世界一シンプルな問題解決 (中尾隆一郎)の書評

man writing on whiteboard

世界一シンプルな問題解決
中尾隆一郎
フォレスト出版

本書の要約

問題を分解する方法はたった2つしかありません。1、プロセス(時間軸)で分解する。 2、マトリックスで分解する。この2つを使えるようになれば、課題が簡単に特定できるようになり、解決策が見つかるようになります。課題解決の際には、「現状把握」「解釈」「介入」「感情を保留」する4つのステップを踏みますが、最初に課題を特定することで、結果が驚くほど変わります。

課題解決の4つのステップ

解決したいテーマを「上手に分解」し、「本当の課題」を特定、つまり「課題設定」することができれば、驚くほど「課題解決」がしやすくなります。逆に「課題設定」を間違うと、本当の課題は解決されないうえに、無駄なことに時間を使う結果を招きます。(中尾隆一郎)

経営コンサルタントとして、数々の企業を成功させてきた中尾マネジメント研究所の中尾隆一郎氏は、課題解決のための4つのステップを明らかにしています。

①「現状把握」=本当の課題を特定することで、結果が驚くほど左右されます。
②「解釈」=課題解決策を見つける
③「介入」=現場に課題解決策を実行してもらう
④「感情を保留」=①~③をうまく進める 

問題を分解する方法はたった2つしかありません。
1、プロセス(時間軸)で分解する。 
2、マトリックスで分解する。
この2つを使えるようになれば、課題が簡単に特定できるようになり、解決策が見つかるようになります。

本書の中で最も響いたことが、リーダーが着任100日で行うことです。
DAY1:自分が何者で、何をしようとしているのかを示す(発表)
DAY30:成果の兆しを見せる(兆し)
DAY100:何らかの成果を見せる(成果)

リーダーが着任した際の100日間のプロセスを3つの時間軸に分解します。この3つのステップをしっかりとおさえることで、周囲からの信頼を得られます。水準を高めるためには、課題解決のための「構造」を理解し、同時に「水準」を高める必要があります。

「課題」は解決すべきだけれども、「問題」は解決せずに放置していいのです。

課題を解決する際、最初に現状把握を行い、問題と課題を区別することで、やるべきことが明確になります。
■問題→現在起きているよくないことや、気になること、もやもやしていることです。  
■課題→将来に到達したい「ゴール」や「あるべき姿=To Be」と、現状このまま進捗した場合にその将来に到達できるであろうポイントとのギャップ。  

「問題」は現状の話で、「課題」は未来とのギャップだと理解し、何をすべきかを明らかにしましょう。目の前にある気になることが「これは単なる問題ではないか?」という視点を持つことで、本当の課題が見えてくるようになります。

売上に課題がある場合には、以下のように売上を分解し、売上の公式をつくります。
●売上=既存顧客数×既存顧客あたり売上+新規顧客数×新規顧客あたり売上
「売上」を
「既存顧客数」
「既存顧客あたり売上」
「新規顧客数」
「新規顧客あたり売上」の4要素に分解します。

これらの実際のデータを見たとき、既存顧客あたり売上が減っていることが分かった場合、既存顧客の顧客あたり売上を上げる方法を部下に考えるように依頼すると、課題が明確になり、良い提案を受けられるようになります。

課題解決の2つの方法

課題を解決するためには、以下の2つの方法があります。このシンプルなメソッドを身につけるだけで、課題解決力はアップします。
①プロセス(時間軸)で分解する。
②マトリックスで分ける。

①プロセス(時間軸)で分解する。
すべてのビジネスは「3つのプロセス」に分解できます。
1、新しいビジネスアイデアを「創る」
2、それを実際に「作る」
3、そしてそれを「売る」

会社を強化するためには、自社の3つのプロセスのどこが課題なのかを特定して、そこを再度分解していきます。例えばイノベーションを起こしたいメーカーは「創る」が競争優位ポイントである可能性が高くなります。そして一般的な量販製造が得意なメーカーは「作る」が競争優位ポイントになります。小売業や商社は一般的には「売る」が競争優位ポイントになる傾向が高くなりますから、「創る」「作る」「売る」のステップを分解し、本当の課題を明らかにしましょう。

本書には、営業のステップを改善したり、サブスクモデルのステップでの優先度の設定の仕方など、すぐに実戦できるメソッドが満載です。

①退会率を改善する=バケツの底から出ていく水の量を減らす
②入会率を改善する=入る水の量を増やす
③集客を強化する=バケツの上部から入れる水の量を増やす
サブスクモデルでこのステップを間違うと、収益改善ができません。チャーンを減らすことが重要だと思っていても、多くのリーダーは集客や新規顧客の獲得を部下に指示します。これでは結果を出せないことを多くの数字が教えてくれています。まずは顧客の利用頻度を高めるために、カスタマーサクセスを実践すべきです。

②マトリックスで分ける。
広告会社でコンサルをしていた頃、私は絶えずマトリックスで目の前の課題を分析していました。7つの習慣の「第二領域」やボストンコンサルティングのキャッシ・カウ分析(PPM)、アンゾフの成長マトリックス、SWOTをはじめ、多くの優秀なビジネスパーソンはマトリックス分析を行なっていました。

若い頃の先輩とのミーティングでマトリックス分析を叩き込まれ、さまざまなマトリックスを書くことが習慣になりました。マトリックス思考を取り入れることで、課題がスムーズに解決できるようになります。

本書にも紹介されていますが、SWOTは掛け合わせが重要です。正しいSWOTでは、2つの軸で4つに分類します。
◎自社の強み×機会 強みを活かして機会を捉える戦略
◎自社の弱み×機会 弱みを克服して機会に挑戦する
◎自社の強み×脅威 強みを活かして脅威を避けるための戦略
◎自社の弱み×脅威 弱みを克服して脅威を避けるための戦略

どんなに大きなテーマであっても、問題を分解することで、分解した一つ一つが小さなテーマになります。すると、分解したテーマのうち、どこに着目すれば良いのかの目星がつきやすくなります。そして、目星をつけたテーマに関して、深堀りしていきやすくなるのです。

現状把握した情報を「解釈」し、課題解決策を特定することが重要です。目の前の課題を分解して、フォーカス(最重要箇所を特定)&ディープ(徹底的に深掘り)します。

他業界の成功事例をベンチマークにし、自社に使えないかというアンテナを立てることはとても重要です。具体的な課題解決ステップを抽象度を上げると言う思考法を取り入れることで、ヒントが見つかります。他社にできたことは、自社にも活用できるとマインドを変えることで、結果を出せるようになります。

経営者だけでなく、現場の課題解決力をアップしたいマネージャーにおすすめの一冊です。読むだけでなく、本書に紹介されていることを実践していきます。



 

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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