GAFA next stage ガーファ ネクストステージ―四騎士+Xの次なる支配戦略(スコット・ギャロウェイ)の書評


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GAFA next stage ガーファ ネクストステージ―四騎士+Xの次なる支配戦略
スコット・ギャロウェイ
東洋経済新報社

本書の要約

オンラインでの関わり、アルゴリズム、データといったものがよりよい技術であり、ビジネスを行うのにより便利な手段だと理解していたGAFAMは、どんな製品でも、より多く、より安くつくることができ、より多くをより高い利益率で販売できるようになったのです。彼らはこのビジネスモデルで稼いだ膨大なキャッシュを使って、あるゆる業界に食指を伸ばそうとしています。

最強の騎士・アマゾンが強い理由

パンデミックのさなか、国や指導者は行動でそれを物語った。たしかに何百万人もの死者が出るのは痛ましい。しかしナスダックが下落するよりはマシだ、と。その結果、パンデミックの被害に偏りが生じた。低所得のアメリ力人や有色人種は、高所得世帯の人々に比べて、感染して深刻化するリスクが2倍も高い。裕福な家庭では、通勤回数や交通費が減ったために、家族と過乙す時間、ネットプリックス視聴時間が増えた。さらに貯蓄、株のポートフォリオの価値も増加している。アメリ力人が互いに殺し合う未来に向かうか、もっと明るい世界になるかは、コロナ以後に私たちがどんな道を選ぶかにかかっている。(スコット・ギャロウェイ)

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界でGAFAという言葉を定着させたスコット・ギャロウェイの新刊が発売されたので、早速紹介したいと思います。(スコット・ギャロウェイの関連記事

コロナ禍の中、GAFAMなどの勝ち組はその力を増し、逆に負け組は市場からの撤退を余儀なくされています。一部のビッグテックや大型株は好調に推移していますが、市場では過酷な選抜が始まっており、この1年で以下の有名ブランドが倒産しました。  

ニーマン・マーカス
J・クルー
J・C・ペニー
ブルックスブラザーズ
ハーツ(ダラー・スリフティを所有)
アドバンテージ・レンタカー
24 Hour Fitness
ゴールドジム
MUJI(無印良品、アメリカ子会社)
カリフォルニア・ピザ・キッチンなど

これ以外にも「BEACH株」(ブッキング、エンターテインメント、エアライン、クルーズ&カジノ、ホテルとリゾートなどの銘柄群)の株価は、平均50~70%も下落しています。

キャッシュや担保物件の豊富な企業、株価の高い企業は、困窮したライバル会社の資産を獲得して市場での地位をさらに固めるだろう。 「イノベーティブと思われたら勝ち」な時代パンデミックは”イノベーション”というナラティブの評価を押し上げた。

EVで世の中をよりよくするというナラティブによって、イーロン・マスク率いるテスラの時価総額はトヨタ、フォルクスワーゲン、ダイムラー、ホンダの合計よりも高くなっています。未だテスラの生産台数は40万台でしかなく、他の4社の生産台数の合計が2600万台よりはるかに少ないにも関わらず、多くの投資家はテスラのナラティブに賭けています。

2007年からの大不況の時期、高級ブランドのホテルは苦境に陥りました。1室あたりの収益が25%も減少したため、フォーシーズンズは出版物に広告を出すことを全面的に中止しました。その後、景気が回復したとき、出版物への広告を再開していないのに、需要が戻ったと言います。この際、多くのメディアや広告会社が売り上げを落としました。

コロナが終息し、景気が戻った時に、 メディア・広告業界はこの時に以上に影響を受けるはずです。コロナで世界中の何千という大広告主が放送メディアへの広告中止を余儀なくされました(30~50%減少)。今回の広告不況によって、コンデナストからバイアコムCBSにいたるまで、メディア大手では社員を一時帰休させたり解雇したりしています。

さらに大きな打撃を受けるのが、グーグルとフェイスブック以外のデジタル・マーケティング企業だと著者は指摘します。2020年、バズフィードとイエルプのサイトのディスプレイ広告は、2019年との比較で40~70%減という悲惨な状況です。ボックス、ハフポスト、ヴァイスなども負け組になりそうです。グーグルやフェイスブックが今以上に広告業界を支配し、多くのメディア企業から人材が両社に向かうはずです。

コロナ禍の中で著者が4騎士と呼ぶ、アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグル、それに加えてマイクロソフトの業績は絶好調です。これら5社は2020年半ばで24%上昇、時価総額は合計1兆1,000億ドル増加しました。これ以外にネットフリックスやショッピファイ、テスラも業績を伸ばしています。

彼らのビジネスの中心には”フライホイール(はずみ車)”がある。フライホイールとは、物理学においては回転の運動エネルギーを蓄えて近くのエンジンを動かす円形のディスクを指す。ビジネスにおいては顧客を集める「目玉商品」である。フライホイールが回転すればするほど、インプットやコスト以上に収益が増大する。

アマゾンはアマゾンプライムやAWSをフライホールにすることで、売上を拡大しています。アマゾンプライムの会員になるとアマゾンプライム・ビデオのようなサービスが受けられるので、プライムの定着率とプラットフォームで過ごす時間がさらに増え、アマゾンの優位性が高まるのです。

いったんフライホイールが回り始めると、独占の時代が到来します。ネットワーク効果、安価な資本、イノベーターへの偶像崇拝、司法省や公正取引員会の無気力さなどがフライホイールの回転を助けます。

オンラインでの関わり、アルゴリズム、データといったものが、よりよい技術であり、ビジネスを行うのにより便利な手段だと理解していたGAFAMは、どんな製品でも、より多く、より安くつくることができ、より多くをより高い利益率で販売できるようになったのです。彼らは資本コストの低さ、独占力、規模の大きさという強みによって、あらゆるビジネスをテック業界に追い込もうとしています。

アマゾンは運送業とヘルス業界に狙いを定め、フェデックスやDHL、CVSヘルスのシェアを奪おうとしているのです。巨大になったGAFAM+Xは成長を維持するために、あらゆる業界を支配しようとしています。著者はアマゾンを最強の騎士と呼び、時価総額3兆ドルの一番手になると述べています。

著者による4騎士の区分
最強の騎士・アマゾン
青の騎士・アップル
赤の2大巨頭・グーグルとフェイスブック

青のアップルと赤のグーグル・フェイスブックとは?

著者はプロダクト時代の基本的なビジネスモデルは2つあると指摘します。
1、商品を製造コストより高い値段で売ること。
iPhoneは400ドル相当の回路とガラスにすぎませんが、アップルはそれを1200ドルで販売しています。アップルの高いブランド力が同社の利益を高めています。

2、商品を無料で配りあるいは原価以下で売り他の企業に利用者の行動データを有料で提供する。
商品を無料で提供しても広告という代償を得ることで、メディアは成長してきました。グーグルやフェイスブックは関係がオンラインになることで、私たちに関するあらゆるデータを無料で手にするようになりました。彼らは私たちが何を読み、何を買い、誰と話し、何を食べ、どこに住んでいるかを把握しています。

彼らはそのデータを使って、私たちをネタにさらに大きな金儲けをしようとしています。フェイスブックは、それぞれの広告注視リソース・ユニット(あなたや私はそれを”人間”と呼ぶ)に合わせてプログラムをカスタマイズし、売上と利益を拡大しています。 

著者はGAFAMを赤と青に色分けします。スマートフォン業界での色分けは、アップルのiOSが青になります。iPhoneは高品質でブランドカがあり高価格ですが、裏でデータ利用されることが少なくなっています。顧客が金を払い、データ利用が少ないモデルを著者は「青」と定義します。

一方、まずまずの品質で初期費用が安いが(あるいは無料)、ユーザーのデータとプライバシーを広告主に差し出すグーグルのモデルを「赤」と定義します。 アンドロイドのスマホは1日1,200のデータポイントをユーザーから集めて、グーグルはデータマイニングを行います。ちなみにiOSのスマホが集めるのは200データポイントにすぎません。アップルはそのデー 夕が金儲けのために使われることはないと強調しています。

本当のことを言えば、顧客のデータを売る、つまり顧客を商品にすれば、巨額の利益を得られる。しかしそれはしないと決めたのだ。(ティム・クック)

世界全体がアンドロイドか、iOSかに分かれつつあります。アンドロイド・ユーザーは、プライバシーと引き換えに価値あるものを手に入れる大衆になります。iOSのユーザーは443ドルのセンサーとチップセット(iPhoneの原価)に1249ドルという大金を払って、プライバシーを守りステータスを誇示する裕福な人々なのです。

この考えを動画ビジネスで考えるとユーチューブは赤の動画サイトになります。視聴者は無料で動画を見られますが、それはコンテンツの寄せ集めにすぎません。グーグルはアルゴリズムによって、あなたの閲覧記録を追跡し、それとあなたについて知っている他の情報(かなり多い)を関連づけ、最適な広告を見せようとします。

有料モデルのネットフリックスは「青」の動画ビジネスになります。顧客はお金を支払い質の高いコンテンツを視聴できます。

個人情報へのアプローチ(赤)かプライバシー(青)かという観点からすると、現在のソーシャル・メディアはすべて赤である。無料サービス、完全な搾取構造、しかも時には当人にはわからないやり方で、である。

多くのソーシャルメディアは赤に区分されますが、徐々にこの業界でも青に対応しようとする会社が増えてくると著者は予測します。フェイスブックやティクトックが赤を選択する中で、ツイッターやリンクトインは青のビジネスモデルを目指すと言います。

青と赤の二分化が、これからますます多くの分野で見られるようになるでしょう、航空会社からファーストフードまで、低コストを目指す赤い企業は、顧客データを蓄積し、それを広告主に届けます。

アップルやネットフリックスなどのプレミアムな企業は顧客のプライバシーを優先し、顧客との関係を強化することで利益をあげるようになります。顧客を商品化しない青と顧客データを他社に売り払う赤の企業の戦いが熾烈になりそうです。

次回はGAFAMに続く企業群「ディスラプタビリティ・インデックス」を紹介しようとします。

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