話題にしてもらう技術 ~90.5%の会社が知らないPRのコツ(加藤恭子)の書評

話題にしてもらう技術 ~90.5%の会社が知らないPRのコツ
加藤恭子
技術評論社

本書の要約

コミュニケーションの予算が少ないベンチャーや中小企業はPRを活用し、積極的にメディアに露出すべきです。経営者のメッセージやプロダクトがメディアに掲載されることで、ブランド認知が高まるだけでなく、信頼度もアップします。経営者やプロダクトがメディアに露出されることで、社員の中にも自信が芽生えます。

情報が注目を集めるための8つの法則

あなたの会社が地味でニッチなビジネスをしていても、その商品やサービスを必要としている相手の間で話題になることはできます。(加藤恭子)

著者の加藤恭子氏はB2B専門のPR会社ビーコミを経営しています。SNSの黎明期にお会いし、何度かビジネスをご一緒したこともあるため、加藤氏の今回の書籍をとても楽しみにしていました。

広告会社に勤めていた頃、私は戦略PR、SNSと広告をインテグレートしたコミュニケーションをクライアントとともに成功させたことが何度もあり、PRの効果が高いことを認識しています。

メディアの露出をはかることは、ベンチャー、スタートアップにとってとても重要なことで、PR担当の優劣によって、ビジネスがスケールするか否かが決まると思っています。それほど大切なポジションであるにも関わらず、多くの企業では専任担当が不在で、ニュースリーリスを出したことがない企業も多いことがわかっています。

コミュニケーションの予算が少ないベンチャーや中小企業はPRを活用し、積極的にメディアに露出すべきです。経営者のメッセージやプロダクトがメディアに掲載されることで、ブランド認知が高まるだけでなく、信頼度もアップします。経営者やプロダクトがメディアに露出されることで、社員の中にも自信が芽生えます。

加藤氏は「情報が注目を集めるための8つの法則」を紹介しています。 
❶距離・時間の近さ

❷自分ごと
自分ごとになりづらいことを「自分ごと」として感じてもらう仕掛けです。

❸ストーリー性
ストーリー性があると記者は興味を持ってくれます。

❹季節感/トレンド+新奇性

❺調査

❻ビジュアル
人はインパクトのある画像に惹かれます。 画像がないと記事にしずらく、画像の有無がPVも左右します。記者の立場に立てば、ビジュアルの提供が欠かせないことがよくわかります。

❼社会的意義
ESG活動に取り組んでいる姿勢を見せることで、企業への信頼が高マリます。パーパスやビジョンについて情報発信することで、顧客の共感を得られます。

❽ギャップ
記者の認識とギャップのある情報だと新奇性を感じでもらえます。

届ける情報は、受け手である記者がが「ほしい」ものになっているかをPR担当者をひたすら考えるべきです。
その内容にどんなインパクトがあるのか?
どんな情報を開示できるのか?
取材する意義は何なのか?
などを記者に説明できると記事で取り上げてもらえる可能性が高まります。

ゴールから逆算してPR計画を立て、効果を測定しよう!

人の記憶はなかなか定着しません。一度聞いても、頭からどんどん消えていきます。インターネットの普及、そしてスマホの普及で、日々目にする情報は格段に増えており、忘れられやすくなっています。そして、日々新たなニュースが大量に流れてきますから、人はすぐにほかのことに目が移ってしまいます。したがって、何度も製品や社名を思い出してもらったり、話題になる仕掛けがないと、せっかく記者会見で記事になっても、あっという間に忘却の彼方へと向かうのです。インパクトが大きければ数ヶ月記憶に残る可能性もゼロではありませんが、1年後にはだれも覚えていない可能性が高いでしょう。

PRを年に1度のイベントとするのではなく、記者との関係を構築し、定期的に情報発信を行い、顧客に見つけてもらう仕組みを作るべきです。

そのためには経営者とPR担当はパブリシティの目的をしっかりと立てる必要があります。経営の課題を解決するという視点でPR計画を立案します。企業のあるべき姿から逆算し、コミュニケーションのプランニングを行います。

例えば、会社として10月までに新規の大口顧客を3件クローズするために、ターゲットとなる年商100億円以上の製造業のシステム担当者が上位3製品として想起する製品の知名度を獲得することをゴールにし、そこから逆算してPR計画を立案します。

PRを実施するだけでなく、効果測定を行い、PDCAを回すことで、正しくメディアに露出されるようになります。戦略に合致していない記事露出がいくら増えても意味がありません。自社のサービスの認知・理解が高まり、顧客が実際に動いてくれることをPRのゴールにしましょう。
■効果測定の指標
・掲載されることで企業に大きなインパクトを与えるメディアか?
・掲載記事の中でどのように取り上げられているか?
・文脈が自社に好意的か、中立か、ネガティブか?
・記事中に会社が発信したいことが入っている?
・記事がステークホルダーに届いているか?

PR担当には、以下の7つの役割があります。
❶経営者の情報参謀・・・経営者に必要な情報をインプットする
❷社内広報(情報受信)・・・社内で起きている情報、社外に伝えたほうがいい情報をキャッチし、そこから社外に伝えるべき内容を取捨選択する
❸社内広報(発信)・・・外部で起きている重要な情報や、自社がどのように報道されているかを社内に伝える
❹社外広報(コーポレート)・・・社外に会社としての活動を伝える
❺社外広報(プロダクト)・・・社外に製品・サービスの情報を発信する
❻業界・競合モニタリング・・・業界の情報や競合他社の発信情報を適宜モニタリングする
❼世の中の声を聞く(ソーシャルリスニング)・・・移り変わる世の中のトレンドや、暗黙のルールなどに耳を傾ける(知ることで、適切な情報発信につながる)

「いいものは見つけてもらえる」「いいことを地道にやっていけば人はついてくる」は、ある程度運や偶然にも左右されます。たいていの場合、知らせないと「見つけてもらう」のは難しい。運を天に任せるだけだと、いい会社、サービスが埋もれてしまうこともあります。「運」を強化するためにも、「知らせる」「話題になる」ことは大事なのです。

情報が爆発する中、自社の情報を顧客に届けることが難しくなっています。自社のプロダクトやサービスを過信するのをやめ、顧客に見つけてもらうための施策を積極的に取り入れましょう。メディアをコントロールすることはできませんが、本書のアドバイスに従えば、メディアとの良好な関係は築けます。よい情報を探している記者に情報を届けることで、メディア経由で顧客に自社を見つけてもらえるようになります。

著者はPRにおいても「運」が重要だと言います。運を高めるためには、アクションを起こすことが欠かせません。経営者は本書をPRの指南書として使い倒し、運を強化していくべきです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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