DX CX SX ―― 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法(八子知礼)の書評

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DX CX SX ―― 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法
八子知礼
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

本書の要約

10年後からバックキャスティングすれば、多くに課題が見えてきます。ITの進化や人口減で人材不足が当たり前になる中、DXは避けて通れません。自らの業務フローを見直し、全体最適の視点から、スピーディなDX推進を行うべきです。DXによって業務をボーダレス化させ成長スピードをアップさせることも可能です。

今なぜ、DXを推進すべきなのか?

この先、10年、20年と事業継続を考えるのであれば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノゴトのインターネット)、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、自動運転といった、最新のデジタル技術を活用しながら、製品、サービス、ビジネスモデルを変革することはもちろん、業務フローや組織のあり方、企業文化・風土を変えていく必要がある。(八子知礼)

コンサルタントでINDUSTRIAL-X代表の八子知礼氏は、未来からバックキャスティングすれば、DXの推進が欠かせないと指摘します。

インターネットの普及とデジタル技術の進歩は、ビジネスをスピードアップさせ、変化に適応できない企業は生き残れなくなっています。変化に対応するためには、企業もデジタルで武装し、デジタルをフル活用しなければ、取り残されてしまいます。

デジタル全盛の時代において、トランスフォーム(変容・変革)の手段としてデジタルが重要であり必要不可欠になっています。

現実世界のあらゆる事象、状態、環境をデータで捉えた上で、デジタル空間上に「双子」のように再現し、そこで、あらゆる可能性をシミュレートする「デジタルツイン」という発想が求められています。デジタルツインは、データにより定義された仮想空間上の現実空間のコピーから、様々なシミュレーションや予測結果を現実空間にフィードバックする方法論です。

①自動的なフィードバックと自動的な進化
1つめの方法論、自動的にフィードバックする方法の典型的な例は、「自律運転」です。クルマに取り付けられたセンサーやカメラのデータを一兀に、仮想空間内で走行状態をシミュレーションします。そのシミュレーション結果を現実世界の自動運転に常時フィードバックし続けることで、自律運転は自動的に進化していきます。

②自動的なフィードバックを人間が学びに変える
人間が介在するフィードバックは、スマートフォンと連動したフィットネス製品がその典型例で、データを活用することで、人は健康を改善しようとします。

現実空間から取得したデータをクラウドで分析し、その結果を現実空間にフィードバックして、自律運転を行なったり、自分の行動を変容させる、こうした一連の仕組みもデジタルツインによって実現します。

デジタル技術を用いて、現実空間のあらゆるモノやコトがデジタル化していくトレンドは、この先も衰えることはありません。そのような時代のなかで企業が生き残るには、凄まじいまでの「変化」を要求され続けます。そのためには、「できるだけ、小さくフラットな組織」が求められます。なぜなら迫り来る様々な変化に対して「スピーディで柔軟な意思決定」が常に実行できるからです。

組織の中にはDXを阻む壁が存在しますが、リーダーが今すぐ決断し、アクションを起こさなければ負け組になってしまいます。全社でDXを推進しなければ、ボトルネックが生まれ、企業の生産性を著しく低下させてしまいます。

全体最適からDXを推進すべき理由

各部門や部署が、システムを自分達の都合に合わせて非効率に変更したり、慣れ親しんだ業務フローを変えたくないがために発生したボトルネックを放置しているようでは、全体最適に基づいた「変革」は実現できません。各部署が独自にDXを進めるのはよいのですが、全体最適を実現するために重視しなければならないポイント(重要なデータの流れなど)を共通認識として保持しておき、それを全社一気通貫で達成する覚悟が求められます。

変化に対するスピーディで柔軟な意思決定と確実な実行、それこそがダイナミック・ケイパビリティであり、デジタルの力を用いてそれを実現し、予測可能な経営にしていく事がデジタル・トランスフォーメーションになります。全体最適を考え、一気通貫でビジネスを行うことが、DXの推進には欠かせません。

今後20年のトレンドを読む上での観点は、以下の5つに大別できます。
①現実世界の仮想化
②仮想世界のリアル化
③業界の境目がなくなる
④リモート化が進行する
⑤SDGsとESG経営

ITが進化することで、業界はボーダレスになり、さまざまな企業が競合になることが予測されます。DXは働き方改革やSXの視点から見ても、推進しないという選択肢がないことがわかります。

DXを推進するのであれば、「デジタル」「フィジカル」「ヒューマン」という3つの要素を同時並行で変えていかなければ、本質的かつ全体最適化された変革を進めることはできません。その際、リーダーは以下の3つを同時に行う必要があります。
[デジタル×ヒューマン]
デジタル化人材の育成をしながら、デジタル化を推進する

[デジタル×ヒューマン]
自動化対象の業務に従事するメンバーは兼業を許可して人材の流動性を高め、その自動化を他部門や他社に広める指導員として活用する。また、デジタルな仕組みを通じて彼らの働き方を効率的に管理する

[デジタル×フィジカル]
ロボット化やネットワークインフラを含むフィジカルな取り組みはデジタルと一緒に進める

真のDXとは、「徹底したデジタライゼーションの遂行によって、従来の垣根や課題を跳び越えた全く異なる業界への進出や、形態の異なる企業に変容すること。また、それによって予測不可能な時代を生き抜くことができるようになること」です。

10年後からバックキャスティングすれば、多くに課題が見えてきます。人口減で人材不足が当たり前になる中、DXは避けて通れません。環境問題に対する規制強化で本当に会社が操業できなくなる企業も続出します。SXを実践しなければ、生き残れなくなりますが、その際DXの推進が欠かせません。もはやDXの先延ばしはできないのです。

私の顧問先の中小企業でもDXを推進し、業態を変化させている企業があります。彼らはプラットフォーマーになることで成長スピードを加速させています。業務フローや境目、データを意識することで、新たなビジネスのタネが見つかります。

自らの業務フローを見直し、全体最適の視点から、スピーディなDX推進を行うべきです。DXによって業務をボーダレス化させ成長スピードをアップさせることも可能です。本書のフレームワークやケーススタディをヒントに、今すぐにDXを推進しましょう。顧客や環境が変化する中、それに適応するための方法を学べる良書です。


 

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