HRDXの教科書 デジタル時代の人事戦略の書評

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HRDXの教科書 デジタル時代の人事戦略
EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス、鵜澤慎一郎
日本能率協会マネジメントセンター

本書の要約

戦略と組織は企業を成長させる両輪ですが、デジタル化が進展する中で、人事戦略が企業の業績を左右するようになっています。デジタル時代に競争優位性を発揮するためには、人と組織のデジタル化を推進する必要があります。経営陣と人事部門は優秀なDXチェンジリダーを抜擢し、組織全体のデジタルシフトを早急に行うべきです。

DXチェンジリーダー求められる5つの力

デジタルな時代だからこそ、ヒトのチカラで未来を変える。(鵜澤慎一郎)

テクノロジーが進化する中で、HR部門の働き方も変化しています。VUCAの時代、先が見通せない中、企業において優秀な人材を獲得することがますます重要になってきています。

戦略と組織は企業を成長させる両輪ですが、デジタル化が進展する中で、人事戦略が企業の業績を左右するようになっています。デジタル時代において、戦略や組織の形は簡単に模倣できますが、人材や文化といったインタンジブルなアセットは個別性が高く、簡単に真似ることはできません。たとえ、外形的な部分を真似ることができても、スキルや行動特性といった中身まで真似ることは難しいのが実態です。

人材の質を高め、戦略に沿った組織を作るためには、時間がかかります。戦略に合わせた組織を作るためには、人事戦略を先行させるべきです。経営陣の経営戦略を待つのではなく、人事部門が未来からバックキャスティングし、採用戦略を選考すべきです。その際、デジタル人材の確保を優先しなければ、DX化に成功した企業に敗れてしまいます。

デジタル時代に競争優位性を発揮するためには、人と組織のデジタル化を推進する必要があるのです。当然、人事部門もデジタルシフトを実践しなければなりません。今までの勘や経験に頼るのをやめ、データに基づいた人事を行うべきです。

「デジタル事業を拡大するからデジタル人材を〇〇人規模で確保し、デジタル専任チームを作れ」と経営トップから言われる前に、デジタル人材が必要となることを予測し、準備をはじめておくのです。

全社でのDXを実現・推進していくためには、DXを組織に浸透させていく必要があります。巨大な組織でデジタルシフトを起こすためには、「DXチェンジリーダー」の存在が欠かせません。

DXチェンジリーダーは優秀な業務遂行者であるだけではなく、社内に変革を促すインフルエンサーとしての役割も担います。DXチェンジリーダーには、以下の5つの力が求められると著者は指摘します。このような優秀な人材を組織の中から集めることができなければ、デジタルシフトはうまくいかないのです。

1.本質を追求する分析力
クリティカルシンキング(批判的思考)などを通じ、複雑な事象の本質を突き詰めWhyを問い続ける分析力

2.創造的思考力
過去の成功体験や因果関係などに縛られずゼロベースでイノベーションを創造する思考力

3.知的影響力
常にさまざまな社会動向に好奇心を持ち、社内外で知的交流関係を構築するなど、周囲に知的な影響力を及ぼす力

4.回復力
VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の環境下においても、さまざまな困難・逆境をはねのけ、適応していく力

5.機動的な学習力
常に新たな技術や知識に対しての知的欲求を保ち、自ら必要な情報を判断しながら即時に学習していく力

EXを高めることが重要な理由

エンプロイーエクスペリエンス(EX)は、日々の業務や会社関係者との関わり、会社とのあらゆる接点を通じて従業員が体験したことならびに感じたことであり、従業員エンゲージメントを育む支援要素である。

EX向上の目的は、従業員を単に幸せにするためではなく、企業の最終利益を拡大する従業員エンゲージメントを育むことです。従業員の貢献意欲や革新性、生産性が向上することにより商品・サービスの質も上がり、カスタマーエクスペリエンス(CX)が向上します。

さらにCXの改善は、顧客のロイヤルティーや商品・サービスのロコミの評価を上げ、それが業績アップへとつながります。業績が上がれば人材へ投資する金額も増加するので、企業は再度EXの改善に資源を投入することができます。このポジティブなループを実現することで、企業の業績がアップし、利益も高まるのです。

まずは、よいEXを生み出すことが重要で、EXをよくすることで、CXも改善します。業績を高めたければ、経営者は、従業員への投資を怠らないようにすべきです。

メルカリの執行役員CHROの木下達夫氏もEXを重視します。

顧客体験のこだわりと同じくらい、社員体験にこだわりたい。WHYから考えることはまさにマーケティングの本質であり、これからHRDXを推進するときに、すぐに活かせる示唆になる。(木下達夫)

オペレーショナルな人事管理業務について、人事部門はDXを進めて時間を捻出し、より付加価値の高い業務にシフトすべきです。

人事担当者が組織文化をより良くするために時間を使うことで、EXが高まり、ワクワクな職場が生まれます。よい組織文化を作れれば、それに共感する優秀な人材を集められます。

マッキンゼーはデジタル変革が失敗する要因を明らかにしていますが、その多くが組織・人材課題に起因しています。
1位:シニアマネジメントのフォーカスと文化(36%)  
2位:デジタルテクノロジーの理解不足(26%)  
3位:(デジタル)人材の欠如(25%)  
4位:組織(24%)

これを避けるためには、デジタルシフトを牽引するリーダー(DXチェンジリーダー)の存在が欠かせません。経営陣や人事部門がDXの重要性を理解し、デジタル人材を積極的に活用できる場を作ることで、企業は持続的な成長を実現できるようになります。



この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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