感動CX: 日本企業に向けた「10の新戦略」と「7つの道標」 (ベイカレント・コンサルティング,八木典裕)の書評

people in busy city street感動CX: 日本企業に向けた「10の新戦略」と「7つの道標」
ベイカレント・コンサルティング,八木典裕
東洋経済新報社

本書の要約

顧客優位の時代には、企業理念やビジョンも顧客起点で発信すべきです。顧客起点で心に響き、共感しやすいナラティブを開発し、それを広げていくことがマーケティングにおいて重要になっています。最高のCXは顧客視点で設計されるべきで、企業は顧客以上に顧客のことを考える必要があるのです。

顧客起点でAISAREの行動モデルを実践する!

本当の顧客視点とは顧客視点で考えることだ。(八木典裕)

企業経営において、CX(Customer Experience)が重視されるようになってきました。インターネットやSNSの普及で、顧客と企業の関係が変わり始めています。顧客が他の顧客の購買に影響を与えるようになり、商品、サービスの評判を簡単に得ることが可能になったのです。

企業は今すぐCXに本腰を入れ、「顧客から愛され、顧客とともに進化を続けるサービス」を創り上げることが理想となっています。そこに大きくDXが関わってきます。

ビジネスを行っている以上は、「ビジネス相手である顧客を幸せにする」という目標は必須になります。よって企業はCX向上に本腰を入れることが必要となり、DXの目に見える成果の一つはCXであるべきというのが著者の主張になります。

サービスがモノの上位概念にある現代社会において、顧客の期待を超えるほどのサービスを提供するのが「真のCX」ということである。

違現在のビジネスは購買やサービスの利用開始が顧客との長い関係のスタートに過ぎなません。LTVを高めるためには、CXが重要となり、CXの価値を低下させないことです。顧客との長い関係の中で、CXの価値を高め続けるには、顧客一人ひとりのことを毎日のように確認しなければなりません。

顧客ニーズにどのような変化が生じているか?それに対してサービスを変化させる必要があるかどうか?を企業は考え続ける必要があります。

「真のCX」を実現するための源泉となる社員の行動を高めるためには、社員体験(EX)を向上させ、社員がパッションを持って仕事に打ち込める環境を用意しなければならない。社員自身が満足していなければ、顧客を最高に満足させることなどできないのだ。

顧客の期待を超え続けるサービスを提供することが真のCXで、顧客をしっかりと理解し、従業員が顧客に寄り添うことが求められます。CXを高めるためには、EX(エンプロイーエクスペリエンス)を改善しなければならないのです。

AIDMAやAISASから消費者の行動モデルはAISAREにシフトしています。
・Attention(認知)
・Interest(関心)
・Search(検索)
・Action(行動)
・Repeat(リピート)
・Evangelist(伝道者)
AISASの行動モデルに基づき、企業は製品・サービスを継続して購入してくれるリピーターを育成することを実践すべきです。既存顧客の継続とそのファン化が新規顧客の獲得につながります。

最近では、DWC(Direct with Customers)という考え方が重要になっています。
①顧客と双方向の関係を築くことにより、D2Cでは聞き出すことができなかったような顧客の意見を積極的に汲み取ることができるようになり、消費者のことをより深く理解可能になります。
②マルチブランドのアプローチをとることにより、幅広い領域でより総合的な価値を届けられます。結果、顧客に飽きられることなく、D2Cよりも顧客との長期的な関係を築けます。

顧客起点の10の新戦略

著者は顧客起点での戦略を本書で整理しています。
①「顧客の欲求」に「企業の提供価値」を相関させる 
②顧客を引きつける人間的特性を磨き込む(人間中心のブランディング)
③ブルーポンド戦略でトライし、うまくいけばオーシャンへ
④ラグジャリー戦略でロイヤルカスタマーを魅了する(希少性と高級感を強みにする)
⑤ブランドストーリーテリングで人の心を動かす
⑥「さすがとまさかのCX」で感動を生む
⑦「One to One」と「リアルタイム性」で最高のおもてなしを演出する
⑧サブスクリプション型でCXを右肩上がりにする
(サービスを進化し続けることで、時間とともにCXが上がる→収益とコストが逆転するフィッシュモデル)
⑨ハイタッチモデルのカスタマーサクセスを戦略につくりこむ(顧客の成功体験を支援)
⑩対価を支払ってでも利用したくなるマネタイズの仕掛け(価格勝負ではなく、共感できる価値を提供)

カスタマーサクセスの支援によって成功した顧客は、次の3つの点でサービスを後押ししてくれます。
・顧客であり続けてくれる
・アップセル、クロスセルにつながる
・他の人に宣伝してくれる。

カスタマーサクセスには選択と集中が効果的だと著者は言います。顧客10社のうち、〝成功させたい顧客〟を2社選択し、そこにリソースの6割を投入すると良いというアドバイスが響きました。カスタマーサクセスは顧客を平等に扱う必要はないという考えが斬新でした。選ばれた顧客にハイタッチ対応で感動CXを届けることで、その顧客がエバンジェリストになってくれます。

サブスクリプションのように顧客と長期間にわたってコミュニケーションを取ることがビジネスの基本となりつつある今、顧客との信頼関係を構築することが重要になります。そのためには、顧客に共感してもらうことがポイントになります。企業は、顧客の心に刺さるストーリーを用意しておく必要があるのです。

顧客の期待を絶えず上回る体験を企業はデザインしなければなりません。その際、さすがとまさかをキーワードにし、顧客体験を設計すべきです。感動するほどの体験は顧客の心に深く刻まれ、顧客がコア顧客になり、やがてはエバンジェリストになります。

ブランドストーリーテリングの目的は、企業の存在意義、企業が掲げる大義、成し遂げたいビジョンなどを示すことです。顧客を感動させる体験を提供し、ファンがそれを回りに伝える仕掛けとナラティブを用意すべきです。

現代の消費者行動から考えれば、企業理念やビジョンも顧客起点で発信すべきです。顧客起点で心に響き、共感しやすいナラティブを開発し、それを広げていくことがマーケティングにおいて重要になっています。

最高のCXは顧客視点で設計されるべきで、企業は顧客以上に顧客のことを考える必要があるのです。顧客と共創関係を築き、コア顧客と一緒に「価値を創造する」ということが、企業に新たな価値をもたらします。顧客の期待を超えるCXを提供できる企業がこれからの勝ち組になるのです。


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