越境学習入門 (石山恒貴・伊達洋駆)の書評

cars on road during daytime

越境学習入門
石山恒貴・伊達洋駆
日本能率協会マネジメントセンター

本書の要約

人生100年時代になり、キャリアプランも変わり始めています。その時々にあったキャリアを築くためには、変化に適応する必要がありますが、その際、越境学習が欠かせなくなっています。アウェイへの越境によって「自分とはなにか」「誰に貢献すべきか」を問い直すことで、主体的なキャリア構築につながります。

越境学習がなぜ必要なのか?

足りないのは、イノベーションではなく、〝冒険〟なのではないだろうか。(石山恒貴・伊達洋駆)

日本人は確かに冒険することを忘れているのかもしれません。境界を越え、冒険に身を投じる力、冒険を楽しむ力、冒険し続ける力を持った冒険者たちを育てるプロセスが不足していることが、今、日本でイノベーションが起きていない理由の一つです。この冒険する力を養うやめには、越境学習が必要だというのが著者たちのメッセージになります。

この冒険する力を養うやめには、越境学習が必要だというのが著者たちのメッセージになります。

「越境=個人にとってのホームとアウェイの間にある境界を越えること」と本書では定義します。通い慣れた職場からアウェイに出ることで、これまでとは異なるやり方、考え方を知ることができます。私たちはそこでの失敗や試行錯誤を通じて、コミュニケーションスキルを磨けます。

あえてアウェイに行くことで、自分の価値やそれを生かす方法を学べます。アウェイで学んだ知識や体験をホームに持ち帰ることで、ホームに貢献できるようになります。我々は、このようなホームとアウェイを往還すること=越境学習によって、自分を成長させられます。アウェイでは違和感を感じます。居心地の良いホームを離れることで、葛藤を抱えながらも、なんとか自分を活かそうとします。

越境学習者は、「越境」を体験したことをきっかけに、ホームである元の職場に働きかけ、従来のやり方を見直し、柔軟に新しいやり方を試すようになったり、異質な人たちと新たな取り組みを始めたりと、周囲を巻き込むダイナミックな変化を生み出すことがあるのです。

葛藤状態を受け入れ、逃げずに立ち向かう中で、これまで気づかなかった自分の新たな面に気づき、新たな力の発揮方法を学べます。その後、ホームに戻ると、同じ場所に戻ったはずなのに、視点や仕事のやり方が変わったことで、今度はホームに違和感を抱くようになります。学習者は、ホームで孤独を感じるようになり、二度目の葛藤が生まれます。

居場所がないという悩みを抱える中で、越境学習者は物事を俯瞰して見ることができることを理解できます。アウェイでも周囲の人たちとの関係を築き、自分の力を発揮する選択肢を増やして、本来自分が持っていた価値観を明確化したり、変化できるようになります。

今までの常識や前提を疑うことによって、ホームやアウェイの多様な人を巻き込み、行動を起こせるようになります。越境による葛藤が原動力となって新しいことに挑戦し、現状を変えることに力を発揮できます。越境学習者は二度の葛藤を通して、ホームにい続けるよりも、より多くのことを学べるのです。

越境学習がイノベーションを起こせる理由

既存の枠に当てはまらない新しいことができる人材、組織内に「革新」「イノベーション」を起こす人材を、既存の枠の中で育成することは難しいものです。遠い分野の知を探して既存の知と結びつける「知の探索」ができる人材を育成するためには、やはり、枠の外へと「越境」させなければなりません。

越境学習者に対する調査では、越境前と越境後で「不安定な状態にあることに持続的に耐えられる」「不確実性の高い状態で探究し続け、それを乗り越えようとする」「全く異なる世界に思い切って飛び込む」といった能力が向上するという変化が見られました。

越境学習によって、私たちはレジリエンスを鍛えられます。それだけでなく「前提を疑う」、「解が分からない、不確実な状態に耐えられる」といった起業家(アントレプレナー)に必要だと言われている能力も、同時に養えます。

ホームの自分とアウェイの自分の違いを知ると、「いろんな面を持った自分がいること」「変わり続ける自分がいること」にも気づけます。自分の価値を客観的に理解することで、やりたいこと、得意なことが見えてきます。自分のやりたいこと、自分の価値観、強みを認識することで、転職や起業に対して積極的になれるのです。

広告会社をやめてから、私は複数の会社の社外取締役、アドバイザーとして働いています。業種、規模の異なる多様な経営者との交流から、私は日々様々な学びを得ています。コミュニケーション、カルチャー、ビジネスモデルが異なる組織に関わることで、自分の視野やスキルを広げることができました。

私がこの数年で気づいたことは
・自分の好きなこと
・自分が得意なこと
・社会から必要とされていること
・お金を稼げること
が重なる部分にやりがいのある仕事があるということです。

人生100年時代になり、キャリアプランも変わり始めています。その時々にあったキャリアを築くためには、変化に適応する必要がありますが、その際、越境学習が欠かせなくなっています。アウェイへの越境によって「自分とはなにか」「誰に貢献すべきか」を問い直せるようになり、自分の可能性に気づけます。自らのキャリアを構築することで、幸福度も高まります。

クレイトン・クリステンセン教授らは、3500人超のイノベーティブな企業経営者や、イノベーティブな仕事を手掛けるリーダーたちを調査し、イノベーターが持つ5つの能力(発見力)を明らかにしています。

■イノベーターが持つ5つの能力
①関連づけの力(関連づけの認知的スキル)
②質問力(現状に異議を唱える質問)
③観察力(新しいやり方の観察)
④実験力(新しいアイデアを試す)
⑤ネットワークカ(多様な人々と幅広いネットワークをつくる)

この5つの力も越境学習によって育めます。私も独立後、この5つの力を鍛えることができました。様々なコミュニティに属し、情報・知識・体験・ネットワークを掛け合わせると化学反応が起こります。イノベーションを起こしたければ、冒険するべきだという著者たちのメッセージに共感を覚えました。



この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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