トラクション~ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプルイノベーション (ジーノ・ウィックマン)の書評

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トラクション~ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン, 福井久美子, カール・パイザー, 久能克也
ビジネス教育出版社

本書の要約

成功している経営者は、明確なビジョンをメンバー全員と共有しながら業務を行っています。適切に配置された正しい人とオープンに対話をしながら、組織の課題をすばやく見つけて解決します。業務プロセスを文書化して、全員がそれを順守することで、メンバー全員がパーフォマンスを高められ、企業は飛躍的に成長できるのです。

EOSとは何か?

EOSは会社の6つの側面に働きかける、全体的で自立的なシステムである。あなたがEOSの個々の要素をマスターすれば、それらの要素を強力なフレームワークへと統合できるだろう。トラクション(実行力)が身につけば、会社のビジョンは実現に向かうだろう。(ジーノ・ウィックマン)

 『EOS(the Entrepreneurial Operating System)』と言うアメリカ発の中小企業向け経営システムをご存知でしょうか?この 『EOS』は全世界で7万社以上が導入している企業を成長させるツールです。

EOSは以下の「6つのモジュール」から構成されます。
①ビジョン
②人
③データ
④課題
⑤プロセス
⑥トラクション(実行力)

①ビジョン
大抵の場合、従業員にはビジョンが見えていません。そのためリーダーにはストレスがたまり、スタッフは混乱し、ビジョンは達成されずに終わるのです。

起業家はビジョンを頭のなかから出して、紙に書き出し、従業員に共有する必要あります。全員がリーダーと同じ認識を持てば、問題をより早く解決できるようになります。

成功を収めている経営者は、強力な「ビジョン」を持ち、さらにそのビジョンを周囲に伝える方法も知っています。会社がどこを目指すのか、どうやってそこにたどり着くのかをはっきりとイメージし、それを組織の全員に示さなければ、企業の成長はありません。

ビジョンが明瞭であればあるほど、それが実現する可能性は高くなります。メンバー全員のエネルギーを一つに集中させれば、驚くような成果を上げられるようになります。組織の全員が100%同じ1枚の絵を共有することで、やるべきことが明確になるのです。

②人
偉大なチームは「正しい人」に「正しい席」を与えています。組織が大きくなれば、経営者は部下に仕事を任せる必要があります。幹部から現場スタッフに至るまで優れた人で周りを固めることで、成果を出せるようになるのです。

会社のコアバリューを共有し、ビジョンを実現するために、アクションを起こせる人が正しい人です。正しい席とは、従業員一人ひとりが、社内で自分のスキルを発揮できて情熱のある業務を担い、なおかつその役割と責務が、彼らの「ユニーク・アビリティ」に合致している状況です。

正しい人を正しい席に座らせるためには、「GWC」というフィルターが役立ちます。 「Get it(業務を理解できる)」「Want it(業務に対するやる気がある)」「Capacity to do it(業務を遂行する能力がある)」の3つを指標にすることで、正しい人が見つかります。

リーダーは部下にそのポジションについて、役割、責任、期待すること、指標などをはっきりと説明したうえで機会を提示すれば、彼らの力をより引き出せるようになります。

③データ
卓越したリーダーは、いくつかの判断基準を持ち、会社経営に役立てています。データを活用することで、感情や性格、意見、エゴを組織から取り去ることができ、ストレスがなくなります。いくつかの経営指標を週次でチェックすることで、問題点が浮き彫りになります。

EOSの6つのモジュールを統合しよう!

④課題

課題とは、ビジョンを実現するために克服すべき障害のことだ。個人の成功が課題解決の能力の大きさにかかっているのと同じで、企業にも課題を解決する能力が求められる。

EOSの3つのモジュール(ビジョン・人・データ)を強化すると、会社の見通しがよくなります。これらの要素をきちんと実行すれば、死角のないオープンな組織ができ、結果的に成長の妨げとなっていた課題が明らかになります。

ほとんどの企業は日々の慌ただしい業務のなかで、課題をきちんと解決するのに必要な時間を割いていません。逆に課題解決に時間を割けば、競合に優位性を発揮できます。

経営チームはオープンで正直に課題を話し、頭のなかで抱えている課題を吐き出して、文書にする必要があります。 理想の組織には3つの重要な機能があります。
■営業・マーケティングはビジネスを生み出します。
■オペレーションはサービスの提供または商品の製造を行い、顧客に価値を届けます。(配送、プロジェクト管理、顧客サービス)
■バックオフィス入出金の管理および構造基盤の管理を行います。(財務、管理、情報技術、人事)

重要な課題をリストアップするには、オープンで正直なチームを作る必要があります。 課題を解決したければ、IDSを活用しましょう。

課題解決トラック(IDS)は次の3つのステップから成り立ちます。
1、原因を追究する(Identify)
2、議論する(Discuss)
3、解決する(Solve)

IDSに従って。一番重要な課題に着手します。 課題の解決には3つの選択肢があります。
・その問題を我慢する
・終わらせる
・変える

⑤プロセス
プロセスとは、ビジネスを行う「ウェイ(流儀)」のことです。成功を収めている企業は自社のウェイをはっきりと認識し、絶えずそれに磨きをかけています。

ビジネスを「システム化」するために、優れた結果を生む核となるプロセスを特定し文書化します。チームメンバーと共に価値を生んでいる手順を明らかにし、組織全員がこのプロセスを遵守することで、チームが強くなります。企業にウェイが生まれることで、組織は拡大していきます。

ほとんどの企業はプロセスがいかに強力となり得るかを認識していませんが、正しいプロセスでビジネスを進めれば、スケーラビリティ、効率、収益性がもたらされます。

⑥トラクション(実行力)
恐怖心や規律不足のせいで、トラクションという要素は大多数の組織に共通の弱点となっています。実行力をつけるには2つの規律が必要になります。1つは、組織内の全員が「石」を持つことです。石とは次の90日間の優先事項を決めることです。

2つめの規律は全社レベルで導入する「ミーティングのリズム」です。90日ごとに定期ミーティングを行い、「石」の達成度を確認し、改善策を考え、それを実行するのです。

6つのモジュールを要約すると、成功を収めているビジネスマンは明確なビジョンを全員と共有しながら業務を行う。適切な人事配置をする。一握りの数字を毎週チェックすることで事業の状態を把握する。オープンで正直な環境のなかで、課題をすばやく見つけて解決する。プロセスを文書化して、全員にそのプロセスを順守させている。各従業員のために優先事項を定め、各チームのなかで高い信頼性、コミュニケーション、結果責任を確保している。

ほとんどのリーダーは日常的なルーティン業務に忙殺されたり、疲れ果てたり、没頭したりして多くの時間を過ごし、明日以降のことを考える余裕がありません。その結果、思うように問題を解決できず、トラブルを増やしてしまいます。

偉大なリーダーは時間を取って静かに考える習慣を持っています。正しいビジョンのもと、戦略と組織を作ることが経営者の仕事なのですから、そのための時間を割きましょう。EOSを活用し、メンバー全員が重要な課題に取り組むことで、組織は飛躍的に成長します。


 

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