パンデミックなき未来へ 僕たちにできること
ビル・ゲイツ
早川書房
本書の要約
テクノロジーが進化することで、人類のウイルスとの戦い方も確実に改善されています。ワクチンや治療薬の開発やテクノロジーに投資することで、パンデミックの根絶も夢ではなくなってきました。今回のCOVID19をきっかけに、次のパンデミック対策への備えを怠らないことが重要です。
今回のようなパンデミックは今後防げるのか?
一日目に100人が感染症にかかっていて、感染者の数が毎日倍になるとすると、27日目には地球上の全人口が感染している。(ビル・ゲイツ)
新たな感染症の世界的大流行=パンデミックが起こると以前から警鐘を鳴らしていたビル・ゲイツが、アフターコロナ時代の感染症対策を提言したのが本書パンデミックなき未来へ 僕たちにできることです。
ビル・ゲイツと元妻であるミランダが運営する「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は、長年パンデミック予防、疾病撲滅、衛生問題などの課題解決に取り組んでいますが、彼らの知見や経験から生まれたパンデミックに関する提案が本書にわかりやすくまとめられています。
パンデミックが起こる可能性が高まっていたにも関わらず、2020年以前のWHOや先進国の政治家・官僚の動きはとても鈍かったと言います。今後も人類はウイルスとの共存を余儀なくされ、何もしなければ今回と同じようなパンデミックに襲われます。
都市化が進み、自然の生息環境がどんどん破壊されていつため、人と動物が接触する機会が増え、動物から人間に病気がうつるリスクが高まっています。中国の武漢で今回起こったことがまさにこれで、パンデミックを防ぐためには、人と動物との境界線を明らかにすべきです。
新型コロナパンデミックになる前には、海外旅行も急増していました。2019年には、世界中で毎年14億人の旅行者が他国に入国していたと言います。この航空機での移動が、ウイルスを短期間で世界中に広めてしまうのです。
人類はテクノロジーのおかげで、短期間でワクチンを開発できるようになりました。COVIDウイルスの遺伝子が解析されてから最初のワクチンが試験され使用できるようになるまでに、わずか12ヶ月しかかかりませんでした。普通なら最低でも5年はかかるワクチン開発のプロセスをたった1年に短縮できたのです。
今回のパンデミック中に起こった技術の進歩によって、将来的にさらなるスピードアップも見こまれる。僕らが、つまり政府、資金提供者、民間企業が正しい選択と投資をすれば、これは実現できる。それどころか、悪いことを防ぐだけでなく、とてつもないことを成し遂げるチャンスもある。あらゆる種類の呼吸器系ウイルスをすべて根絶できるかもしれないのだ。
今後、政治家や民間企業、投資家が正しい洗濯を行えば、COVIDのようなコロナウイルスがなくなり、さらにはインフルエンザまでなくなるとゲイツは指摘します。
毎年、インフルエンザだけで世界中でおよそ10億人が体調を崩し、300万~500万人の重症者が入院しています。そのうちの少なくとも30万人が死亡しますが、今回、人が手洗いやうがい、マスクの着用を徹底することで、インフルエンザの流行を防げることが明らかになりました。
テクノロジーが変える未来
人類への脅威としてのパンデミックを根絶し、COVIDをだれもが二度と経験せずにすむ可能性を高める計画ができる。
パンデミックの予兆が見られたら、初期の段階で人口の大部分を検査し、陽性者とその濃厚接触者を隔離して、国外からやってくる感染可能性のある人たちを入国させないことで、感染者数をほどほどに抑える状態をつくれます。このような極端な措置でしか大量の感染者と死者を防げなくなるとゲイツは指摘します。
感染が広まらないうちに、ワクチン開発を行いながら、感染を確実に減らす取り組みを続ける必要があります。その際、最も重要なことが以下の3つになります。
①マスクの着用
②ソーシャル・ディスタンス
③低所得国も含めたワクチン対策や感染症に必要なツールの入手
ワクチンが開発されても、ウイルスの変化は止まりません。ワクチンを打った人が感染するいわゆるブレイクスルー感染も起こります。一定の集団内でワクチン接種を受ける人が増えると、感染者の総数は減りますが、ブレイクスルーによる感染者が占める割合が大きくなることで、ワクチンの効果を疑う人が現れます。しかし、実際にはワクチン接種によって確実に感染者を減らせるのです。
今回のように短期間でワクチン開発が行わなければ、パンデミックの状況はもっとひどくなっていたはずです 民間セクターと政府、非営利組織、財団が協力し、さまざまな方法を試すことで、感染症対策が比較的うまく機能したのです。国によっては、当初は失敗もありましたが、ワクチン開発がスピーディーに行われたことで、当初の予測よりも早く終息に近づいています。
今回のパンデミックの原因の一つが、エアロゾルだったことが明らかになっています。エアロゾルを除去する高品質の空気清浄機を設置することが理想ですが、窓をあけることも効果があります。
ジョージア州の研究によると、ドアか窓をあけ、扇風機を使って空中を浮遊する微粒子をまばらにした学校は、それをしなかった学校よりもCOVID感染者が30パーセントほど少なかったと言います。空気清浄機も設置した学校は50パーセント少なくなったのです。このように空気の流れをよくすることに時間とお金を使うことで、パンデミックの拡大を防げるのです。
次の大きなアウトブレイクのときには、COVIDのときよりもよい治療薬を作ることが求められます。そのためには、薬剤化合物の大規模ライブラリーを整備すべきです。ライブラリーによって、新しい病原体に効く既存の治療薬がないかすぐに確認できれば、効果的な治療も行えますし、薬の開発にも良い影響を及ぼします。
人工知能と機械学習の進歩によって、いまはすでに知られている病原体の弱点をコンピュータを使って見つけることができるようになり、新しい病原体が現れたときにもスピーディに対策を練ることが可能になります。弱点を攻撃する新しい化合物を探す作業スピードがアップすることで、治療薬の開発も短期間で行えます。
テクノロジーが進化することで、私たちの働き方も一気に変わりました。オンライン会議が当たり前になり、オフイスに出社することなく、自宅で働くことが可能になりました。
僕らが向かいつつある未来では、だれもがデジタル空間の周辺か内部でもっと時間をすごすようになる。現時点ではメタヴァースは新しい考えのように感じられるかもしれないが、テクノロジーが向上するにつれて、 いまある物理的世界のさらに延長線上にあるもののように感じられるようになるだろう。
今後、新たなパンデミックが起こっても、メタヴァース空間で働くことができれば、感染の拡大を防げます。メタヴァースのUI/UXがよくなれば、Zoom会議で起こりがちなコミュニケーションの問題も解決されるはずです。
テクノロジーが教育や医療の形も変え始めています。オンラインでのペインを減らすことができれば、自宅で過ごす時間を増やせ、感染のリスクも減らせます。
テクノロジーが進化することで、人類のウイルスとの戦い方も確実に改善されています。ワクチンや治療薬の開発やテクノロジーに投資することで、パンデミックの根絶も夢ではなくなってきました。今回のCOVID19をきっかけに、次のパンデミック対策への備えを怠らないことが重要です。
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