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マッキンゼー ネクスト・ノーマル―アフターコロナの勝者の条件
小松原正浩,住川武人,山科拓也
東洋経済新報社
本書の要約
「リモートワークとバーチャル上での交流の定着」「電子商取引と電子取引(デジタルトランザクション)の拡大」「オートメーション(自動化)とAI(人工知能)の導入」というアフターコロナ時代の3つのトレンドが、労働者の業務を長期的に大きく変えていきますが、経営者はそのための準備を今すぐに行うべきです。
アフターコロナ時代の3つのトレンドが、従業員の働き方を大きく変える?
新型コロナは、消費者とビジネスにおける3つの変化を加速させた。その3つの変化とは、「リモートワークとバーチャル空間での交流の定着」「EC(電子商取引)と電子取引(デジタルトランザクション)の拡大」「オートメーション(自動化)とAI(人工知能)の導入」である。(小松原正浩,住川武人,山科拓也)
マッキンゼー ネクスト・ノーマル―アフターコロナの勝者の条件の書評を続けます。新型コロナが私たちの働き方だけでなく、消費者の行動も大きく変えました。DXの導入が遅れていた日本でも、Zoom会議が普及し、デリバリーやオンラインショッピングが当たり前になりました。
新型コロナが労働市場に与えた最大の影響は、リモートで働く人たちを大幅に増加させたことです。テレビ会議、ドキュメント共有ツール、クラウドコンピューティングといった、新しいデジタルソリューションの迅速な導入が、感染拡大時のリモートワーク推進を後押ししました。ZoomやSlackがない仕事などは、もはや考えられなくなっています。
私たちは柔軟に働けるようになるだけでなく、ビジネスの生産性も明らかになりました。新型コロナが終息しても、リモートワークを継続した方がよいと考える経営者や従業員も増えています。
マッキンゼーは、生産性を損なわない範囲で、先進国の労働者の約20~25%が週3~5日間まで、リモートワークを拡大できると指摘します。この数字は、新型コロナ以前と比較すると、リモートワークを行う人は4~5倍にもなっています。
この変化は、都市部のオフィスや住宅の需給に大きな影響を与え始めています。私がアドバイザーをしているベンチャーでは、リモートワークの増加に伴い、オフィススペースを削減しています。一方、都心のオフィス家賃が安くなる中で、働きやすいオフィスを作り、従業員のコミュニケーションを高め、会社を強くしたいと考える経営者もいます。
アフターコロナ時代に勝利するためには、それぞれの企業において答えは異なります。経営者は自社の状況に応じて、正しい選択をすべきです。
出張に関しては、需要回復が起きにくく、約20%の出張は戻らないとマッキンゼーは考えています。出張の減少は航空・空港、ホスピタリティ、飲食サービス業界に深刻な打撃を与えるはずです。
新型コロナの感染拡大中、多くの消費者が、ECやアプリで注文された食料品の配達など、オンラインコマースの利便性を体感しました。2020年には、小売販売における電子取引のシェアは、新型コロナ以前の2~5倍に拡大、小売販売全体におけるシェアは数倍に拡大しています。このデジタル取引への移行は、配達、輸送、 倉庫の雇用の伸びを押し上げる一方で、既存の小売業の売上減少を招いています。
メイシーズやギャップなどの旧来型の小売が店舗を閉鎖する中で、アマゾンは全世界で40万人以上の従業員を新規で雇用しました。こうした新たな採用は、今までの雇用とは異なるもので、「ギグワーカー」やフリーランスを増加させています。
ネクストノーマル時代の新しい働き方
新型コロナ流行の間、多くの企業において、全体の支出を抑制する一方でオートメーション化への投資を増加させるという現象が見られた。
2020年7月に行われた800人の企業経営幹部を対象にした調査では、3分の2がオートメーションとAI(人工知能)への投資を大幅に増やしているといいます。
実際、オートメーション・AI技術導入は、物理的近接性のスコアが高い業務領域で導入が進み、職場を大きく変容させています。
1、需要急増への対応
大量の電子商取引を支える倉庫や物流業務への自動化、食品や飲料、電化製品など需要が急変する商品の生産に対応する工場業務での自動化が進んでいます。
2、職場での「密」な環境の回避
三密を避けるために、飲食や介護、看護施設でロボティクスの活用が加速しています。セルフレジ端末や注文アプリの需要も高まっています。
「リモートワークとバーチャル上での交流の定着」「電子商取引と電子 取引(デジタルトランザクション)の拡大」「オートメーション(自動化)とAI(人工知能)の導入」という3つのトレンドは、労働者の業務を長期的に大きく変えていくはずです。
物理的近接性のスコアが比較的高い4つの業務領域では、2030年までに激変が起きる可能性が高いといいます。医療、科学・技術・工学・数学系(STEM)、交通機関の仕事において大きな増加がみられる一方で、お客様サービス業務、小売り、ホスピタリティ、食糧サービス、生産、オフィスサポートといった業務の割合が減少する可能性が高まりそうです。
雇用の減少は、小売りや ホスピタリティ、食品サービスなどの低賃金・中間賃金の職業に集中している一方で、雇用の創出は主に医療や科学・技術・工学・数学系などの高賃金の職に集中しています。雇用を維持するには、低賃金労働者の半数以上が、異なる技能を必要とする高賃金労働に移行する必要があるのです。
新型コロナによってオートメーションがさらに加速し、2030年までに日本の320万人分の雇用が代替され、60万人が職業の切り替えを余儀なくされる可能性があると予想されています。従業員も自己投資を怠らずに、テクノロジーなどのスキルを高めておかなければ、自分の働く場がなくなってしまいます。
少子高齢化の進行によって、2030年までに労働力の供給は5%程度自然減することが見込まれており、労働市場の需要が供給を上回ります。日本の労働需要供給を満たすためにはオートメーションを加速化しないと、成り立たない可能性があるのです。
新型コロナに伴って労働力の移行が必要となりますが、経営者は企業業務の在り方や働き方を再設計し、従業員のスキル向上を強化していく必要があります。
ウォルマートは、店舗従業員を、顧客接点に長けた店長やサプライチェーンの専門家、テクノロジーの専門家に育てるため、社内での研究を行うとともに投資を発表しています。IBM、ボッシュ、バークレイズは技術系の専門家を養成するための研修を2020年開始しています。
ネクスト・ノーマルの労働者は、新しいスキルを身につけ、より高付加価値の仕事へと自らのキャリアをシフトしなければならない。企業経営者や政策立案者は、労働者・従業員のリスキリングの在り方を再考し、必要な能力を定義し、磨くための方法を見つけ出していかなければならない。
オンラインシフトによって、企業は今まで従業員として雇うことができなかった遠方に住む人や身体的にチャレンジがある優秀な人材の雇用が可能になります。
経営者は、従業員にリスキリングを行うことで、職務の内容や実行の仕方が変わった際にも柔軟に対応できる組織を作れます。「ネクスト・ノーマルにおける働き方」を経営者・従業員の両方が意識する必要があります。経営者だけでなく、従業員も自己投資をしなければ、時代の流れに取り残されてしまいます。
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