格好で立っています。「猛々しい男性幹部たちを象徴する雄牛に対して、凛々しく立ち向かつ少女」は、ジェンダーバイアスに対抗する意志を表現しています。
この銅像は2017年3月8日(国際女性デー)の日に設置され、かなり話題になりました。私もニューヨークタイムズの記事を読んだことを思い出しました。このプロモーションが評価され、同社は世界三大広告賞の一つ、フランスの「カンヌライオンズ」で、「グラス(ジェンダー)」「PR」「アウトドア広告」の3部門でグランプリを獲得しました。
Fearless girlは声高に「女性幹部を増やそう!」とメディアで叫ぶのではなく、少女の銅像と金融業界のシンボルを戦わせるストーリーで、同社の主張を世界中に行き渡らせることに成功します。
大手メディアだけでなく、当時、そこを訪れた多くの人が記念に写真を撮り、SNSに投稿しました。結果、Fearless girlの主張は拡散されていったのです。「ウォール街の雄牛に対峙する少女」の写真たった1枚で、同社のメッセージは世界に拡散していきました。通常のニュースリーリースだけでは、ここまでの効果は得られなかったはずです。
実はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは世界第3位の資産運用会社で、以前から取締役会に女性が一人もいない企業の取締役選任議案に反対票を投じていました。各国の政府や機関投資家向けに約3.12兆ドル(2020年3月時点)もの資金を運用しているからこそ、できることだったのです。
Fearless girlのキャンペーンからわずか1年半で、同社が投資する企業のうち300社以上が取締役に女性を登用したと言います。この商品とキャンペーンによって、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しょう」は大きく進展しました。
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