1位思考――後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣(猿渡歩)の書評

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1位思考――後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣
猿渡歩
ダイヤモンド社

本書の要約

経営者が「全体最適」の習慣と「成果の公式」を取り入れることで、組織の成長が加速します。社員全員が「ミッション×バリュー」への共感を持った上で、よく思考し、スピーディに大量行動することで、顧客から支持されるようになります。ブランド力が高まることで価格競争に巻き込まれなくなり、利益が上がるようになります。

業界1位になる意義とは何か?

扱う製品カテゴリーの多くでシェア1位を獲得して感じるのは、見える景色、やれることがまったく違うということだ。(猿渡歩)

わずか創業9年で売上を300億円にしたベンチャー企業が、アンカー・ジャパンです。私の自宅にもアンカーのイヤホンやバッテリーがいくつもありますが、確かに同社の製品は使いやすく、年々進化していて、この分野の製品を購入する時には、アンカーを選んでいます。

アンカー・ジャパンのCEOの猿渡歩氏は業界1位になることを目指し、競合が激しいバッテリーや充電機器の領域で、短期間でNo.1ブランドになることに成功します。

アンカー・ジャパンが進出したのは、「3LOW」(Low Passion=消極的な購買姿勢、Low Recurring Rate=低いリピート率、Low Average Selling Price=低い平均販売価格)といわれる極めて難しい市場でした。 バッテリーや充電器といった、コモディティ製品で参入し、シェア1位まで成長してきたのです。

著者は、2位以下だと、どうしても1位を意識した戦略になってしまうと言います。No.1企業以外は、どうしたら1位に勝てるかという発想や戦略になりやすく、戦略がどうしても小さくなりがちです。

しかし、業界1位であれば、リーディングブランドとして業界全体をどう伸ばすかを考えられるようになります。 他社とは異なる立ち位置、視座を高めることで、業界自体をどう進化させ、お客様がとことん喜ぶ商品・サービスを考えられるようになるのです。

「1位は一握りの天才しかなれないものではない」ということだ。

27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパン代表取締役CEOになれたのも「1位思考」を実践したからだと著者は述べています。

著者は本書で誰でも1位になれるノウハウ(6つの習慣)を紹介しています。
1、全体最適の習慣
2、バリューを出す習慣
3、学ぶ習慣
4、因数分解の習慣
5、1%にこだわる習慣
6、サボる習慣

また、1位になる会社は、成果を上げる方法を知っています。そこには以下の「成果の公式」があるのです。

メンバーが力を発揮することで、会社が成長し、会社が成長することで、メンバーも力をつけていきます。 成果を上げるには、よく思考し、数多く行動するが重要で、それをスピーディに行うことがメンバー全員に求められます。そこに「ミッション×バリュー」への共感が加わることで、メンバー全員が情熱を持てるようになるのです。

アンカー・ジャパンは「Empowering Smarter Lives(テクノロジーの力で人々のスマートな生活を後押しする)」というミッションと「合理的に考えよう、期待を超えよう、共に成長しよう」という3つのバリューをメンバー全員が共有しています。社員全員が「ミッション×バリュー」に共感し、顧客目線で思考し、大量行動をすることで、結果を出しているのです。

マーケットの環境が大きく変わる中で顧客体験を高めるためには、今までの知識や体験を適度にアンラーニングし、インプットを習慣にすることが欠かせません。顧客のペインを見つけるたびに思考し、行動を積み重ねることを社員全員でおこなっていることが同社の強みになっています。

全体最適の習慣が必要な理由

仕事で私が一番大切にしているのは、「全体最適の習慣」だ。個人よりもチーム、チームよりも会社全体を考えようと日頃からメンバーに伝えている。一般的に、人は自分のKPI(重要業績評価指標)達成が最優先で、どうしても自分さえよければいいという考え方になりやすい。だが、自分や自分の部署さえよければいいという「部分最適」が広がると、組織は弱くなる。あなたの個人としての成長も止まってしまう。 全体最適の習慣が身につくと、経営者の視座・視野・視点が手に入り、成長が加速する。一見遠回りに見えるが、全体最適の習慣を身につけることが、個人の成長でも1位になるための最善手だ。

問題を正しく定義し、解決するためには、全体最適の視点が欠かせかせん。経営者が全体最適の発想により経営者の視点を磨けば、正しい問題設定ができるようになり、メンバーととにそれを解決することできます。

ビジョンを共有できた組織であれば、顧客体験をアップするために、全員で取り組むことができます。組織が大きくなった時にも、「それは私の仕事じゃない」と考えるのではなく、「全体を考え、協力しながらやろう」という意識があると会社の成長は加速します。当然、こういう意識があれば、メンバー個々の能力も高まります。

「全体最適」を実践する経営とは、「ヒットを積み重ねて売上や利益を上げつつ、ホームランを狙うことだ」と著者は言います。 既存事業やコア事業に専念してばかりでは、やがて成長が止まります。プロダクトにはライフサイクルがありますし、新しいことにチャレンジしなければ、顧客体験は高まりません。経営者はリスクを恐れずに、新規事業を行うべきです。

新規事業をやる場合には、常に複数のプロジェクトを走らせたほうが、一つの新規事業に集中するよりリスクを減らせます。確率の低い新規事業で成功するためには、 挑戦の数を上げるしかないのです。

自分たちが面倒くさいと感じることは、他社にとっても面倒くさい。面倒くさいことをやって勝ちきると、他社の参入障壁は高くなる。

多くの人が面倒くさいと思っている仕事ができるようになると、オンリーワンの人材になれます。メンバー全員が面倒くさい仕事に積極的に取り組み、仕事をやりきろうという意識を持つことで、業界1位になる確率が高まります。最終段階での1%の詰めの部分を徹底的に突き詰める努力をすることで、マーケットのシェアによい影響を及ぼします。

他社製品より少し速く充電できる、サポート体制がしっかりしているなどラスト1%のこだわりの積み重ねによって、ファンになってくれる人が増え、ブラ ンドカが高まります。実際、アンカーはそれを実践することで、「充電器がほしい」から、「アンカーの充電器がほしい」というお客様を増やせたと言います。

メンバーが努力を重ねることで、ブランド力が高まることで、安易な価格競争に巻き込まれにくくなります。その結果、社員の意識もプロダクト改善や品質向上に向くようになり、さらにブランド力が高まるのです。一人ひとりの意識の積み重ねが、組織の成長を加速させるのです。

全員がヒーローでも全員がサポーターでもなく、全体として高いパフォーマンスを発揮するチームが最強だ。そして一人ひとりの能力は違っても、意識は合わせられる。ミッション、バリューに沿った経営はできる。だから「全体最適」の習慣が重要なのだ。

メンバーが増えると組織の意識合わせが難しくなりますが、「全体最適」の習慣と「成果の公式」によって、メンバーの力を一つにできます。ビジョンを実現するという意志をメンバー全員で共有し、行動を続けることで、顧客体験がアップし、強いブランドを作れることを著者から学べました。「プラダクトは永遠のベータ版」と捉え、メンバー全員で努力を続けるべきです。

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